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現地の強みを生かしたグローバルな研究開発

2018.01.17

お客様志向のイノベーションに向けて研究開発に注力するファーウェイは、世界各地に15か所の研究開発拠点を設置し、現地の人材や文化の特長を生かした専門領域の研究開発を進めています。

先進的なマイクロ波研究で知られるミラノに、ファーウェイ初の海外研究開発拠点を設立した経緯をご紹介します。

レナート・ロンバルディ
(Renato Lombardi)

ファーウェイ
ミラノ研究センター ディレクター

ミラノ工科大学卒業後、シーメンスに入社。マイクロ波技術セールス部門を統括したのち、研究開発部門のトップを務める。2006年より同社とノキアとの合弁会社シーメンスネットワークで2社の統合チームのメンバーに就任し、その後マイクロ波事業部のプロダクトマネジメントの責任者に。2008年、ミラノ研究センターの立ち上げのためファーウェイに入社。2011年には優れた業績を収めた技術専門職の従業員に贈られる最高位の称号「ファーウェイフェロー」を授与された。

ファーウェイとの初めての出会い

初めてファーウェイのことを知ったのは2004年でした。当時シーメンスでマイクロ波製品を担当していた私は、カンボジアでのプロジェクトでファーウェイに製品を販売したのです。

深圳本社を訪問する機会を得て、展示ホールや工場を見学し、ファーウェイの歴史や業績について話を聞き、「これは中国企業ではない」という印象を持ちました。少なくとも、当時の中国企業のイメージとはかけ離れていたと思います。製造に携わる社員はごくわずかで、大多数が研究開発に従事しており、長期的なイノベーションにリソースが集中されていました。当時はまだグローバル企業としては小規模でしたが、上司への報告書に「今後数年でファーウェイは大きく成長するだろう」と書いたことを覚えています。

このときは、まさか自分がファーウェイの一員になるとは思ってもみませんでした。しかしその3年後、ファーウェイのマイクロ波チームのメンバーから1本の電話がありました。

マイクロ波を研究するなら専門家が集まるミラノしかない

12月の寒い午後、のちに同僚となるデニス・ハンと、開設間もない欧州研究センターの所長だったアレックス・ツァイと、ミラノのカフェで面会し、ビジネスプランについて議論しました。ツァイは、ファーウェイのIPマイクロ波製品(屋外ユニット)のコア要素はほとんどOEMサプライヤーに頼っており、この分野においてファーウェイは競争力や人材が不足していると率直に語ってくれました。屋外ユニットの自社開発実現に向けて、マイクロ波分野の動向を見定められる専門家を探しているというのです。

私たちは日が暮れるまで議論を続け、ファーウェイはマイクロ波研究開発センターを設立すべきだという結論に至りました。そのセンターを成功させるには、優れた人材が豊富に揃う土地に作ることが必須です。それはミラノしかない、と全員の意見が一致しました。ミラノにはマイクロ波技術を扱う多くの著名な企業が研究開発やセールスの拠点を置いており、専門家を輩出する教育機関も多数あります。ここでなら、現地の人材やエコシステムを十分に活用できると考えたのです。

さらに私たちは、研究開発センターの立ち上げにあたってどれだけの人員と資金をマイクロ波に投資すべきかといった具体的な計画まで話し合いました。この議論はとりわけ印象深く、これによって私はファーウェイに入社する決心をしました。

すべてを1からスタート

現職と比べ待遇が下がることも、すべてを1からスタートするのは大変であろうこともわかっていましたが、私には強い熱意と、あらゆる新しいものを受け入れる覚悟がありました。ファーウェイで人生の新たな幕開けを経験し、自分のチームを作り上げて、新規事業の立ち上げに携われるのです。こんなに魅力的なことはあるでしょうか? これは一種の「再生」です。ラテン語で「新たに生まれる」を意味する「Renato」という名を持つ私には、すばらしいチャンスに思えました。

2008年の夏、私は4人のチームメンバーと、ファーウェイのミラノオフィスにあるエアコンの効かない小さな部屋に集まり、「オフィスを借り、人材を採用して、研究センターを1から立ち上げる」という未来を描いていました。私はそれまでの人脈を生かし、10~20年以上の経験を持つマイクロ波の専門家たちに声をかけ、最初のマイクロ波専門コアチームを発足させました。

多国籍の同僚たちと議論

2週間でテスト用ラボを完成

当時ファーウェイは、欧州の大手通信事業者から契約を獲得し、数か月でマイクロ波製品の概念実証(Proof Of Concept、PoC)を完了するという大きなチャレンジに直面していました。私は中国人の同僚とともにテスト環境の構築に着手しましたが、問題はどこに作るかです。

ミラノの新しいオフィスには、きちんとしたラボ施設はまだありません。しかし私はなんとかしてミラノでPoCを実施し、マイクロ波専門チームの意気込みと能力をお客様に見てほしいと考えていました。

私は旧知の仲であるお客様の社員をランチに誘い、「来週のファーウェイとのミーティングで、ミラノでテストをやってほしいと話してもらえないか」と伝えました。1週間後、営業チームが「レナート、驚くだろうが、お客様はミラノでテストをやってほしいそうだ」と言いにきました。

これには喜んだものの、その時点でテストの期日までわずか数週間。中国からかけつけた十数名のサポートチームや現地スタッフとともに、床のタイル貼りや配線まで総出でやり、何もないところから2週間ほどでラボを完成させました。

お客様の要求に応える中国とミラノの連携プレー

それでも、期日までにテストは完了しませんでした。旧正月の時期にもかかわらず、西安と成都の中国人スタッフが24時間体制でサポートしてくれ、チーム一丸となって2週間後にはようやくお客様の求めるレベルの結果を出すことができました。

数日後、当時固定ネットワークプロダクトラインのプレジデントだった丁耘(ライアン・ディン)がミラノを訪れたとき、私はなぜミラノでテストを行ったのかを説明しましたが、お客様にお願いするという裏技を使ったこともあり、やや気が引けていました。しかし彼は「心配はいりません。あなたがお客様に頼む前から、私たちはあなたのいるミラノでテストをしようと決めていたのです。結果的にはすばらしい成功でした」と言ってくれました。

これは最初の一歩にすぎませんでしたが、われわれにとっては大きな一歩でした。このテストでファーウェイは初めて自社のマイクロ波技術をお客様に披露することができました。ミラノオフィスは単なるセールス拠点ではなく、お客様の要求を理解し、それを満たすことのできる研究開発とサービスデリバリーの能力も十分に備えていると証明できたのです。

屋外ユニットの自社開発を実現

これと並行して、チームは念願だった屋外ユニットの自社開発にも着手していました。私自身とチームメンバーの20年以上の経験を頼りに、私たちは西安と成都のR&Dチームにシングルボード設計のソリューションを提案しました。これによって、製品性能と製造のしやすさの点で競合製品をしのぐことができますが、技術的な難易度は上がるため、R&Dチームには高い要求が課せられます。

3か所に点在したチーム間でのメールや電話、対面での長く激しい議論を経て、最終的にこの試みは成功し、マイクロ波屋外ユニットを完全な自社製品として発売することができました。XMCシリーズというこの製品の名称はExtreme Modulation Capacityの略ですが、私にはこの共同イノベーションを生み出した「Xi’an(西安)、Milan(ミラノ)、Chengdu(成都)」の頭文字のように見えてなりません。いまやファーウェイのマイクロ波屋外ユニットは業界をリードする製品となり、市場シェアも群を抜いて1位となっています。

イタリア人も中国人もプラグマティスト

ファーウェイに入社して以来、中国企業で働く西洋人として文化の違いにどうやって適応しているのか、と何度も尋ねられてきましたが、何も特別なことをする必要はないと思います。どんな企業であれ、会社の価値観、リーダーたちの働き方やマネジメントのスタイルを理解し、そこで自分にはどんな貢献ができるかを考えればよいだけです。

私が入社したころ、ファーウェイはまだ子どものようでした。規模は大きいものの、プロセスやシステムなどいろいろな点で成熟しているとは言えませんでした。不平を漏らす同僚も多く、「なぜ君は文句を言わないんだ?」と聞かれることもありましたが、私はこう答えていました。「われわれは問題を見つけ、提案をし、解決するために雇われているんだ。どんな会社も成長につれていろいろな問題にぶつかるが、ファーウェイも同じだ。問題がなければ、われわれがここにいる意味もないだろう?」と。

背景にある文化や考え方を理解することも重要です。私はチームの現地採用メンバーには、中国人の同僚をよりよく理解するために中国語の基礎を学ぶこと、中華料理を食べることを推奨しています。言葉を流暢に話せる必要はありません。それよりも、人を理解することが大切です。

イタリア人も中国人も、目標達成のために、現実的で割り切った解決法を見つけ出すプラグマティストという点では共通していると思います。出自や文化の違いに関係なく、必要とされていることを成し遂げさえすれば、互いに受け入れあえるのです。

「どんなサポートが必要ですか?」

本社の幹部は、これまで経験したことのないような多大なサポートをしてくれます。ふつう上級幹部に会うときには報告を求められるものですが、私は入社後初めての本社出張で上級幹部たちから「どんなサポートが必要ですか?」と聞かれ、とても感銘を受けました。その2時間後には、幹部に私のサポートを任された同僚たちから電話が飛び込み始めたのです。その後も本社へ行くたびに彼らは毎回私と話す時間を作り、最後には「どんなサポートが必要ですか?」と聞いてくれます。

いまでも私は自分がラッキーだと思っています。こんなにすばらしいチームとともに、業界をリードする研究をし、新しいアイデアを生み出して貢献できるというのは、本当に幸運です。1から立ち上げて成長を続けているミラノ研究センターは、まるで我が子、自分の一部のようです。これから先もたくさんのチャンスが待ち受けていると思うと、いまもわくわくしています。

イタリアらしく、料理を通じてチームビルディング