サービスのイノベーションで5G 展開を加速
ファーウェイ(中国語表記:華為技術、英語表記:HUAWEI) 取締役副会長兼輪番会長 胡厚崑(ケン・フー)は6月26日、Mobile World Congress 上海 2019 (6月26日~28日、上海新国際博覧中心)で同イベントの基調講演に登壇し、5G展開の最新状況を報告したほか、サービスにおけるイノベーションと異業種横断の協業でいかに5Gの次の成長フェーズが加速されるかについて具体例を挙げて説明しました。
「ネットワークそのものは、すべての基礎です。しかし5G展開の将来はどのようなサービスが提供されるかによって大きく変わります。5Gで実現するサービスイノベーションは、ネットワーク性能を新たな次元に押し上げ、通信事業者が5G投資からより多くの収益を確保できるよう支援します」
MWC19上海で基調講演を行うファーウェイ 取締役副会長兼輪番会長 胡厚崑
胡厚崑のMWC19上海での基調講演全文は以下をご覧ください。
はじめに、5G展開におけるファーウェイの進展をいくつかご報告させていただきたいと思います。ファーウェイは今日までに5Gに関する商用契約を世界各国の通信事業者50社と締結し、15万局の5G基地局を出荷しました。これは、同業他社をはるかに超える実績です。欧州、中東、アジア太平洋など、多くの地域の通信事業者が競い合って5Gネットワークの構築に力を入れています。
喜ばしいことに中国は今月に入って5Gの営業免許を通信事業者に発給し、世界最大のモバイル通信市場であるここ中国の5G商用化が始まりました。中国は世界の他の地域にとっての優れた先例となり、各国での5G展開に有益な知見を提供できるものと信じています。
イノベーションはマラソンである
なぜ当社の5Gは、これほど多くの通信事業者に選ばれているのでしょうか。その最大の理由のひとつは、ファーウェイの長期的な投資であると考えています。
私たちはしばしば、イノベーションはマラソンであると申し上げています。マラソンは速くなければならないのは言うまでもありませんが、辛抱強さがなければ走り抜くことはできません。ファーウェイの5G技術への投資には3つの特徴があります。
第1に、早期に投資を開始したことです。私たちは5G技術の研究を2009年に開始しました。世界ではその年に4Gの商用展開が始まったばかりでした。
第2に、重点的・継続的に投資を行ったことです。ファーウェイは過去10年で5Gの研究開発に40億米ドル(約4,311億円※1)を投資しました。
第3に、深く投資することです。これが、私たちが競合他社と一線を画した理由です。5Gの研究を始めたときには依拠する標準というものはなく、基本的にゼロから始めなければなりませんでした。つまり、すぐに製品開発に着手できたわけではなかったのです。製品は大変長いプロセスを経た後の結果に過ぎません。初めのうちは、通信規格の開発とチップセット、部材、アルゴリズムの基本研究に重点を置きました。
私たちは、こうした持続的な研究開発への投資によって競争優位を維持してきました。例えば、ファーウェイは2,500件以上の5G標準必須特許を保有していますが、これは世界の5G特許全体の約20%に相当します。また、中国・IMT-2020(5G)推進グループが実施した5Gフィールド試験第3フェーズで、私たちのソリューションは競合をしのぎ、多くの主要指標で最高の性能を示しました。
しかし、イノベーションとは単に技術における先進性を指すだけではありません。私たちが成功したもうひとつの要因は、5Gをより運用しやすく、より手頃に、より簡単に展開できるものにするよう注力したことです。
ファーウェイの5G基地局は4G基地局より20倍も性能が優れています。こうした性能向上を実現する一方で、5G基地局の軽量化・小型化に成功し、お客様の5G展開コストを大幅に低減しています。そのため、ファーウェイの5G基地局はスタッフ2人がわずか2時間で設置することができます。これは4G基地局と比べると約半分の設置時間です。
5Gビジネスの成功を導く
現在、5Gはすでに大規模に展開されています。5G展開の将来を見据えて優先的に取り組まなければならない課題は何でしょうか。
ネットワークそのものは、すべての基礎です。しかし5G展開の将来はどのようなサービスが提供されるかによって大きく変わります。5Gで実現するサービスイノベーションは、ネットワーク性能を新たな次元に押し上げ、通信事業者が5G投資からより多くの収益を確保できるよう支援します。
動画サービスが良い例です。4GではTikTokのようなショート動画アプリが大変人気になり、大量のデータトラフィックを生み出し、通信事業者にも新たな収益源をもたらしました。
5G時代に入ると、さらに幅広いアプリケーションが登場することでしょう。4Gではオンデマンド動画視聴がメインでしたが、5Gではより多くの双方向のインタラクションや臨場感のある動画サービスを見ることになるでしょう。
5Gでより豊かな想像力を掻き立てるライブ中継
5Gは世界を変えるでしょう。垂直産業に5Gがもたらす価値は明らかです。
例えば、メディア産業ではライブ中継が重要な収益源となっています。今日では、ライブ中継は主にマイクロ波や通信衛星を利用して行われ、ライブ中継の現場には数多くの中継車が配備されています。こうした中継車の維持には多くのコストを要し、事前の準備にも数日かかります。
5Gはこうしたライブ中継を劇的に変えるでしょう。こちらは、ライブ中継用の5Gリュックサックです。リュックサックの中には5G対応宅内装置(CPE)が入っています。軽くて小さなこのCPEは、車の屋根や机などにも置くことができ、わずかなコストでライブ中継を可能にし、ライブ中継の世界をすでに変えつつあります。
プラグアンドプレイ方式のため、事前の準備も必要ありません。必要な時に、このCPEをリュックサックに入れてワイヤレスカメラを設定しさえすれば準備完了です。
このCPEは今年6月、中国で端午節に開催されるドラゴンボートレースの中継で活用されました。テレビ局は以前であれば、何日も前に高価な中継車を配備しなければならず、1時間の映像撮影に多くのコストをかけていました。中継費用を提供してくれるスポンサーも限られていたため、視聴者が見られるのは1台のカメラで1つのアングルから撮影した単調な映像しかなく、理想的なユーザー体験とは言えませんでした。
しかし5G対応CPEが入ったリュックサックがあれば、すべてのドラゴンボートレースのライブ中継が可能なうえ、多様な応用も可能になります。例えば、ボートごとにワイヤレスカメラを載せることで、クローズアップした臨場感のある映像を世界中の視聴者に届けることができるようになります。
5Gでより効率的な送電網点検
5Gの成功事例は、送電網の保護、ドローンを活用した保守点検、スマートメーターなどへの活用が期待される電力業界にも登場しています。
特にドローンによる保守点検は、高く注目されています。これまで、送電線の点検は人の目で行われ、1人が1日に4キロメートル相当を検査するのがやっとでした。5G対応のドローンがあれば、電力会社はこれをネットワークを介して制御しながら、指令センターに高精細なライブ映像を送信することができます。これにより、毎日15キロメートル相当の送電線をより効率的かつ安全に点検することが可能になります。
5Gでより安全な採掘
こちらは内モンゴル自治区にあるレアアース鉱山です。鉱山は総じて気候が荒く、厳しい現場環境にあります。特に現場を行き来して鉱石を運ばなければならないドライバーにとっては危険です。こちらの鉱山には30台のトラックがあり、1台につき4人のドライバーで2シフトを組んでいます。
こうした状況で、鉱山事業者とその労働者にはいくつかの課題があります。
第1に、頻繁に起こる事故です。最も熟練したドライバーですら、このような環境では危険な状況を避けるのは困難です。
第2に、効率の悪さです。熟練のドライバーでも時速10キロメートルしか出せません。それよりスピードを上げると危険です。
第3に、コストです。この鉱山のドライバーの年収はおよそ25万人民元(約396万円※2)、月収では約2万元(約32万円※2)です。これは中国のドライバーにとってはとても高い水準ですが、それでも適切な人材を採用するのが難しく、人材確保が課題となっています。
5Gはこのような課題の解決に役立っています。5Gネットワークと対応モジュールを搭載した遠隔運転対応の採掘トラックを開発することで、費用の面ではドライバー1人あたりおよそ100万人民元(約1,584万円※2)のコストを削減できるうえ、トラックの運転速度を時速10キロメートルから35キロメートルに上げることができ、効率も大幅に向上しています。
最も重要なことは、トラックは遠隔地から制御可能なため、ドライバーは危険な労働条件に身を置く必要がないということです。コスト、効率、安全の見地から、5Gは鉱業に多くの価値を提供することが可能です。
5Gはデジタル化を牽引する
5Gは産業全体のデジタル化にきわめて重要な役割を果たします。中国では今、自動化、デジタル化、AIが牽引する産業発展が進んでいます。5Gはちょうど良いタイミングで商用化され、これを支えています。
5Gは既存の無線ネットワークに比べ、より広帯域かつ低遅延のネットワーク接続を実現でき、専用のネットワークスライスで個々のアプリケーションのサポートが可能です。これにより、5Gは広範囲な産業ニーズを満たすことができ、いっそう自動化されたインテリジェントな未来のための基盤を築きます。
インテリジェンスを活かす産業が増えるにつれ、クラウド、AI、ビッグデータ、エッジコンピューティングなどの技術が今まで以上に必要とされていますが、5Gがあれば、こうした技術はより多様な産業向けアプリケーションを効率的にサポートすることができるでしょう。
5Gはクラウド、AI、エッジコンピューティングの真の力を解き放ち、これらの技術をより産業環境に浸透させていくことでしょう。5Gはこれらの技術と融合することで、さらにデジタル化のプロセスを加速させるでしょう。
5Gエコシステムの構築
5G成功のカギは、個々の産業セクターのニーズに対応できるかどうかにあります。ファーウェイを含む技術ベンダー各社は、業界を横断した協業に取り組み、多様な産業のビジネスシナリオとニーズをよりよく理解する必要があります。
ファーウェイはこうした目的のため、2016年に、通信事業者と産業パートナーが集い5Gの産業応用に向けたアイデアを生み出すためのプラットフォーム「ワイヤレスXラボ」を設置しました。また先月、韓国にこの地域での幅広い協業を支援するため、世界初の5Gオープンラボを開設しました。
ファーウェイはこうした異業種横断の協業プラットフォームを活かし、スマートグリッド、メディアなど垂直産業のパートナー各社とともに100以上の5G共同プロジェクトを進めています。
ここ中国で5Gの営業免許が発給された6月6日は大きなマイルストーンとなり、2019年は正式に5G元年となりました。中国に本社を置く5Gのリーディング企業として、ファーウェイは積極的に当社の役割を果たしていきたいと考えています。
5Gの時代はすでに幕を開けました。ファーウェイはパートナーとの連携をいっそう緊密にし、コラボレーションを加速していきます。皆様とともに、5Gを活用して産業全体のデジタル化に向けて尽力していきましょう。
※1 1米ドル=107.77円で換算(2019年6月26日現在)
※2 1人民元=15.84円で換算(2019年6月26日現在)
※本参考資料は2019年6月26日(現地時間)に中国・上海で発表されたプレスリリースの翻訳版です。