ファーウェイの法人向けソリューション
ファーウェイは、2010年に法人事業部を設立しました。以来順調に拡大を続け、2011年には前年度比57.1%増となる15億9,000万米ドル(約1,272億円※)の売上を達成しています。
ファーウェイの法人事業部は15の地域、140か国で2万人の従業員によってグローバル規模で展開されており、法人ビジネス市場を積極的に拡大しようとしています。また、売上の約半分(47%)がチャネル・パートナーからの販売によるものです。
日本では2012年にファーウェイ・ジャパン法人事業本部を設立し、現在約30名が所属しています。立ち上げから1年足らずですが、すでに日本のお客様にも法人事業本部から提供したソリューションが採用されております。ファーウェイ・ジャパンはグローバルで実績を積んだ法人向けソリューションを日本の企業のお客様にご活用いただけるよう、サービス内容の充実化に努めています。 今回は、ファーウェイが提供する法人向けICTソリューションの概要と、その中から特にキャンパス・スイッチとデータセンター・スイッチの2つのスイッチ製品のラインナップについてご紹介します。
ファーウェイの法人向けソリューション
ファーウェイの法人事業部は、当社が通信事業者向け事業において築きあげてきた実績と信頼を、法人向け事業においても確立することを目標としています。それを支えるのは、売上の10%以上をR&Dに投資し、最先端の技術とエンド・ツー・エンドの製品・ソリューションを生み出し続けるファーウェイの技術力です。
ファーウェイは企業のITインフラストラクチャーのほぼすべてをカバーする幅広い法人向けソリューションを提供しています(図1)。代表的なものは以下のとおりです。
企業ネットワーク
ルーター、スイッチ、無線LAN、伝送装置など、各種アプリケーションのデータ通信を可能にするインフラ構築のための各種要求に応じた製品群を有しています。
ユニファイド・コミュニケーション
IP電話、テレビ会議システム、ウェブ会議システム、ビデオ監視システム、コンタクト・センターなど、企業におけるコミュニケーションとコラボレーションの効率をアップし、ビジネスに変革をもたらすツールを提供します。
クラウド・コンピューティングとデータセンター
さまざまなアプリケーションやデータに対応するコンピューティングとストレージ機能、オフィスのデスクトップ環境を刷新する仮想デスクトップ機能など、これからのITに不可欠なソリューションを実現します。
ネットワーク・セキュリティー
アクセス制限、侵入防御、VPN、DDoS(Distributed Denial of Service:分散サービス拒否)攻撃対策、ウェブ・セキュリティーなど、エンドポイントからインターネット上、データセンターまでエンド・ツー・エンドでI T資産を保護するソリューションを提供します。
ファーウェイの10GEキャンパス・ネットワーク・ソリューション
キャンパス・ネットワークの発展とファーウェイのビジョン
法人向けITは3つの発展段階を経てきました。個別のPCによってアナログな作業を置き換えた段階、データを活用した情報共有が萌芽した段階、そして高品質なサービスが求められる現在のマルチメディア・クラウド・モバイル時代です。こうした技術の変化にともない、それに必要とされるネットワークの回線容量は増大し(図2)、企業ネットワークに求められる性能も大きく変化しています。
ICTリサーチ会社ガートナーは、2015年までに全世界の65%の企業が仮想デスクトップを導入すると予測しています。ユーザーは企業ネットワークにおいても快適な環境を求めるようになり、コミュニケーションの手段としてビデオやソーシャル・ネットワークを利用したいという人も増えています。今やクラウド・サービスやマルチメディアに対応したネットワークの提供は不可欠であるといえます。
また、『インフォメーション・ウィーク』誌が2011年に行った調査では、企業の65%がBYOD(Bring Your Own Device:従業員の私物端末を業務に利用すること)制度を採用したいと回答しています。いつでも、どこでも、どの端末からでも企業ネットワークに接続できることが求められているのです。そのためには、無線・有線LANの統合やセキュリティー・サービス、統合ID管理サービス、無線・有線LAN共通のQoS(Quality of Service)サービスといった機能によって高いモビリティーをサポートしなければなりません。
こうした新たなサービスに対応した企業ネットワークを実現するためには、克服すべき課題がいくつかあります。帯域リソースの不足、信頼性の問題、無線でのオンライン作業の満足度が有線よりも劣ることへの対応などです。ファーウェイの10GEキャンパス・ネットワーク・ソリューションは、こうした課題の解決をサポートします。
高い性能と幅広い用途を備えた10GEインフラストラクチャー・ネットワーク・ソリューション
10GEと40GEの技術が成熟するにつれて、キャンパス・ネットワーク・ソリューションではアクセス層にはGEネットワークが、アグリゲーション層には10GEネットワークが、コア層には40GEネットワークが使われることが多くなってきました。10GEキャンパス・ネットワーク・ソリューションのインフラ・ネットワークでは、冗長性を備えたモジュールやアクセス層、アグリゲーション層、コア層といったレイヤーに適用される柔軟な構成を有しています。また、ポート密度の高い高性能なスイッチを提供します。
S9700/S7700/S5700 10GEスイッチ・シリーズをはじめとするファーウェイのスイッチは、企業のキャンパス・ネットワークが通信事業者並みの信頼性を持つことを可能にし、マルチメディア、テレビ会議、デスクトップ・クラウド、クラウド・ストレージといった高速通信を必要とするサービスの実現に貢献します。コア層とアグリゲーション層では、CSS(Cluster Switch System)技術によって10GEコア・スイッチを1つの論理デバイスとして仮想化することができます。これにより、コア・ネットワークのトポロジーを単純化し、ネットワークの信頼性を高めることができます。
S9700は高密度10GE/40GEポートを備えており、コア層での使用はもちろんのこと、アグリゲーション層でも使用でき、アクセス層からのGE/10GEのアップリンクと、10GE/40GEポートを通じたコア層へのアップリンクをアグリゲートします。
S5700は最大64のGEポートを実装することができるアクセス・スイッチです。
ファーウェイのキャンパス・スイッチ製品
10GEスイッチ・シリーズ以外にも多様なモデルのキャンパスLANスイッチを提供しています。
S2700/3700シリーズは10/100Mbpsアクセス・ポートとGEアップリンクを備えたボックス型モデルで、レイヤー3スイッチ機能を搭載したモデルです。また、S6700シリーズは高密度10GEポートを備えたボックス型モデルで、10GEリンク・アグリゲーションを多数行う場合に最適です。
有線・無線統合型10GEキャンパス・ネットワーク
ファーウェイの10GEキャンパス・ネットワーク・ソリューションは有線・無線統合アクセスを提供しています。WLANの無線アクセス制御装置をスイッチに統合することで、同じセキュリティー・ポリシーとユーザー管理ポリシーを有線と無線に対して適用でき、シームレスに相互接続されるため、ネットワークの管理・保守コストを削減することができます。
節電ソリューション
電力消費とCO2排出量の削減は世界的な課題です。市場調査会社IDCの調査によれば、電力消費はハードウェア購入による設備投資の25%を占めると言われています。これに対応するため、ファーウェイのスイッチは自社の特許技術であるスリープ技術を用いて節電を実現しています。
各装置の電力消費を抑えることに加え、ファーウェイはスイッチ製品に以下のような節電機能を付与しています。
個々のポートや端末をポートのトラフィック状況に応じて休止状態にします。
AHM(Advanced Hibernation Management)設計:AHMはネットワーク端末が休止状態のときのトラフィックを監視します。これは休止状態管理と省電力イーサネット技術を統合したもので、ネットワークのあらゆる場所で休止状態を可能にし、ネットワーク全体の電力消費を約30%削減します。
インテリジェントPoE(Power over Ethernet):ネットワークにどの端末がアクセスしているか、また時間帯によるPoEポリシーやオンデマンドのPoEポリシーに基づき、必要なだけの電力を正確に供給します。
導入事例
ファーウェイのキャンパス・ネットワーク・ソリューションは、さまざまな業種のお客様の課題解決をお手伝いしてきました。
香港証券取引所では、新たなCCTV(Closed-Circuit Television:映像監視システム)の導入にあたり、ファーウェイのS9300(S7700の旧モデル、現在は販売終了)コア・スイッチ、S5700アグリゲーション・スイッチ、S3700アクセス・スイッチが採用されました。これにより、CCTVに求められる高い安定性・信頼性と厳格なセキュリティー機能を備え、将来の拡張にも対応したエンド・ツー・エンドのネットワークを実現しました。
また、中国最大の検索エンジンを運営する百度(Baidu)は、データ量の急激な増加に対応するため、データセンター・ネットワークのコア・スイッチにS9300を、アクセス・スイッチにS5700を導入し、高速かつ大容量で拡張性の高いネットワークの構築に成功しました。
ファーウェイのデータセンター・ネットワーク・スイッチング・ソリューション
データセンターはここ数年重要視されているトピックですが、仮想化技術の発展によってますます注目を集めています。フォレスターの調査によれば、2020年までにクラウド・サービスが生み出す収益は現在の10倍にあたる1,320億米ドル(約10兆5,600億円※)に上るとされており、こうしたクラウド・サービスの急増にともない、サーバーやストレージ・デバイスにも大きな変革が求められているといえます。IDCは2020年までにサーバー・ポートのスピードは現在の100倍にあたる100GEに、クラウド・コンピューティングに必要なデータ・ストレージは現在の44倍にあたる35ゼタバイト(350億テラバイト)に達すると見込んでいます。
さらに、ネットワークは静的なものから動的なものへと変化しています。従来のデータセンターのサーバーは固定されたものであり、ネットワークの管理も難しいものではありませんでした。しかし、クラウド・コンピューティングの普及にともなってサーバーは仮想マシンとなり、マイグレーションや複数のエリアへの配備が必要とされるようになると、ネットワークの設定もオンデマンドでリアルタイムに調整できることが求められ、管理も複雑化してきました。
また、標準的なAPI(Application Programming Interface)やOS、ネットワーク・プロトコルの採用により、特定の技術に縛られることなく幅広いアプリケーションやデバイスを利用できるようにすることも重要です。これは設備投資の軽減にもつながります。
このような急速な変化に対応するためには、拡張性を持ち、仮想化に対応した集中型のデータセンター・ネットワークが必要です。ファーウェイのデータセンター・ネットワーク・ソリューションは、次世代のデータセンターに不可欠なこれらの要素を備えたネットワークの構築を実現します。
拡張性
10年以上のスパンでの拡張を考慮したアーキテクチャ:CE12800、CE6800、CE5800などのCloudEngineシリーズは最大容量360Tのノンブロッキングなネットワークの構築を可能にします。
現状で実現可能なあらゆる設定オプションを備えたコア・スイッチ:スロットあたり最大2Tbps(単一方向)、シャーシあたり48Tbpsのスイッチング容量を持ち、8×100GE、24×40GE、96×10GEの高性能ボードを備え、シャーシとして最大96×100GE、288×40GE、1152×10GEの高速ポートを実装することができます。
40GE対応TOR(Top Of Rack)スイッチの豊富なポートフォリオ:CE680 0とCE5800は高密度10Gアクセスを提供、40GEポートにも対応しており、業界随一のスイッチング容量を持っています。
低パケットロスを実現するClosファブリック・アーキテクチャ:CE12800シリーズはノンブロッキングなClosファブリック・アーキテクチャを採用し、十分な分散バッファを備えています。これにより、クラウド・コンピューティング・アプリケーションによるトラフィックの急増を効率よく処理し、スイッチング処理時のパケットロスを防ぎます。
信頼性の高いシステム冗長性設計:CE12800は制御ユニット、ファブリック・ユニット、スイッチ・ファブリック・ユニット、モニタリング・ユニット、電源モジュール、ファンなどの各部品に冗長性設計を採用しています。CE6800/5800も冗長構成でホットスワップをサポートする電源モジュールとファンを備えています。
通気チャネル設計:CloudEngineシリーズは前面から背面への通気チャネル設計を採用しています。これはデータセンター施設の熱気と冷気が分離した環境で熱放散効率を上げるために最適な設計です。
仮想化
総合的なネットワーク仮想化機能:VS(Virtual System)やCSSによって柔軟なネットワーク・アーキテクチャを実現します。また、TRILL(Transparent Interconnect of Lots of Links)やnCenter技術によってサービスやサーバーの仮想化に必要なネットワークを実現します。
VSによるフレキシブルなリソース共有:CE12800は仮想化機能を備え、1つのスイッチを複数の独立した論理デバイスに仮想化することができます。これにより、複数の部署やユーザーが1つのコア・スイッチを共有することで、ネットワークへの投資を削減し、高いセキュリティーと効率よいリソース活用を実現できます。
CCS/iStack技術を用いたシンプルなデバイス管理:CloudEngineシリーズは複数のスイッチを1つの論理スイッチに仮想化するCSS/iStackに対応し、シンプルな管理と信頼性の向上を可能にします。CE12800は業界随一の4フレームのコア・スイッチ・クラスターを採用、CE6800/5800は16個のデバイスをスタックできます。
CSSとVSを組み合わせた技術:CE12800はCSSとVSとの併用により、ネットワークを大きな仮想リソース・プールにすることで、クラウド・コンピューティングが必要とする柔軟性のあるサービスを提供します。
大規模なルーティング・ブリッジ:Cloud-Engineシリーズは業界標準のTRILLをサポートしているため、ネットワーク管理者は500以上のノードを持つ大規模なレイヤー2ネットワークを構築することができ、フレキシブルなサービス展開と仮想デバイスの迅速なマイグレーションが可能になります。
VM(Virtual Machine)の自動移行のためのnCenter:nCenterは仮想化されたデータセンターのための自動化された管理システムです。VMを移行する際にデバイスへのネットワーク設定を自動的に移行します。また、高速のRADIUSインタフェースがVMの移行をより迅速に実施する手助けをします。
統合されたネットワーク
統合型ネットワークによりTCO(Total Cost of Ownership:システム運用の総費用)を削減:CloudEngine6800はストレージ、データなどを統合するFCoE(Fiber Channel over Ethernet )をサポートしており、ネットワークの構築・保守費を削減できます。FCはイーサネット上では管理されませんが、この機能によりネットワークの保守を統合簡素化するとともに、既存のFCSAN(Fiber Channel Storage Area Network )もサポートできます。
低遅延とパケットロス・ゼロの実現:Cloud-EngineシリーズはDCB(Data Center Bridging)標準をサポートしているため、FCストレージや高度なコンピューティングに必要な低遅延と低パケットロスを実現します。
ファーウェイはIP業界において20年以上の経験があり、膨大なデータセンター向けポートフォリオを持つ有数の企業です。こうした豊富な経験とリソースを活かし、ネットワーク、DR(Disaster Recovery)、セキュリティー、ネットワーク管理といったエンド・ツー・エンドのデータセンター・ソリューションを提供します。ファーウェイのデータセンター製品とソリューションはすでに世界各国において、各業種の企業や、インターネット関連、通信事業者など、広範囲で使われています。
中でも、CloudEngineシリーズ・スイッチとクラウド・ファブリック・ネットワークは、過去10年間にファーウェイがIPネットワークで培った豊富な経験をもとに設計されており、お客様の将来のクラウドサービスの継続的な発展をサポートする次世代データセンターの重要な構成要素となります。
ネットワーク・ソリューションの世界的な牽引者として、ファーウェイは強力なR&Dと世界中から集まったエキスパートの力を活かし、データセンターの標準化や構成要素、モジュールの開発における確かな実績によって、長期にわたるデータセンター事業のさらなる発展に貢献してまいります。
※1米ドルあたり80円換算