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ヨタ(ロシア)

ヨタは、新興企業でありながら、ヨーロッパ最大を誇る広大なネットワーク・カバレッジを武器に、たった数年でロシアのLTEにおける中心的存在になった。2012年には、ネットワークのロールアウトと共有を受け持つ組織としてヨタ・ネットワークスを分社化。同社は現在、ロシアのLTE卸売業者としてMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)に自社のインフラストラクチャへのアクセスを提供し、今後10年間でヨタ・ブランドをロシアの次世代アクセスを牽引する立場に押し上げることを目指している。

2007年5月の設立以来、ヨタは急成長を続け、わずか2年で世界第2位のWiMAX通信事業者となった。その後、同社は2010年5月に、前CEOが「より進化したエコシステム」と称賛したLTEへの移行を発表する。それから4か月後、ヨタは150基地局からなるフル・パイロットLTEネットワークを有するロシアで最初の通信事業者となった。このネットワークはロシアの大都市のひとつであるカザン市全体をカバーし、最大20~3 0 M b p sのアクセス速度を提供する。2011年には2.5~2.7GHzの2つの30MHzブロックでLTEを供給するためのライセンスを取得し、LTE商用化への第一歩を踏み出した。2012年、ネットワーク共有を促進するために、同社は通信事業を運営するヨタと、ネットワーク卸売業者のヨタ・ネットワークスに分割した。

WiMAXからLTEへ

ヨタ・ネットワークスはネットワークのロールアウトに関してまったくの素人というわけではないものの、LTEとFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割多重)の領域ではどちらも経験が不足していたため、ネットワークの計画、導入、O&M(Operation and Maintenance:運用保守)に及ぶ包括的な技術サポートを得る必要があった。導入期限の厳守と実稼働までの時間の短縮も優先事項だった。

ベンダーを選定する過程で、ヨタ・ネットワークスは、ファーウェイの堅固な実績と業界をリードするテクノロジー、とりわけSingleRAN LTE/EPC(Evolved Packet Core:進化型パケット・コア)ソリューションに魅力を感じた。このソリューションは、複数のRAT(Radio Access Technology:無線アクセス技術)と周波数帯を使用するあらゆる種類のLTE導入シナリオのニーズを満たしながら、GSM/WCDMAへの移行をスムーズに行うことにより、CA PEX(Capital Expenditure:設備投資費)とOPEX(Operating Expense:運用費)を抑制できる。GSA(The Global Mobile Suppliers Association)によれば、ファーウェイのSingleRANは、ヨタがベンダーを選考していた2011年上半期の時点で、世界中にある24のLTEネットワークの半分で導入されていた。この割合は2013年1月現在、ほとんど変化していない(145のうち73)。ヨタ・ネットワークスはファーウェイをLTEの優先テクノロジー・パートナーとして公式に選定し、エンド・ツー・エンドのSingleRAN LTE/EPCを主要ソリューションとしたネットワーク構築において全面的に提携することとなった。

ヨタ・ネットワークスにとってモスクワは最初の商用LTE市場ではないが、その規模と重要性のために注力を要する都市だと言える。ファーウェイの無線ネットワーク計画・最適化チームは、1か月で1,300を超えるeNodeB(Evolved Node B)の論理パラメーターを設計した。これには、メガフォン(ロシアの大手通信事業者)とのRAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク)共有とIRAT(Inter-Radio Access Technology)に関するパラメーターが含まれていた。同時に、コア・ネットワーク・チームはコア機器の立ち上げとサービス・モデルの実装を受け持った。これがファーウェイの高性能PGP-X16プラットフォームに基づく統合ゲートウェイのロシア・デビューとなった。コア・ネットワーク・チームは、現場の無線ネットワーク計画・最適化チームと協力して、不明確なサービス要求やハードウェア/ソフトウェア機能構成などのさまざまな困難を克服した。

重要な課題のひとつは、サービス切り替えに対する準備だった。切り替えにあたって、両方のネットワークが並行して稼働する試用期間を設けることになる。ヨタ・ネットワークスとファーウェイは、サービス中断の影響を最小限に抑えるため、サービスと技術の両面におけるソリューションを開発した。移行をスムーズに実施するために、既存の顧客にはLTEデバイスを無償で提供した。サービスインに先だって試験切り替えを5回実施し、eNodeB、コア・ネットワーク、サービス全般のテストによって良好なカバレッジと安定したサービスを提供できることが確認された。

2011年5月10日午前2時、ついにWiMAXネットワークの提供が終了し、その1時間後にLTEネットワークが稼働した。モスクワで初の商用LTEが導入され、ロシアのモバイル・ブロードバンドにとって重要なマイルストーンが刻まれた瞬間だ。運用初日に30万人の加入者の切り替えが無事に成功し、フィールド・テストでは15MHz帯での下り最大速度90Mbpsという結果が得られ、LTEの明らかな優位性が立証された。

2012年11月現在、ヨタ・ネットワークスは、モスクワやサンクトペテルブルクなど5都市でWiMAXからLTEへの移行を完了し、他の10都市でも新たにLTEのロールアウトを成功させた。

世界初の商用LTE-A

さらにヨタは、2012年10月、何か月にも及ぶ準備期間を経て、ファーウェイとともに新たなプロジェクトを成功させた。モスクワの11のLTE基地局を利用した商用ネットワーク上で世界初のLTE-Aを稼働させたのだ。LTE-Aの最も重要な利点であるキャリア・アグリゲーションを実現したことで、最大/平均スループット、最大/平均スペクトル効率、セル端ユーザー・パフォーマンスを大幅に改善し、最大300Mbpsのデータ転送速度を達成している。LTE-A端末の商用利用が可能になる2013年前半には、このネットワークをさらに拡張することを計画している。

ヨタは現在、ユーザー数とカバレッジの両方においてヨーロッパで最大のLTEネットワークを運用し、モスクワ、サンクトペテルブルク、ノボシビルスク、ソチなど10都市で90万人を超える加入者にサービスを提供している。同社はこのネットワークを2012年末までに35都市・約3,000万人に拡大し、2014年末までに7,000万人をカバーする予定である。ヨタはこうした事業を通じ、CPE(Customer Premises Equipment:契約者宅内設備)、Mi-Fi、携帯端末などのさまざまなLTE端末を利用してだれもが高速データ・アクセス、高解像度VoD(VideoOn Demand:ビデオ・オン・デマンド)、オンライン・ゲームを楽しめるような「つながる」暮らしをロシアにもたらすことを目指している。

提携と共有で市場を拡大

ヨタ・ネットワークスは、現在ロシアで最初で唯一のLTE卸売業者であり、4 社のMVNOの加入者に自社ネットワーク・サービスへのアクセスを許可している。メガフォンもこうしたビジネス・モデルによって提携している企業のひとつで、双方がインフラストラクチャを相互利用できるという契約を結んでいる。両社はすでに技術統合を完了し、ヨタ・ネットワークスのLTE運用エリア全体でネットワーク・アクセスを共有するとともに、ヨタ・ネットワークスはデータセンターや基地局サイトなどメガフォンの施設の一部を利用している。現在、新たに大手通信事業者との提携計画が進んでおり、ヨタが目指す「すべての人のためのネットワーク」の実現に向かっている。