トークトーク(英国)
英国の通信事業者トークトークは、国内初かつ唯一のネットワーク・レベルのブロードバンド・セキュリティー・サービス『HomeSafe』を提供している。HomeSafeは、PC、タブレット、スマートフォン、さらにはゲーム機など、インターネットに接続するすべての家庭向けデバイスに使用できるソリューションで、ペアレンタル・コントロールおよびマルウェア対策の機能によって子供がインターネットで閲覧できるコンテンツとアクセスする時間帯を親が管理できるようになっている。
安心を求める親たち
英国に暮らすスミス氏は、ブロードバンドが家族の生活の一部であることは認識している一方で、2人の子供の父親として、子供たちがインターネットを利用することに不安を覚えている。子供たちは学校から帰宅すると、宿題もせずにすぐさまウェブサイトを閲覧し、友達とオンラインでチャットをはじめる。父親としては、子供たちが不適切なコンテンツを偶然見てしまわないかという点も心配だ。スミス氏は子供たちに宿題をさせるために、モデムの電源を切るという最終手段に出るが、これでは彼自身がインターネットを使えなくなってしまう。
スミス氏のような親たちは、子供が宿題に集中できるよう、オンライン上の無益な情報を除外してくれる融通の利くペアレンタル・コントロール・サービスを必要としている。たくさんの専門用語や設定につきあう時間もないので、簡単に設定できるサービスが望ましい。ウイルスやその他のマルウェアを駆除し、侵入もブロックしてくれるセキュリティー・スイートがあれば理想的だ。
家庭向け通信事業者トークトーク
トークトークは、2002年の創業以来、価値ある固定ブロードバンドおよび音声電話サービスを提供する英国の大手通信業者へと着実な成長を遂げ、約500万人の顧客にサービスを提供している。トークトークの料金体系は明快かつシンプルで、価格は魅力的であり、サービスも画期的だ。たとえば、無制限ブロードバンド&通話のマンスリー・セットが月額6.50ポンド(約845円※)のサービスや、最大75Mbpsの超高速光ブロードバンドなどが例として挙げられる。
トークトークの主要な顧客は家庭である。家庭では、子供が親とインターネット接続を共有している場合が多く、インターネットに接続している間に子供を監視していないことがほとんどだ。トークトークが独自に行った『インターネット生活(Life Online)』という調査によると、子供がインターネットに接続している約半分の時間は誰からも監視されておらず、6~10歳の子供のうち少なくとも14%が、インターネットで成人向けコンテンツに出くわしている。また、家庭をターゲットとしたWeb攻撃も増加している。2012年6月にシマンテックが発表したレポートによれば、英国のスパム・レベルは67.2%で、210件に1件の電子メールが悪質なものとして識別されている。
トークトークはさまざまな種類のデバイスをカバーするシンプルで効果的なセキュリティー・サービスを求める市場のニーズを認識している。PC向けには、サードパーティー・サプライヤーが提供するソリューションを『Super Safe Boost』という名称ですでに販売している。しかしトークトークを利用している平均的な家庭では1か月あたり7台もの固有デバイスがインターネットに接続されており、顧客が新しい種類のソリューションを必要としていることは明らかだった。
そこでトークトークは、さらなる選択肢を提供することを決定した。それは機能性を拡張しながらO&M(Operation & Management:運用・管理)を簡素化してコストを削減するネットワーク・レベルのセキュリティー・ソリューションである。トークトークはより安全なブロードバンド接続に関する独自の調査を2009年末に開始し、それ以来、この分野における取り組みを継続的に実施している。2010年始めにはファーウェイと提携し、ペアレンタル・コントロールを目玉に、より安心できる家庭向けブロードバンド・アクセスを提供するソリューションの共同開発を開始した。
ファーウェイのSIG
ファーウェイは、固定ネットワーク(ブロードバンドのリモート・アクセス・サーバーと国際ゲートウェイ間)、モバイル・ネットワーク(Gi、Pi、ASN-GW)、または統合型ネットワークに展開できるSIG(Service Intelligence Gateway:サービス・インテリジェンス・ゲートウェイ)ソリューションを提供している。SIGソリューションのアーキテクチャは、フロントエンド、バックエンド、アップグレード・センター、クラウド・セキュリティー・センターというシンプルな構成である。
フロントエンドが解析、レポート作成、ポリシーの実施を担当するのに対し、バックエンドはSIGシステム、ユーザー、ポリシーの管理を担当している。バックエンドは最新のナレッジ・ベースおよびURL分類統計情報を自動的に受信する。これはアップグレード・センターおよびクラウド・セキュリティー・センターから送信され、途中サービスが中断されることはない。同時にサービスの有効化や無効化、ポリシー設定のためのSOAPインターフェースは完全な形で提供される。サービス・プロバイダーは、SIGのインターフェースをベースにして自社、またはファーウェイに依頼してセルフサービス・ポータルを開発することができる。一方、通信事業者はSIGを使用してAoS(Alert of Security:セキュリティー警告)メッセージを顧客に送信できる。
通信事業者クラスのルーター・プラットフォームを持つファーウェイのSIGの性能は、SIGのASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)およびマルチコア・ネットワーク・プロセッサーにより保証される。サービス・スループットは固定ネットワークで120Gbps、モバイルで100Gbpsに達することもある。また、もうひとつの重要な特長はSIGのボードと主要コンポーネントの設計に冗長性があり、フロントエンドとバックエンドの両方において信頼性が確立されていることだ。このシステムは、リンクを障害から保護する高性能なバイパス・デバイスも備えている。アップグレードの際の総点検は不要で、インターフェースまたはサービス・ボードを交換するだけでよい。
ファーウェイのSIGソリューションは、ペアレンタル・コントロールなどの付加価値サービスをより簡単に立ち上げることを可能にする。通信事業者のポータルでは、サービス・プランの加入とキャンセル、オンライン・ポリシーの有効化・無効化・詳細設定を親が自由に行うことができる。また、指定した時間帯にオンライン・ゲームやソーシャル・ネットワーキング・サイトへのアクセスを制限できるため、宿題の時間に子供の気を散らせる要素を親がコントロールすることが可能になる。
SIGの誇るライブラリーは、43のカテゴリーに分類された6,500万を超えるURLを収録し、通信事業者は必要に応じてこのライブラリーをカスタマイズできる。SIGは、業界をリードするコード検出技術によって悪質なURLを動的にフィルタリングし、ウイルスやその他のマルウェアから家庭を守り、これらを検出した場合はシステムからユーザーに警告を送信する。
大好評のHomeSafe
2011年5月、トークトークはファーウェイのSIGプラットフォームを組み込んだHomeSafeソリューションを公式に発売した。HomeSafeは、3つの主なペアレンタル・コントロールおよびネットワーク・セキュリティー機能を有している。まず『Kids Safe』と呼ばれる機能では、ボックスにURLを入力して、ブロックするウェブサイトを自分で定義できるほか、出会い系、ドラッグ、アルコール、ファイル共有、ギャンブル、ゲーム、ポルノをテーマとするものなど、親がブロックしたいウェブサイトをカテゴリー別に選択できる。また、『Homework Time』を使用すると、子供たちがゲームやソーシャル・ネットワーキングにアクセスできない時間帯を設定できる。もうひとつの『Virus Alerts』という機能は、ウイルスに感染させるウェブサイトへのアクセスをブロックする。トークトークの顧客であれば、これらのサービスをすべて無料で利用できる。トークトークはさらに、『Super Safe Boost 』よりも高レベルのPC用セキュリティー・サービスも提供している。このサービスは月額2ポンド(約260円※)だが、よりハイレベルなパッケージの一部として無料で提供もされている。
冒頭のスミス氏は幸いにもトークトークの顧客であるため、アカウントにログインし、約1分でHomeSafeを立ち上げることができる。これで子供たちがインターネットに気を散らされることも大幅に減り、親たちはオンラインの安全性が強化されることで安心感を得られるのだ。
2011年5月の発売以降、HomeSafeは子供のための慈善団体、親の団体、英国政府から好評を博している。たとえば、英国を本拠地とする子育て情報ウェブサイトMumsnetの共同創設者であるジャスティン・ロバーツ(Justine Roberts)氏や英国の児童担当大臣であるティム・ロングストン(Tim Loughton)氏はHomeSafeを高く評価している。ティム・ロングストン氏は、インターネットの安全性を主導するトークトークを称賛し、また人気の子育てブロガーのリスカ(Liska)氏は、「オンライン・セキュリティーという一般人にとって非常にわかりにくい分野に新風を吹き込んだ本当にすばらしい製品」とコメントしている。
HomeSafeは、トークトークのサービス・ラインナップの中でも重要な差別化要素となり、同社はネットワーク・レベルのブロードバンド・セキュリティーを英国で初めて提供した通信事業者となった。英国政府はブロードバンドを契約する際にペアレンタル・コントロールの設定を推奨する「能動的な選択」という取り組みを進めているが、通信事業者として初めてこの取り組みを後押ししたのもHomeSafeだ。さらに、トークトークが技術革新とネットワーク・セキュリティーという2つの業界賞を受賞したのもHomeSafeによるところが大きい。
HomeSafeは、「英国で最も安全なブロードバンド接続」という宣伝文句とともに、着実に人気を集めている。発売から8週間で10万人以上が利用を開始し、トークトークがこの「能動的な選択」の機会を提供し始めて以降、新規顧客のほぼ3人に1人がペアレンタル・コントロール・サービスを選んでる。2011年5月9日の発売から1年半足らずで、HomeSafeのユーザーは50万人を超え、2013年3月までには100万人に達すると見込まれている。
2011年第4四半期、トークトークのクライブ・ドースマン(Clive Dorsman)CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)は、HomeSafeの主要要素の提供におけるファーウェイの努力とプロ意識を評価し、トークトーク社内のスムーズ・デリバリー賞(Smooth Delivery Award)をファーウェイのSIGチームに授与した。ファーウェイは、これからもトークトークのパートナーとして、ブロードバンド・セキュリティー以外にもさまざまな分野において協力体制を強化していきたいと考えている。
※1ポンドあたり130円換算