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アリババ(阿里巴巴)の11月11日(双十一)

11月11日は、中国では「光棍節(グァングンジェ)」「双十一(シァンシーイー)」と呼ばれている。光棍とは独身男性のことで、この日は1が4つ並ぶことから男女を問わず独身者を祝う記念日とされており、近年では独身者たちが自分のためにオンライン・ショッピングを楽しむ日として定着している。中国最大のeコマース企業アリババが有するオンライン・ショッピング・サイト淘宝(Taobao)では、毎年「双十一」の1日だけで驚異的な売上を記録する。その大規模なオンライン商取引を、ファーウェイのサーバー製品が陰で支えている。

ファーウェイITプロダクト・ライン サーバー・マーケティング部 マネージャー

高凡(ガオ・ファン)

アリババ・グループ

1999年、元英語教師である馬雲(ジャック・マー)が中国浙江省杭州市にて設立。中国と国外の企業間取引をマッチングするAlibaba.comからスタートし、現在はオンライン・ショッピング・サイトの淘宝と天猫(Tmall)、オンライン決済サービス支付宝(Alipay)、クラウド・サービスを提供する阿里云(Aliyun)など、多数のサービスを展開している。中でも淘宝はC2C取引とB2C取引の両者を扱い、中国のeコマースにおいて圧倒的なシェアを占める。今年9月、米国にて株式上場し、フェイスブックを上まわる時価総額となったことで注目を集めた。

中国最大のeコマース企業

 中国におけるインターネット利用者数は、2005年に1億人を超えて世界第2位に、2009年には3億人を超えて世界第1位になり、2013年には6億人を超えた。これは世界のインターネット利用者の22.4%にあたり、米国における利用者数の2倍に及ぶ。

 インターネット利用者数の増大とともにeコマースが急速に拡大する中、アリババは急成長を遂げ、中国最大のeコマース企業となった。現在、淘宝の登録ユーザー数は5億人に迫る勢いで、毎日6,000万人以上がサイトを訪れ、700万以上の出店者が8億点以上の商品を取り揃え、1分間に4万8,000点もの商品が売れている。また、B2Cショッピング・サイト天猫には5万社以上の企業が出店しており、オンライン決済サービス支付宝(Alipay)の登録ユーザー数は2013年12月末時点で約3億人となっている。

 オンライン・ショッピングの祭典が繰り広げられる11月11日、淘宝を筆頭に多くのeコマース・サイトは大々的なセールを実施し、莫大な売上を上げる。淘宝では、2012年11月11日には取引件数が1億件、取引額が190億元※(※2,850億円)、2013年11月11日には取引件数が1億7,100万件、取引額が350億元※(※5,250億円)以上を記録した。

性能と効率への厳しい要求

 わずか1日でこれほど大規模なオンライン商取引が行われる「双十一」に滞りなくサービスを提供するには、高い性能と安定性を備えたシステムが必要になる。実際、中国最大のeコマース・プラットフォームであるアリババは、ITの利用においても大きくリードしている。2012年以降、同社は最小限のコストで最大限の性能を備えたハードウェアとソフトウェア・システムを実現するために、淘宝のフロントエンドとバックエンドのソフトウェアを自社開発したほか、オープンソースやカスタマイズしたソフトウェアを利用してきた。また、ハードウェアにはx86サーバーを使用し、ソフトウェアの機能に合わせたカスタマイズをして導入している。

 こうした状況から、アリババにサーバーを提供するベンダーには、研究開発能力、製品の性能、サービスの質といった面で厳しい要求への対応が求められる。2013年、アリババはミッドレンジ・コンピューターとストレージ機器をx86ラック・サーバーで段階的にリプレースすることを決め、その多くにファーウェイ製品を採用した。

 サーバーのリプレースにあたり、アリババは次のような課題を解決する必要があった。

●膨大な小サイズ・ファイルへのアクセスに必要な高い同時処理能力

 膨大なアクセスがあるeコマース・サイトでは、ユーザーはほとんどの時間を画像の閲覧に費やしている。淘宝のトラフィック分析では、ホームページの閲覧は全トラフィックの10%未満に過ぎず、90%以上を画像の閲覧が占めており、特に人気商品の画像へのアクセス・トラフィックがきわめて大きい。淘宝の出店者は写真の画質、アップロード速度、アクセス速度を重視している。アリババは300億以上に及ぶ大量の小サイズ・ファイルへのアクセスに対する同時処理の要件を満たすため、TFS(Taobao File System:淘宝ファイル・システム)を使用している。TFSはインターネット・サービス向け分散ファイル・システムとして、ファイル・サイズが1MB未満の大量の非構造化データの処理に使われている。TFSクラスターは2つのNameServerノードと複数のDataServerノードから構成されており、サービス・プログラムは通常のx86サーバー上で展開される。このサーバー・クラスターは強力なコンピューティング能力と大容量のローカル・ストレージを提供し、データセンター内の大量の小サイズ・ファイルへのアクセスに対する高い同時処理能力を低コストで実現する。

●低消費電力

 アリババが保有するサーバーは数十万台に及び、24時間休みなく稼働している。同社の測定では、サーバーと空調の電力コストは数億元(数十億円)にのぼる。ITインフラのコスト・コントロール、クラウド・コンピューティングを活用したサーバーの稼働率向上、サーバーの消費電力削減が、アリババの最も大きな課題となっている。

●迅速なサーバー構築

 巨大なユーザー基盤を有するアリババにとって、ユーザーの要求が予測できない形で刻々と変化することも大きな課題のひとつだ。また、IoT(Internet of things:モノのインターネット)、ビッグデータ、クラウド・コンピューティングの急速な発展により、データセンターにおけるコンピューティング能力に対する要件も高くなっている。アリババはこうした状況下でサービス要件を満たすために、毎年数千台のサーバーを新規に購入しなければならない。さらに、迅速なサービス展開を実現するには、通常1か月はかかる構築期間を1週間以内に短縮することが求められる。

安定したサービスを実現するファーウェイのサーバー

 2006年、アリババは初めてファーウェイからDCブレード・サーバーを購入した。数か月間の運用後、ファーウェイの技術サポートとサーバーの品質に満足と信頼を高めたアリババは、それ以来、さまざまなタイプのファーウェイ製サーバーを約5万台導入している。そのほとんどがRH2285やRH2288といったラック・サーバーで、これらがアリババのeコマース・ビジネスの約3分の1を支えている。

 ファーウェイのサーバーは、以下の面でアリババの要件を満たしている。

●高性能:アリババはいくつかの機種のファーウェイ製の2ソケットの2Uラック・サーバーを導入している。たとえば、Tecal RH2288 V2は大容量のストレージ(50TB)を有し、Romely EPプラットフォームで通常の1.5倍の高さのDIMMを使用して768GBという最大メモリ容量を実現しており、アリババがTFSクラスターを構築する際の最適な選択肢となっている。このサーバー上ではアリババが自主開発したソフトウェアが稼働しており、ユーザーの行動パターン、消費、検索、閲覧習慣などの履歴データを分析し、2013年の双十一におけるデータ通信量の予測と、事前のリソースの配置調整を可能にした。

●省エネ技術:ファーウェイのサーバーは、ベクトルエアフロー管理、両面通気ボード、DEMT(Dynamic Energy Management Technology:動的なエネルギー管理技術)、動的な電力キャッピングなど、世界中で認められている幅広い省エネ技術を使用しており、競合他社の製品と比べて10%以上の省エネ性を実現する。アリババにおけるファーウェイ製サーバーの現在の展開規模から計算すると、アリババは電力コストを数千万元(数億円)削減できていると考えられる。

 たとえば高密度サーバーTecal X6000は、ひとつの2Uラック・サーバーに最大4つの計算ノードを搭載可能なため、消費電力と設置スペースを抑えながら、より高い処理能力を発揮し、運用コストを抑えることができる。

●統合型デリバリー:アリババの迅速な構築に対する要件を満たすために、ファーウェイはOSのプリインストールや統合型パッケージに加え、出荷から輸送、設置までの一括管理を行っている。これによって現場では電源とネットワークを接続するだけでサービスの展開が可能となり、サービス提供までの期間が3~5日に短縮できる。

 アリババの技術サポート部門担当者は、「ファーウェイのサーバーは優れた性能と品質を備え、当社のアプリケーション要件を十分に満たしています。ファーウェイは常に当社のカスタマイズ要求にも応えてくれました。また、当社のシステム基盤構築の重要なパートナーとして、ファーウェイの技術面とサービス面でのサポートは素晴らしいと感じています。ファーウェイの協力なくしては、当社の今日の成功はありえなかったでしょう」と述べている。

 まもなくやってくる今年の「双十一」にも、アリババはファーウェイが支えるシステムによって万全の態勢で臨み、新たな記録を打ち立てることだろう。

※ 1人民元15円換算

ファーウェイは自社研究開発、生産、デリバリーを一体化したサーバー・ベンダーとして十数年の実績を持ち、2013年の出荷台数は世界第4位、中国市場第2位、出荷台数増加率は世界トップとなっている(ガートナー調べ)

ファーウェイは端末製品でもアリババと協業し、そのサービスを支えている。9月に発表した『Ascend Mate7』(P28参照)では、指紋認証センサーと高いセキュリティ機能により、アリババのオンライン決済サービス支付宝がワンタッチで利用可能に。ユーザーはパスワードや口座番号などを入力することなく、簡単・安全にショッピングを楽しむことができる