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モバイル・インターネット時代における競争のあり方: 入門編

モバイル・インターネットが一般的となりつつある今、通信事業者はパイプの価値の保護と最適化を図りながら、モバイル・インターネットへの移行を可能な限り速やかに進める必要があります。インターネットは、その中核にあるQoEとニーズに対する進化と共に発展を遂げてきました。したがって、通信事業者が成功するためには、ビジネスシェアの中核を構成するQoEとニーズを把握し、新しいテクノロジーとビジネスモデルによってユーザーの要求を満たさなければなりません。

9次元モデルns

モバイル・インターネットの中核的競争力モデルは、デバイス、パイプ、クラウドの縦軸とハードウェア、ソフトウェア、さらにウェットウェアの横軸の掛け合わせから生まれる9次元のパラダイムです。ウェットウェアとは、人間の脳のイメージ。コンピューターシステムと結びついたプログラマーやオペレーターを指すこともあります。どの次元においても、シェアを構築できるかどうかは、ユーザー、つまり、人の要求に対する洞察力と理解力によって決まります。

デバイスーパイプークラウドの接続

デバイス - パイプ - クラウドの接続により、ユーザー・エクスペリエンスがエンド・ツー・エンドで提供されます。

たとえば、ビデオサービスには、

①優れたスマート・デバイス

②すっきりしたデザインで視覚的にわかりやすく、使いやすいクライアント・ソフトウェア

③ビデオサービスの最小閾(しきい)値以上の速度を確保するためのクラウド(アプリケーション・プラットフォーム)からパイプ(あらゆるレベルのネットワーク)を経てデバイスまでのトラヒック・フロー

この3つの価値が必要です。QoSシステムは、ジッター、遅延、または歪みがないことを

保証する必要があります。

それには、ビジネスに即したシステム設計を施し、標準を規定し、主要テクノロジーをデバイスからパイプ、クラウドまでエンド・ツー・エンドで開発しなければなりません。また、ミドルウェアとシステム設計、統合、検証、および実装も同様の方法で行うべきです。インターネットでは、デバイス、パイプ、クラウドはそれぞれ運用者が異なるため、これら3つの要素をシームレスに接続することは容易ではありません。たとえば、Googleの検索トラヒックは帯域幅がネックになっていますし、iPhoneは3Gネットワークの能力不足を理由にWi-Fiを独自にサポートしています。世界的に見て、3Gネットワークは高コストとスマート・デバイスの不足から、5年以上にわたって本格的な普及が進みませんでした。

しかし、2009年のiPhoneの成功により、業界のエコシステムは変わりました。スマート・デバイスの出荷台数が増え、通信事業者のモバイル・ブロードバンド・トラヒックは世界中で大幅に増加しました。その一方で、十分なコンテンツやビジネス機能を持たない通信事業者は、「空」のパイプを運用するだけの存在になる傾向が次第に強まっています。

「ハードウェア - ソフトウェア -

ウェットウェア」のコラボレーション

QoEとニーズを把握し、対応する方法は、依然として課題のままです。

Googleは、ユーザーが求める価値やエクスペリエンスに基づいて、「検索応答時間」と「検索結果精度」という、2つの重要な指標を策定しました。

利用シナリオ調査および競争力分析によれば、Googleの検索応答時間は世界平均で20ミリ秒で業界のベンチマークとされています。検索結果に関して、Googleはキーワードに密接に関連する膨大な情報24時間以内に収集し、関連性の高い順に1つの画面に情報を表示する必要がありました。

20ミリ秒以内で結果を表示するために、極めて強力なクラウド・コンピューティング検索およびクラウド・ストレージ・アーキテクチャーを構築。さらに、適時性要件を満たすために、『Web Spider」と呼ばれるリアルタイム情報収集テクノロジーを開発しました。また、検索精度要件を満たすために、ユーザー情報に基づいてマイニング適応アルゴリズムを考案。結果として、これらの新しいアーキテクチャー、テクノロジー、そしてアルゴリズムがインターネット検索における成功のカギとなっています。

たとえば、Facebook、Twitter、Foursquare、新湊微博(シナ・ウェイボ)などは、ユーザーのソーシャルニーズに対応するために、ソーシャルCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)をベースにした新しいネットワーキング・サービスを展開しました。FacebookにおいてはトラヒックがGoogleを上回り、ウェットウェアを利用してGoogleのハードウェアおよびソフトウェアを迂回するビジネス戦略を成功させました。

現在、GoogleはSNS Webサイトにおけるブレークスルーを目指しており、Google+1を投入する一方で、Twitterやその他のSNSを買収するチャンスを模索しています。また、トラヒックの急速な増加に伴い、SNSも、サービス、コンピューティング能力、ストレージ容量、低コスト運用能力などの課題に直面しています。さらに、強力なハードウェアおよびソフトウェア・プラットフオームによるサポートと最適化が必要です。

このように、ハードウェア‐ソフトウェア‐ウエットウエアのコラボレーションは、QOEとニーズの進化や市場競争によって促される不可避の流れであることがわかります。

ハードウェアを人間の身体や骨格、ソフトウェアを血肉とすれば、ウエットウエアは生きた能力や思考、知恵を身に付ける働きをもつ脳および神経系です。Googleにはカ強い手足がありますが、アイデアを補う必要があります。逆に、FacebookやTwitterなどのSNSは高度な脳を備えていますが、身体を鍛える必要があります。「ハードウェア‐ソフトウェア‐ウェットウェア」の優れたコラボレーションを実現した者のみが競争力を持ち、持続可能な発展を遂げることができます。

3 つの中核的要素に基づく

ユーザー情報

ユーザーのQOEやニーズに基づくイノベーションは、ビジネスにおける競争の本質です。そのためには、ユーザーの行動や消費、社会的関係の履歴に関する情報を徹底的に分析し、理解する必要があります。また、ユーザーの潜在的ニーズを刺激する相互作用メカニズムに加え、ユーザーが求める価値およびエクペリエンスを満たすビジネスやサービスのインテリジェント・シミュレーションも必要です。

したがって、「人(ユーザー・プロファイル)」、「場所(場所およびシナリオ情報)」、「状況(各種クラウド・アプリケーションや拡張ユーザー・ブロファイル)」という3つの中核的要素に基づくユーザー情報をリサーチし、利用することが不可欠です。

コンピューティング・プラットフォームでは、CRMベースのインテリジェント・シミュレーション・システムにより、時間、場所、シナリオ、人に固有のQOEとニーズを探求し、新しいアプリケーションやサービスを革新的な方法で設計することができます。

モバイル・インターネットの新思考

モバイル・インターネットの台頭に伴い、通信事業者にとって、自社のビジネスモデルを分析し、新しいビジネスのアイデアを開発することが最優先課題となっています。

フリーミアム

第1に、モバイル・インターネットのビジネスモデルを理解し、採用する必要があります。モバイル・インターネットのビジネスモデルは『フリーミアム」です。これについては、クリス・アンダーソン著「Free: The Future of a Radical Price」の中で検討されています。

フリーミアムとは、基本的な製品またはサービス(ソフトウェア、Webサービスなど)は無料で提供するのに対し、高度な機能や関連製品、サービスには割増料金を課金するしくみのビジネスモデルです。

「フリーミアム」という言葉は、「フリー(無料)」と「プレミアム(割増料金)」という、このビジネスモデルの2つの側面を組み合わせた混成語です。このビジネスモデルは、Web2.0企業やオープンソース企業の間で支持されています。

極端なケースでは、1%の高付加価値コンテンツ/サービスが有料で、99%のコンテンツ/サービスは無料です。この場合、1%の高付加価値ユーザーが99%の無料ユーザーを支えていることになります。したがって、通信事業者はネットワーク・アーキテクチャーおよび運用コスト構造において、通信オペレーションモデルを根本的に変革する必要があります。たとえば、Googleの場合、従来のモデルでは年間640億ドルの支出が必要でしたが、現在ではクラウド・アーキテクチャーの採用により、年間投資額は16億ドル程度で済むようになったと言われています。

メトカルフェの法則

第2に、モバイル・インターネットの発展を左右する原則に従う必要があります。モバイル・インターネットの進化を喪すS曲線が下側の変曲点に適すると、そのサイクルは長くなります。そのため、利潤モデルが具体化する前に、「通信ネットワークの価値は、システムに接続したユーザー数の2乗に比例する。また、通信網の価格はユーザー数に比例する」という「メトカルフエの法則」に従って、限界点を超える数のユーザーを確保する必要があります。

たとえば、Facebookのユーザー数が100万人だった頃、同Webサイトの推定価値は500万米ドルでした。つまり、ユーザー1人当たりの評価額が5米ドルということです。その後、ユーザー数が5億人に達するとその推定価値は600億米ドルを超え、ユーザー1人当たり120米ドルの推定価値があると評価されました。すなわち、損益分岐点に達する前に、事業収益に基づく従来の手法ではなく、ベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティの観点から、モバイル・インターネットの価値を評価し、管理する必要があるということです。

収益モデルの確保

第3に、業界のベンチマークから学びながら、段階的かつ着実に収益モデルを確立する必要があります。

現在、インターネットで成功している主な収益モデルとしては、Yahoo!や新浪(シナ)のポータルの情報広告モデル、Googleや百度(バイドゥ)の検索広告モデル、騰訊(テンセント)や盛大(シャンダ)のデジタル・ユーティリティーベースのモデル、阿里巴巴(アリババ)やeBayのeコマースモデル、AppleのApp Store、Netlixのコンテンツ独占モデルなどがあります。

そして、ファーウェイのコア・バリューの「お客様志向」に基づき、ユーザーの立場に立ちユーザー価値とユーザー・エクスペリェンスを満足させるサービス設計が肝要です。また、主要技術アーキテクチャを基盤に中核的競争力を構築する必要があります。さらに、十分なリソースを確保し、時勢に応じたM&Aまたは提携を図ることにより、市場投入までの期間を短縮する機会をとらえるべきです。