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テラスが描く通信の未来

テラスはカナダの通信事業者のトップ3に入るが、歴史はまだ浅い。同社は創立当初から明確な成長戦略を持っており、2000年以降の資本投資額と企業買収高は約200億米ドル(約1兆6,000万円※)になる。最近では、IPTV(InternetProtocolTelevision)の積極的な販売促進により2010年の顧客数が31万4,000人と前年比85%の増加、またヘルスケア事業にも進出したほか、ローミング料金の引き下げ最大60%などの経営努力を行っている。LTEAWS(AdvancedWirelessServices:高度ワイヤレス・サービス)周波数の運用開始が間近に迫っているが、テラスは全国的な競争力を高めるために700MHzにも応札する予定だ。テラスは北米で他社をはるかに凌ぐ最も高い周波数利用効率を誇っており、競合他社より効率性が80~90%も高い。その点から考えれば、テラスの戦う相手は他社ではなく、自らのイノベーションの力との戦いと言えるかもしれない。

イブラヒム・ジェデオン(IbrahimGedeon)氏はネットワーク・ソフトウェアと設計を専門とするエンジニアだ。ジェデオン氏はIEEE(InstituteofElectricalandElectronicsEngineers:電気電子学会)で重責を果たし、雑誌『GlobalTelecomsBusiness』で、業界で最も影響力のある100人に2回も選ばれた人物だ。

テラスのCTOを務めるジェデオン氏が、テラスの過去と未来について『WinWin』のインタビューに答えてくれた。

過去から学ぶ

WinWin:2000年以降、テラスは地域の通信事業者からカナダの通信事業者のトップ3にまで成長しました。これまでの道のりはどのようなものでしたか?

ジェデオン氏:テラスは、カナダ西部の3社と、東部のケベック州の1社の4社の地域企業が合併し、全国的にサービスを展開しています。クリアネット(ClearnetCommunications:トロントを本拠地としていた通信事業者)の買収により、全国的なカバレッジを提供できるようになりました。実際、1位から3位までは毎日プラスマイナス10%のところでひしめきあっています。ワイヤレス分野の頂点を極める三つ巴の戦いと言えるでしょう。カナ

ダ西部とケベック州北部の有線接続分野では当社が現在トップです。帯域幅、付加価値サービス、未来志向のサービスに対するカナダ国民の要求と、当社の成長が一致しているのだと思います。

WinWin:御社は2009年に移動体通信方式をUMTS(UniversalMobileTelecom-municationsSystem)へ転換されました。ワイヤレス通信は御社の業務にどのような変化をもたらしましたか?また、この決定は、カナダの消費者にどのような影響を与えたのでしょうか?

ジェデオン氏:主なところでは、これにより技術が標準化されたと思います。今では、市場シェアの95%を占めるトップ3社が、若干の違いはあるもののおおむね同じプロトコルを使用しています。これはすばらしいことです。私は、当社がちょうどよいタイミングでこのシステムに転換したと考えていますし、実際、この転換後、HSPA+のグローバル・エコシステムへのアクセスがいまだかつてないほど増加しました。以前は北米ではCDMAが非常に優勢でしたし、LTEはまだ発展初期の段階です。HSPA+により、当社は成熟したエコシステムを持つことができました。

WinWin:3G時代に入って、ネットワーク・トラフィックが著しく変わりました。たとえば、ワイヤレス・トラフィックの80%が夜間でもアクティブなままです。これは御社のネットワークにどのような影響を与えていますか?

ジェデオン氏:これは実に興味深いことです。以前の枠組みは「モバイルやワイヤレスは企業向けサービス」というものでした。しかし、今は違います。現在、モバイルやワイヤレスは間違いなく消費者向けサービスであり、常時接続サービスと言えます。

当社ではトレンドに合わせて設計を行っているため、夜間のトラフィックをさばくこと自体への影響は実際にはありません。実際に適用する場合であれ、モデル化する場合であれ、まったく問題ありません。というのも重要なのは設計だからです。ただし、小さな変化はあります。以前は高速道路周辺のカバレッジを実現するために設計を行っていましたが、今は住宅地のカバレッジを実現するために設計を行っています。したがって、トラフィックの増加は当社の設計パラメーター、前提条件、ネットワークの運用方法の刷新に役立っていると思います。

未来へ向けて

WinWin:テラスは、一部のネットワーク・インフラストラクチャーについてベル(BellCanada)と提携しています。ベルは競合他社でもあるわけですが、この提携はどのように進んでいますか?

ジェデオン氏:とてもうまくいっていると思います。たとえば、どうすれば限りあるリソースを活用して異なったカスタマー・エクスペリエンスを提供できるかなどについて協力しています。競争は続いていますが、すべてのレベルで競合する必要はありません。共通インフラストラクチャーはうまくいっていますし、ご存じのように、ファーウェイもネットワーク共有契約を実現したパートナー企業のうちの1社です。

WinWin:LTEネットワークの運用を開始するにあたり、カナダの2Gから3Gへの移行の際に起きた障害をどのようにして回避しようと考えていますか?

ジェデオン氏:われわれは、LTEの利点に関してNGMN(NextGenerationMobileNetworks:次世代モバイル・ネットワーク連合)やGSMA(GSMAssociation:GSM協会)に意見を述べてきました。技術が切りる1つの方法として、CSFB(Circuit-SwitchFallback:回線交換フォールバック)があります。ほぼ同じデータ/音声パケット・コアを使用するため、セッションが維持されます。接続が非常に高速なので、ユーザーは不満を持たないでしょう。実際に以前のような不満を最近は聞かなくなりました。また、データ・セッションは、音声セッションとは違い、リアルタイムに発生していますが、よりエラーへの耐性があります。

さらに当社は、3GとLTE間でのシームレスなインターワーキングを実現するための機能をパートナーと協力してコアとアクセスに配備しています。

WinWin:テラスは医療関連ソリューションを多数提供していますが、その中に医療、通信、エンターテインメント関連機能を兼ね備えた統合ベッドサイド端末があります。将来的には、さらに多くのホーム・メディア機器を提供する予定ですか?

ジェデオン氏:当社は2000年にインターネット・プロトコルを新たに採用したときに、画面はいずれも画面に変わりないということに気づきました。それなら、医者が見る画面はテレビ画面、あるいは薬を探している看護師の画面と同じものでよいわけです。

そこで当社は、技術とサービス戦略に合った統合ソリューションを活用することを計画しています。ネットワークに接続された家や未来志向の家では、すべてのデバイスが互いを認識し、共通のデータ空間を利用することになります。これらをテラスのクラウドに置くこともできるでしょう。ですから先ほどの質問への答えは、「提供する予定がある」ということになります。当社は、医療分野だけではなく、医療とエンターテインメント分野に製品を展開することを計画中です。

WinWin:中小企業市場での進展と将来の計画についてお聞かせください。

ジェデオン氏:中小企業市場は人によって定義が違うので難しいですね。一般的な基準は数字、たとえば社員1人あたりの収益、社員数などですが、当社では中小企業をうまく細分化できていると感じています。また、消費者向けサービスと同様に従来の企業向けサービスも必要とされていることを実感しています。

今は小さい会社にもテレビがあり、ニュースが流れていますが、これは以前にはなかったことです。受信可能な地域では誰もがテレビを持っているのです。こうした状況を踏まえて、当社の計画は非常にシンプルに焦点を定めています。タッチ、ダイレクト・タッチ、そして当社のクラウドを可能にするネットワーク・インフラストラクチャー・パートナーの活用です。今や社員3人の小さな企業が行員1,000人の銀行と同じルック・アンド・フィール(コンピューターの操作画面の見た目や操作感)を求めているため、コスト効率の良いCPE(CustomerPremisesEquipment:加入者宅内機器)も研究中です。

WinWin:スマートフォンとタブレットの利用がブームですが、御社のユーザーが将来どのような体験をするのかについてお考えをお聞かせください。

ジェデオン氏:無線帯域と有線帯域が簡単に利用可能になり料金も手頃になるにつれ、人々はモバイル・ブロードバンドを体験したいと考えるようになっています。これには、Wi-Fi、HSPA+、LTE、DSL(DigitalSubscriberLine:デジタル加入者回線)、GPON(GigabitPassiveOpticalNetwork:ギガビット・パッシブ光ネットワーク)といった手段があります。異なる機能を持つスマートフォンやタブレットがたくさん出まわっており、テレビ、タブレット、パソコン、スマートフォンなど複数のデバイスを相互に代用しながら使うことになりますが、ユーザーが本当に望んでいるのは、どこからでもアプリケーションに接続できることだと当社は考えています。ですから、当社の有線および無線ネットワークにはシームレスなモビリティーを確保することが強く求められます。

逼迫するトラフィック

WinWin:現在、われわれが対処しようとしているトラフィックの急増はとどまるところを知らないようです。テラスはこの問題にどのように取り組むつもりですか?

ジェデオン氏:LTEネットワークの構築についてはファーウェイに依頼しています。LTEはトラフィックをさばく方法の1つですが、効果的な対策はたくさんあると思います。

無線について言えば、結局のところヘルツあたりの伝送可能ビット数は限られています。これについては明らかなデータ・ポイントがあります。当社の計画は非常にシンプルです。光ファイバーのセル・サイトを活用し、信号送信とキャパシティの問題をパートナーと協力して解決するというものです。

WinWin:テラスの周波数利用効率は北米第1位ですが、どうやってこれを実現されているのでしょうか?

ジェデオン氏:周波数はリソースであり、しかも限りあるリソースです。きちんと扱えば最適化できますが、乱用すると常に不足するという状況になります。この点について言えば、当社の場合、クリアネットを買収し、1つの会社としてスタートを切ったことが大きいと思います。5GHz帯だけを見ても、相当な効率化や最適化が可能です。周波数効率について健全なDNA(Digital Network Architecture)を維持していこうというです。現在、周波数効率に関して当社は北米一かもしれませんが、世界一ではありません。これは別に悪いことではありません。新しい入札が行われても、使用可能な帯域の周波数は常に限られているのです。

共同研究開発で課題解決へ

WinWin:御社には、ファーウェイがカナダ市場に参入する際に力を貸していただきました。それ以降のファーウェイとテラスのパートナーシップについて、どのようにお考えでしょうか?

ジェデオン氏:ファーウェイとの関係は、HSPA RAN(Radio Access Network:無線アクセス・ネットワーク)、つまり広帯域CDMA RANの時代に始まったと記憶していますが、ブロードバンドまで進化し、現在は企業向けサービスやコンテンツ・サービスを検討中です。すばらしい関係で、望ましい方向に発展していると思います。また、両社のCEOの提案でカナダに複数の共同研究開発センターも設立しています。双方にとって正しい方向に進んでいると思います。

WinWin:今後、ファーウェイにどのようなことを期待されていますか?

ジェデオン氏:ファーウェイはテラス側からみて非常に対応の早い会社です。イノベーションと強い研究開発力で当社の課題を解決してくれます。

両社の関係が発展し続ける中、ファーウェイはテラスのため、特にハードコアの研究開発においてカナダでの投資を増強し、小規模サイト、アンテナなどの問題を解決に導いてくれたと思います。

WinWin:共同研究開発センターについて、もう少し詳しく教えてください。共同研究開発センターでは具体的に何を目標としているのですか?

ジェデオン氏:スマートフォンの普及に伴い、カナダのトラフィックには、とりわけワイヤレスにおいて独自の特徴がいくつか出てきています。当社はファーウェイの優れたテクノロジーの価値を理解していますが、当社にとってはカナダ市場での適用可能性を検討することが非常に重要です。特に企業向けの「クラウド・サービス」といった話になれば、なおさらです。このような事情から、これらの共同研究開発センターを設立することで、当社とファーウェイ間の互いに対するコミットメントをカナダの市場、教育機関、政府に示すことが重要だったわけです。

WinWin:共同イノベーション・センターは御社のNextGenワイヤレス計画の中ではどのような位置づけですか?

ジェデオン氏: NextGenワイヤレスを検討する際には、NextGenワイヤレスとしてのトータルなアプローチが非常に重要です。

多くの同業者や競合他社は今もカバレッジ、最適化、キャパシティを1つずつ実現しています。テラスは、この3つを同時に実現する必要性を認識しており、総合的に検討しています。実際、この3つを同時に実現すれば、3つを順番に実現する他社よりもはるかに優位に立つことができます。

TELUS

テラスは、カナダの大手電気通信事業者であり、本社はブリティッシュコロンビア州バーナビーにある。カナダ各地でデータ通信、IP、音声、映像、娯楽など幅広い通信サービスを提供している。1990年にアルバータ州で電話事業をスタート、1999年にBCTelと合併して現テラス(Telus)社として業務を開始した。2011年時点で4万1,000人を超える社員を抱えている。