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モバイル・データへの独創的なアプローチ

インドネシアでは現在、2億4,000万人規模の市場をめぐり携帯電話事業者11社がしのぎを削っている。2007年から2009年にかけての音声/SMS成長時代には、テルコムセル(Telkomsel)、インドサット(Indosat)、アクシアタ・エックス・エル(Axiata XL:以下XL)の最大手3社が成功を収めた。しかし2010年に入り、モバイル・インターネットの台頭に伴い、再び群雄割拠の様相を呈している。XLのCTO、ディアン・シスワリニ氏は、インドネシアのようにユニークな市場でモバイル・データから利益を上げるには、ユニークなアプローチが必要だと語る。

インドネシアで広いカバレージを誇るモバイル通信プロバイダー。エンド・ユーザー向けサービスはもちろん、法人向けに、音声・データを含むモバイル・テレコミュニケーションサービスを提供している。1996年設立。

約12億人の人口を抱えるインドには、携帯電話事業者が12社存在する。それに対して、インドネシアは人口が2億4,000万人とインドの5分の1程度にもかかわらず、11社というほぼ同数の携帯電話事業者がひしめいている。テレコムセル、インドサット、XLの大手3社がマーケット・シェアの大部分を握ってはいるが、それに続くGSM事業者5社およびCDMA事業者6社間の競争が激しいことは言うまでもない。

この大手3社は、従来の音声/SMS収入によってほぼ独占的な地位を築いてきた。しかし、モバイル・データの台頭に伴い、状況は変わりつつある。インドネシアの総人口の3分の1以上は20歳未満であり、特にソーシャル・ネットワーキング分野でのインターネット利用が盛んになっている。Facebookユーザー数では、インドネシアは世界第2位だ。

インドネシアの通信事業者が、来るべきモバイル・インターネットのブームというチャンスを最大限に生かす戦略を描くのは、当然だ。市場シェア16%を握りインドネシア第3位の通信事業者であるXLもその1つであり、既存の加入者基盤を生かしてモバイル・データ分野のビジネスを加速させるこを目指している。

XLの調査だけを見ても、データへの流れは決定的と言える。XLでは、2009年9月から2 0 1 0 年9月までの1 年間で、G P R S(General Packet Radio Service:GSM方式の携帯電話網を使ったパケット・データ伝送サービス)加入者数が500万人から2,000万人と、実に4倍にも増加した。また、データ・トラヒック(BlackBerryからのトラヒックを除く)は、96Tbから478Tbに増え、それに伴いデータ収入は1,600億インドネシアルピアから3,400億インドネシアルピアへと、2倍以上増加している。

テクノロジーの有効な利用方法

XLのCTO、ディアン・シスワリニ氏によれば、モバイル・データに対するアプローチにおいて同社が競合他社と異なるのは、使用するテクノロジーそのものではなく、テクノロ

ジーをどう利用するかという点だという。「当社はファーウェイを使用していますが、テレコムセルもファーウェイを使用しています。その他の通信事業者も同じです。その点では他社と大きな違いはありません。違いがあるとすれば、それはテクノロジーの利用方法でしょう」とシスワリニ氏は話す。

このアプローチには、ベンダーとの協業による将来性を考慮したネットワークの構築、料金設定方法の見直し、そして最も重要なこととして、既存のテクノロジーによって支えられた堅実な事業戦略の実施が含まれる。シスワリニ氏は、「当社の基本的な考え方は、市場のニーズによってテクノロジーを決定すべきだということです」と語る。

XLの戦略は、利用可能なテクノロジーを、市場ニーズが明らかに存在する場合にのみ展開することだという。「HSPAを性急に立ち上げようとは思いません。まず、ビジネスの観点からその可能性を見極める必要があります。またエコシステム全体の対応状況を確かめ市場の状況を見極める必要があります。市場の需要、端末の利用可能性、そしてネットワークの能力が、当社の戦略を決定する要因です。たとえば、仮に42Mbpsブロードバンドが利用可能だったとしても、それに対応した端末がなければ展開しても意味をなさないことになります。ですから、モバイル・データサービスの場合、展開のタイミングが非常に重要なのです」

料金設定の見直し

現在、モバイル・インターネットの利用が非常に盛んな先進国市場では、モバイル・データの最適な料金設定についてさまざまな議論がなされている。シスワリニ氏は、インドネシアのような発展途上国市場の場合、第3のアプローチが適しているのではないかと考えている。ユーザーがインターネット上で実際に利用した時間に基づく課金方法である。

「音声トラヒックとデータ・トラヒックの利用上の違いは、音声トラヒックを使用する顧客が使用量を把握できる点にあると思います。たとえば、通話料が1分あたり1ドルの場合、3分が経過したら3ドルを使ったことがわかります。それに対し、データ利用の場合は、どのくらいの量を使用したのかわかりません。そこで、当社が現在、従量課金の代わりに提供しているのが時間ベースのインターネット・パッケージ。5時間パッケージ、1日パッケージ、5日パッケージなどを用意しています」とシスワリニ氏は説明する。ユーザーが支払いの対象と金額を正確に

把握できることから、顧客には非常に好評だという。また、XLも、この課金方法には満足している。使用量が適正なレベルに保たれ、「ネットワークのためになる」からである。

この解決策は偶然見つかったものではない。「以前は毎月1GBの上限を設けていました。ところが、ユーザーはこの割当量を5日間で使い切ってしまうことがわかったのです。上限に達した後は、サービスを停止するのではなく、速度を大幅に下げる形にしました。それがユーザーの大きな不満となったのです」。

シスワリニ氏と彼女のチームは、ユーザーが比較的高速な2つの速度の違いを具体的に区別できないものの、高速と低速の場合は、明らかに後者にストレスを感じているということに気づいた。「顧客にとって、インターネットが高速と感じられる限り、380Kbpsとか、500Kbpsとかいった速度は重要ではありません。しかし、当社が上限を設け、上限に達した後に速度を64Kbpsまで下げていた当時、ユーザーは相当なストレスを感じていました。この時間制限によって、最高の速度を提供するわけではありませんが、速度を最低まで下げることもしません。これは、当社にとっても、顧客にとっても双方が満足できる折衷案なのです」

シスワリニ氏は、インドネシアのような発展途上経済の場合、携帯端末ベンダーが端末の低価格化によってモバイル・データ利用普及に貢献することを期待している。

「現在、インドネシアにおける3Gの普及率は15%足らずであり、その主な理由は3G端末と2G端末の価格差にある。「携帯端末メーカーにはスマートフォンの低価格化をお願いしたいと思います。インドネシアでは、スマートフォンは150米ドル程度で販売されています。具体的な方策はわかりませんが、これを20米ドル以下に抑えられたらと思っています」