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イノベーションは最良のファイアウォール、コラボレーションは最も信頼できる暗号

2018.01.15

デジタル化社会におけるサイバーセキュリティ対策

今号の巻頭メッセージは、今年4月にフランス・パリで国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)・グルノーブルアルプ大学が共催した国際セキュリティカンファレンスにおいて、ファーウェイ輪番CEO兼取締役副会長でグローバルサイバーセキュリティ・ユーザープライバシー保護委員会の委員長も務める胡厚崑(ケン・フー)が行ったスピーチの内容を抜粋してお伝えします。

ファーウェイ輪番CEO
兼 取締役副会長
胡厚崑 (ケン・フー)

デジタル経済の成長を背景に、新たなテクノロジーが人々の生活を豊かにし、無限の可能性をもたらしています。しかし、よいことばかりではありません。技術の発展と同時に、サイバーセキュリティ上の脅威も増大しているのです。

モバイルネットワークやセンサーがあらゆる場所で高密度に接続されるようになると、攻撃が起こる可能性は高まります。クラウドはリソースの共有を促進し、ビジネスのプラットフォームをオープンにしますが、それにともなって、どこまで防御すればよいかという境目はあいまいになります。AIとビッグデータでより大規模なデータマイニングが可能になる一方、データ漏洩のリスクも上昇します。

ファーウェイは、こうした新たな脅威を前に手をこまぬいているわけではありません。テクノロジーと社会の進化には新たな課題が付きものであり、そこから逃げてはいけないのです。イノベーションを通じてセキュリティの課題を解決し、コラボレーションを通じてセキュリティに対する取り組みを強化することで、安心安全なデジタル化社会を構築する――これはわれわれにとって重要な責務であり、使命でもあります。


サイバーセキュリティの脅威が年々複雑さを増す中、テクノロジー企業は継続的なイノベーションによってセキュリティ対策能力を常に高めていかなければなりません。新たな課題には、新たなテクノロジーで対抗すべきなのです。

一例をあげると、ブロックチェーンはセキュリティにおいても有望な技術です。すでに仮想通貨やフィンテックの分野で実証されているように、ブロックチェーンを他の暗号化技術と組み合わせ、分散型管理によってデジタル情報の完全性と固有性を保証すれば、セキュリティを強化することが可能になります。

さらに、セキュリティに対する考え方自体も刷新する必要があります。これまでのサイバーセキュリティは、周辺を重厚なファイアウォールで取り囲むことで防御するという発想でした。しかし、新たな技術によってオープン化が進み、防御の境界線があいまいになってきているいま、どこを取り囲んで守ればよいのかは明白ではありません。この先すべてがつながった世界が実現すれば、どれだけ防御しようとも、どこかに必ず抜け穴が出てきてしまうでしょう。「周辺を防御する」というアプローチはもはや適切ではないのです。

代わりに有効なのが、「深く防御する」というアプローチです。ファイアウォールはいつか破られることを前提に、ICTシステムのあらゆるレベルであらゆる脅威を同定、隔離、除去できるようにしておかなければなりません。こうした広範かつ深い防御を可能にするのもまた、ビッグデータとAIという新たな技術です。膨大な量のネットワーク接続の中で不審な動きを検知し、脅威の同定・防御ポリシーを常に最新の状態にしておくという作業を、人間の力だけで行うには限界があります。ビッグデータ解析やAIで可能なかぎり自動化することが不可欠なのです。


新たなセキュリティの課題に取り組む上でもうひとつの重要な要素が、コラボレーションです。政府から業界、ユーザーまで、すべてのステークホルダーの積極的な協力とコミットメントが求められます。

各国政府は二国間・多国間の協議を通じて共通の行動規範を確立するとともに、自国の経験やベストプラクティスを共有し、サイバー攻撃にグローバル規模で臨戦しなければなりません。昨年末にフランスのANSSIとドイツの連邦情報セキュリティ庁(BSI)が、両国で提供されるクラウドサービスの共通セキュリティ認証『ESCloud(European Security Cloud)』ラベルの策定に向けてワーキンググループを立ち上げたのは、政府間コラボレーションの好例と言えます。また、昨年英国に開設された国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)はインフラストラクチャのセキュリティとサプライチェーンリスク管理に関するガイダンスをウェブサイトに掲載していますが、これは情報共有の取り組みとしてきわめて有用です。

産業界は、セキュリティの国際標準の重要性を各国政府が理解するよう促し、その確立に向けて協力していくべきです。加えて、利用が拡大するオープンソースソフトウェアにおけるセキュリティも、もはやコミュニティに任せきりにしておくわけにはいきません。ユーザー企業がセキュリティ対策のために資金をサポートしたり、自社のセキュリティ対策を共有したりといった協業が必要になってくるでしょう。

テクノロジーを利用する企業や個人もまた、サイバーセキュリティに対する認識を新たにすべきです。フランスの国家デジタルセキュリティ戦略のように、教育を通じたセキュリティ意識の向上に国家戦略レベルで取り組むことが重要です。


あらゆるものがつながった世界では、イノベーションが最良のファイアウォールとなり、コラボレーションが最も信頼できる暗号となります。安心安全なデジタル化社会の実現に向けて、ファーウェイはイノベーションとコラボレーションの推進に引き続き尽力してまいります。