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日本電波工業株式会社:先進の水晶技術で世界市場をリード

『HuaWave』では今号より、ファーウェイのグローバル・ビジネスを最先端の技術と製品で支えてくださっているベンダー各社のトップ・インタビューを掲載します。第1回目となる今回は、携帯電話や基地局など通信産業に不可欠な水晶デバイスのリーディング・カンパニーである日本電波工業株式会社(NDK)の竹内寛社長に、同社のグローバル戦略とファーウェイとのパートナーシップについてお話をうかがいました。

お客様への奉仕――NDKの成長を支えてきた創業の精神

編集部:NDKは水晶デバイスのトップ・ブランドとして確固たる地位を築かれています。競争力の源泉はどこにあるとお考えでしょうか。

竹内寛氏:「お客様への奉仕を通じて、社会の繁栄、世界の平和に貢献する」という創業理念を一貫して守り続けてきたことが、今日を築いた基本であると考えています。創業者の竹内正道は太平洋戦争中、水晶の技術者として戦地フィリピンに派遣され、そこで戦争の悲惨さを痛感しました。もし生きて日本に帰ることができたら、世界の平和に貢献する仕事をしたい、世の中の役に立つ仕事をしている企業に奉仕したいと考え、1948年に当社を設立しました。この創業の精神が今も当社グループの中に脈々と息づいています。

編集部:NDKは、ファーウェイの『The Excellent Core Partner賞』やボッシュ社の『Supplier Award』など、パートナー企業から数々の賞を受賞されています。こうした高い評価の背景に、お客様への奉仕を謳う創業理念があるわけですね。

竹内氏:創業理念を具現化するために、場合によっては研究開発の段階からお客様と協業し、どのような問題が発生してもすぐに対応するという姿勢で臨んでいます。それがお客様からの高い評価につながっているのではないでしょうか。とくに一昨年は3月11日に東日本大震災が発生し、多数の競合企業が出荷停止に追い込まれましたが、当社グループはお客様の生産を止めることのないよう社員の総力をあげて対応し、全量を期間内に納めました。「NDKはサプライを守ってくれた」というお褒めの言葉を多くのお客様からいただきました。

ローカリゼーションで地元の経営資源を最大活用

編集部:ファーウェイと同様、NDKも連結売上高の約70%を海外で計上するグローバル・プレイヤーです。海外展開の基本戦略についてお聞かせください。

竹内氏:水晶デバイスの世界は二極分化が際立っています。一方に比較的安価な量産品があり、一方に高精度な先端製品がある。量産品をコストの高い日本で生産すると競争力が低下するため、1970年代末にマレーシアに製造会社を設立し、その後、世界各地に生産拠点を設置していきました。グローバル化の基本的な考え方は「ローカリゼーション」、つまり現地の社会や経済をよく知っている人が経営に当たることが最も自然だと捉えています。たとえば蘇州日本電波工業有限公司は総経理(社長)こそ日本人ですが、5人いる董事(取締役)のうち3人が中国人です。

当社グループではまた、国内外に生産拠点を展開する場合、工場ではなく必ず法人という形を採ってきました。会社を設立すれば現地で税金を納めることになり、地域社会や地域経済に貢献することができるからです。現地の人たちに運営を任せ、モノや資金をローカルの中で循環させることは経営効率の点からも非常に有効です。ローカリゼーションは、当社グループが事業を進めていく上での不変のスタイルと言ってよいかもしれません。

編集部:なるほど、現地化を重視するファーウェイの経営方針と相通ずるところがありますね。ところで、近年、エレクトロニクス分野でも中国市場の将来性が注目されるようになってきました。中国においてNDKはどのように事業展開を進められているのですか。

竹内氏:中国にはファーウェイを筆頭にグローバル企業として発展を遂げている会社が十数社あり、加えて今後大きく成長していくと思われる多数のメーカー群が存在します。当社グループの基本戦略は、まずその大手十数社としっかり仕事をしていくこと。そのために良好な人間関係、ビジネス関係の構築に取り組んでいく、それが第一です。これから伸びていくメーカーについては、中国全土に散在している個々の会社に直接製品を販売することは不可能ですので、商社のネットワークを活用しながらサービスの提供体制を整備していきます。

現在、日本と中国の関係は決して良好ではありませんが、政治の問題と民間企業のビジネスは次元の異なる話だと受け止めています。両国の人と人、企業と企業が良い関係を維持していけば、やがては日中の関係改善にも良い影響を及ぼすことができるのではないでしょうか。

編集部:まさに、ビジネスを通じて「世界の平和に貢献する」という理念につながりますね。NDKはいち早くグローバル化を達成された、いわば海外展開の「先達」でいらっしゃいますが、海外への進出を検討・計画されている企業の方々にアドバイスをいただけますか。

竹内氏:自分のパーソナリティーはどういうものか、自分の価値観は何か、そうした「原点」を持っていなければ国際人とは言えませんし、日本人としての誇りを失っては世界を舞台に活躍することはできません。企業も人間と同様に、自己のアイデンティティーをしっかり踏まえた上で、グローバル化を進めていくことが肝要でしょう。ただ単に海外で生産するとコストが安いからとか、市場が大きいからという経済合理性だけで海外進出を図ることは危険な試みだと思います。

通信機器の進化を見据えた次世代製品群を準備

編集部:水晶デバイスの業界では、同業間の競合がグローバル・レベルで激化しているとうかがっています。厳しい競争に打ち勝つため、NDKはどのような事業方針を取っていますか。

竹内氏:世界のフラット化が進行し、とくに携帯電話においては世界がひとつの市場になりました。どこかのメーカーが優れた製品を送り出すと、それがすぐに世界中に行き渡る。逆に失敗するとシェアは一気に低下してしまう。かつて企業間のシェアの逆転はきわめてまれな現象でしたが、われわれが今日相手にしているのは実に流動的なマーケットです。多くの企業に使っていただけるコスト競争力の高いマス・プロダクション・アイテムをつくり続けていく必要があるのです。

一方、ハイエンドのマーケットでは、ファーウェイをはじめとする最先端ビジネスを手がけている企業に、当社グループにしかつくれない製品、小型でハイ・パフォーマンス、そして信頼性も兼ね備えた製品を提供していく。量産品とハイエンドの両市場で、それぞれのニーズを満たしたNDKならではの製品群を開発・供給していくことがわれわれの基本方針です。

しかし、量産品であれハイエンドであれ、最高の品質を実現するという考えに違いはありません。圧倒的な品質をきっちりとつくり上げること、それが世の中の信頼を得るための唯一の方法だと信じています。

編集部:NDKの技術は携帯電話の小型化やデータ通信の高速化など、通信技術の発展において重要な役割を果たしており、ファーウェイ製品の性能の向上にも大きく貢献しています。ハイエンド製品におけるNDKの技術力は、本当に目を見張るものがありますね。

竹内氏:ハイエンド向けと言っても、自社の独断でただ闇雲に高性能な製品をつくればいいという訳ではないと考えています。お客様の具体的な要求に応えていくことが、われわれのビジネスを意味あるものにしているのです。たとえばLTE市場がこれから急速に拡大していくことは間違いないところですが、LTEを運用する場合は、データ・トラフィック量の増大に耐えうる、きめ細かいネットワークを構築しないとその機能を十分に果たすことができません。増加するLTE基地局には小型で信頼性の高い商品が求められますし、光通信機器の高スピード化、大容量化を達成するためにはより高周波の商品が必要とされます。お客様のそういったニーズに適合した製品を一つひとつ開発していくことが、結果としてハイエンド市場の開拓につながっていくわけです。

編集部:スマートフォン普及の本格化と機能の多様化、LTEの進展、車載用通信機器の拡大など、今、世界の通信市場は大きな変化の時代を迎えているように思われます。竹内社長は今後の市場動向をどのように分析されていますか。

竹内氏:通信は今日では、あって当たり前のもの、簡単な動作ひとつでユーザーのニーズを満たすほぼ完璧に近いサービスを提供するものとなりました。それを支えているインフラや、そこで機能している装置の存在を利用者はほとんど意識することがありません。世の中の誰もが安心して自分のやりたいことに集中できようにするために、通信インフラに何ができるか。そうした視点が今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。当社グループもこうした通信機器の進化を見据えて、次世代製品の創出に取り組んでいます。

パートナーシップの基盤はWin-Winの強固な信頼関係

編集部:NDKはファーウェイにとって最重要パートナーの1社ですが、竹内社長からご覧になってファーウェイはどのような会社でしょうか。

竹内氏:私がファーウェイを最初に訪れたのは1998年のことでした。それから15年が経過しましたが、世界企業を目指すというファーウェイの企業ビジョンが当時も今も変わらないことに驚いています。トップ・マネジメントの変わらぬ思い、情熱が今日の発展をもたらしたのではないでしょうか。また、ファーウェイには常に新しいことにチャレンジする企業風土があります。社員の方々と接しても、皆さんアグレッシブに目標に向かって業務に取り組んでいる。さらに、世界市場を相手にビジネスを行う場合、コストよりもまず品質で勝たなければなりませんが、私の知る限り、中国のメーカーの中でファーウェイほど品質を重要視する会社は他にありません。チャレンジする気持ちを大切にしながら、このままインターナショナルに事業を拡大していただきたいと願っています。

編集部:NDKとファーウェイの協業が成功している理由はどこにあると思われますか。

竹内氏:品質に対する徹底したこだわりや未知の領域に挑むチャレンジ精神など、ファーウェイと当社には共通している点が数多くあります。そのため、一緒に仕事をしていて実に楽しく、折衝もスムーズに進んでいきます。仕事というのは最後は「人」ですから、人と人が共感しなければ、良い仕事は生まれません。ファーウェイは一定のスペックさえ満たせば後は価格だけという安易な姿勢を決して取ることはありませんし、当社もただ儲ければよいという気持ちではつきあっていません。われわれはファーウェイの価値創造に貢献できる技術や製品を提案し、ファーウェイもそれに真摯に耳を傾けてくれる。そうしたWin-Winの意識がパートナーシップの根底にあるからこそ、両社の協業がうまく機能しているのではないでしょうか。

編集部:そうですね。ファーウェイも「通信を通じて人々の生活を豊かにする」というミッションを掲げており、企業利益だけでなくその先の社会を見据えているという点で、NDKとは根底にある理念を共有しているように思います。では最後に、そうしたWin-Winの関係を今後さらに強化にしていくにあたり、竹内社長のご方針をお聞かせください。

竹内氏:われわれはファーウェイのおかげで中国におけるプレゼンスを一段と向上させることができました。そのことに心より感謝しています。ファーウェイが調達している資材の中で、水晶が占める割合は小さなものです。数億円の製品に数点しか使用されないことさえあります。しかしファーウェイの方々は、水晶は通信機器・設備にとって欠かすことのできない最重要部品のひとつだとおっしゃってくださる。そうしたファーウェイの期待に高品質な製品を安定的に提供していくことで応えていきたいと考えています。