絶え間ない品質向上を企業文化に ファーウェイの取り組み
お客様志向をコア・バリューとするファーウェイにとって、ビジネスのあらゆる側面で重要なのが「品質」です。ファーウェイ創業者兼CEOの任正非(レン・ジェンフェイ)は品質の重要性を繰り返し説き、製品・サービス・デリバリーの品質を向上することはもちろん、品質へのこだわりを企業文化とすることが必要だとしています。とりわけ日本とドイツの品質文化に学ぶべきだとの考えから、2015年、日本・ドイツ・中国の3か所に品質向上の取り組みの中核を担うCOE(Center of Expertise:専門知識センター)を設置しました。今号のHuaWaveでは、同センターの役割のほか、品質の向上と品質文化の醸成を目指すファーウェイのさまざまな取り組みをご紹介します。
『ファーウェイ』をICT業界における“高品質”の代名詞に
ファーウェイでは標準化されたプロセスを基盤として一貫した品質の製品とサービスを提供するプロセス・ベースの組織を確立することを目指し、1997年からIBMやアクセンチュアといったグローバルな専門企業によるコンサルティングを受け、研究開発、顧客関係管理、サプライチェーン管理から、人事や財務などのバックオフィス機能にいたるまで、徹底したプロセス化を進めてきました。このようなプロセスに基づいたオペレーションを通じ、製品・ソリューション・サービスの品質を着実に向上させてきたことが、ファーウェイのこれまでの成長を支えてきたバックボーンとなっています。
しかし、個々のプロセスを寄せ集めただけの管理では、お客様とエンド・ユーザーに価値をもたらす真の品質を追求することはできません。2015年、社内に向けたスピーチで任は「品質はファーウェイの命だ」と述べ、製品、技術、エンジニアリングといった個別の領域にとどまらず、企業活動のすべてに関わる広範な概念として品質をとらえたうえで、「品質文化」を醸成することが課題であると強調しました。この方針に沿って、ファーウェイは品質管理をさらに次のレベルへと進化させ、企業経営のあらゆる側面に品質の概念を浸透させるべく、「『ファーウェイ』をICT業界における“高品質”の代名詞に」という新たな品質目標を打ち立て、各国での取り組みを進めています。
日本とドイツに学びファーウェイ独自の品質文化を築く
品質文化の醸成において任が特に重視するのが、日本とドイツの品質文化です。「細かいことをコツコツとこなす姿勢こそが、ドイツと日本の品質科学を生んだ。このような文化がなければ、この両国で精密機械製造業がこれほど育つことはなかっただろう」と述べ、ファーウェイにも「匠の精神」を根づかせることを提唱しています。
ファーウェイ・ジャパンはデリバリー&サービス部の業務に対しISO 9001/JIS Q 9001の認証を取得
ファーウェイの品質管理改革をリードするよう期待されたファーウェイ・ジャパンは、全世界のファーウェイ・オフィスに先駆けて、2015年に国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメント・システムの国際規格ISO9001/JIS Q 9001の認証を取得しました。これは、顧客の要求事項と法的・公的規制要求事項を満たす製品・サービスの継続的な供給に必要な品質管理システムを備えているかどうか、またそれを適切に実施できているかどうかをチェックするための規格です。認証を取得したこと自体だけでなく、取得の過程で関係する日中の社員がともにあらためて社内のプロセスを見直し、品質への意識を高めたという点でも意義ある取り組みとなりました。これにならい、その後各国のオフィスでもISO9001の取得が進められ、現在30か国以上の現地法人で取得が完了しています。
国内でお客様とともに検証を行い要求を的確・迅速に反映
高いレベルの品質が求められる日本市場では、これまでにも製品やサービスの品質向上を強化する取り組みを独自に行ってきました。そのひとつが2014年に錦糸町オフィスに設立された、JVL(Joint Validation Lab:共同検証ラボ)です。お客様の要求をよりよく満たすことを目的に、通信事業者向けネットワーク製品の検証テストを本社だけでなく日本国内で、お客様やパートナー企業と共同で実際の使用状況を想定したシミュレーション環境において実施するほか、お客様との技術交流や製品デモ、自社およびパートナー企業向けのトレーニングなども行っています。
デリバリー品質の向上のため、実機によりモデル・サイトを構築したラボで事前に設置作業のトレーニングを実施
このほか、製品の実機によってネットワーク環境を構築し、デリバリーとサービスのソリューション開発、社員およびパートナー企業のエンジニアに対するトレーニングを行うラボも開設しています。こうした取り組みは、お客様とエンド・ユーザーのニーズを深く理解し、それを的確かつ迅速に製品やサービスに反映するという品質向上の土台を担っています。
日本の品質文化を世界に伝える品質COEの役割
深圳本社での講義。現場スタッフ向けのグループ・セッションから、管理者向けの数十名規模のレクチャーまで、さまざまな職責の従業員が参加し、日本の品質文化への理解を深めている
製品やサービスを超えて、企業経営全般に品質向上を拡張・深化させることを目指し、現在、ドイツ、中国とともに日本で品質COEの機能を果たしているのが、JVL内に設けられた品質向上チームです。日本国内の大手企業で品質管理分野において長年の経験を積んできたエキスパートが、日本の品質文化をファーウェイ全体に啓蒙することをミッションに、社外の専門家とも連携しながらレクチャーや現場指導などを各地で実施しています。
品質向上チームに所属するシニアクオリティエンジニアの小室伊作は、日本の電機メーカーで30年以上品質管理に携わってきた経験を活かし、年間20回ほど深圳本社で講義するほか、品質保証部門での現場指導やメンタリングも行っています。こうした取り組みの成果について、小室は「講義の参加者からの反響は大きく、講義後も社内のオンライン・コミュニティで議論が続いたりすることもあり、意識改革という点では手ごたえを感じます。今後は日本から学んだ知見を現地で推進してくれるキーパーソンを増やしていき、点から面へと拡大していくことが課題です」と述べます。
社外から専門家を招き品質への理解を深める
品質COEの活動の一環として、ファーウェイは社外からも専門家を招き、コンサルティングやトレーニングにご協力をいただいています。NECで長くソフトウェア開発に従事し、日本品質管理学会理事や日本信頼性学会副会長なども歴任された株式会社プロセスネットワーク 代表取締役社長 金子龍三氏も、品質管理のスペシャリストとしてファーウェイに知見を共有してくださっているアドバイザーのひとりです。
金子氏もこれまで本社での講義を数回実施し、昨年は日本オフィスでもデリバリー&サービス部の社員を対象にワークショップを行いました。日本と中国の歴史や思想をひもときながら、両国の品質文化の違いに焦点を当てた金子氏の講義は、ファーウェイ独自の品質文化の確立に向けた道筋を探るうえで重要な示唆をもたらしてくれます。金子氏は「稲作や木造建築、日本刀といった日本の伝統に根差した品質への考え方は、中国人社員には新鮮に響くようです。同時に、中国には古代から優れたマネジメント思想がある。一方、ドイツやアメリカの手法からもまた違った視点を得ることができます。品質管理へのさまざまなアプローチについて講義していると、それぞれのよさを学ぼうというファーウェイの強い意志を感じます」と語ります。
重要なのは、こうして集積した知識を実践に変えられるかどうかだと金子氏は強調します。「品質管理の究極の目的は、ファーウェイもコア・バリューとして掲げる『お客様志向』――お客様のニーズを満たすだけではなく、価値を生み出し、感動していただくこと――にあります。これを徹底的に追求するためにも、経営者から現場まで、知行合一によってファーウェイならではの真の品質文化をしっかりと浸透させていってほしいと思います」
ファーウェイは今後も、ICT業界における“高品質”の代名詞になるという目標に向け、品質へのこだわりを経営理念から現場の実践まで企業活動のすべてに根付かせた品質管理システムの構築に尽力してまいります。
金子氏による日本オフィスでのワークショップ。日中の品質に対する考え方の違い、ファーウェイ・ジャパンでの品質管理の課題について、両国の社員が活発な議論を行った
あらゆる環境で快適にお使いいただくために
〜 端末製品の品質テスト 〜
コンシューマー向け端末製品においても、ファーウェイは厳しい品質テストを実施しています。
その他にも、ON/OFFテスト、SIM挿抜テスト、イヤホンジャック挿抜テスト、曲げテスト、回転落下テスト、防塵テスト、高温・高湿テストなどを通じて徹底的な品質管理を行い、どんな利用環境でも快適にお使いいただける製品を提供するよう努力を続けています。