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テクノロジーでヘルスケアを変革するフィリップス

2018.01.12

ファーウェイのクラウドヘルスケアソリューションで医療の効率化を推進

2016年11月、ファーウェイとフィリップスは中国国内におけるクラウドベースのヘルスケアソリューションの展開に向けたMOUを締結した。フィリップスのヘルスケア分野での専門性と実績、ファーウェイのクラウドやIoTの技術力と知見を活かして製品開発やマーケティングを共同で実施し、医療施設のデジタル化、慢性疾患の管理、在宅医療・介護、医療用ウェアラブル機器、院内クラウド、自治体向け医療クラウドプラットフォームなど、幅広い領域をカバーする包括的な協業を通じてヘルスケア領域のデジタル変革を推進する。ヘルスケアのデジタル化は医療業界、患者、そして社会にどんな恩恵をもたらすのか。フィリップス中国でポピュレーションヘルスマネジメント部門の責任者を務める梁建球(ルドウィッグ・リャン)氏に聞いた。

『WinWin』(ファーウェイ刊)編集部 ゲイリー・メイドメント(Gary Maidment)

Phillips

オランダを本拠地とし、人々の健康の向上にテクノロジーで貢献するヘルステック分野のリーディングカンパニーとして、医療機関向けの統合ソリューション、消費者向けのパーソナルヘルスケア製品などをグローバルに提供する。ファーウェイはヘルステック部門のほか、照明ソリューションを手がけるフィリップスライティングともコネクテッドライティングにおける協業を行っている。

クラウドとAIで医師をサポートし医療の効率と精度を向上

梁氏は、中国の医療には特に3つの領域においてテクノロジーで解決すべき課題があると指摘する。「1つは高齢化です。寿命が延びるにつれ、医療が必要とされる期間も長くなり、リソースが不足します。もう1つは慢性疾患を管理するコストの増大です。これは社会の負担となります。3つめは医療リソースの地域間格差です」

フィリップスとファーウェイのパートナーシップは、先端医療へのアクセスや専門性の高い医師の数が十分でない中国の地方都市のコミュニティに注力し、高品質なヘルスケアをクラウドベースで提供することで、こうした課題の解決を目指している。

クラウドやビッグデータ、AIの活用は、膨大なデータを短時間で、かつ人間の医師よりも高い精度で処理することを可能にする。梁氏は中国の地方都市部ではこのような技術がとりわけ重要性を持つと語る。

「例えばMRIやCTなどの医用画像の読影には高い専門性が求められますが、こうしたスキルを持つ医師は地方には多くはいません。1日に何千件もの読影を1人の医師が行えば、判断を誤るケースも出てきます。クラウドによって遠隔で読影をサポートすれば、医師の負担を大幅に軽減できます。さらに、大量のデータの中からパターンを同定することに長けているAIを導入すれば、画像診断をより正確かつ効率よく行うことができるでしょう。機械学習ソリューションは、ガンなどの進行性の疾患における病状の予測にも利用できます」

モバイルヘルスケアで医療は病院の外へ

モバイルテクノロジーやアプリによって、個人が自らの健康を管理できるようになり、ヘルスケアは受け身で場当たり的なものから、プロアクティブで恒常的なものへと進化してきた。梁氏は「アプリやセンサーを使えば、客観的なデータを得ることができます。憶測や不確かな情報で一喜一憂しなくてすむのです」と語る。

患者は医師に診断を仰ぐ以前に多くの情報を得られるようになるため、医療のあり方も変わってくる。「例えば、ライフログアプリで記録した生活習慣やウェアラブルで計測した健康状態のデータをリアルタイムで医師と共有し、あらかじめ設定した数値をはずれるような不審な兆候が見られたら医師が警告を受信する、といったことができれば、自覚症状が現れる前に対策を打てるようになります」

技術を利用するスキルの格差については、それほど心配はないと梁氏は考えている。「いまや50代、60代の方々でもアプリやSNSを使いこなしています。親や祖父母の健康状態を把握しておきたいと考える若い人たちが、テクノロジーの使い方を教えてあげることもあるでしょう」

健康状態をモニタリングするアプリやセンサーが役立つのは予防だけではない。通知やアラートを発信することで、服薬や治療計画をしっかり守れるようサポートし、治療の効果を高めることにもつながる。

将来的には、センサーが収集したデータをもとに機械学習で正確な予測ができるようになり、より進んだ健康管理が可能になるだろう。スマートフォンが音声認識でユーザーの声のパターンを分析し、ストレスや心臓疾患、認知症の兆候を検出する。車のハンドルがドライバーの手のわずかな震えを感知してパーキンソン病の可能性を指摘する。毎日シャワーを浴びるたびに全身をスキャンしてガンを早期に発見できる――こうした未来はすぐそこまで来ている。

「私たちは、医療が病院の外へ拡大するという新たな領域に踏み出しています。病院を出たあとも、アプリやセンサー、スマートデバイス、クラウドといった形で、医療チームが24時間365日そばにいるようなものなのです」

情報共有と研究を促進 医学の発展にも寄与

クラウドヘルスケアソリューションがもたらすもう1つのメリットは、情報共有や研究を効率化することだ。「経験豊富な医師と若手の医師との間や国内各地の医師どうしの情報共有を促進できるでしょう。また、複数の症例から長期的に得られる莫大な量のデータを共同で記録することで、さまざまな疾患への理解が深まり、効果的な治療を提供できるようになります」

さらに、恒常的にモニタリングしたビッグデータをAIで解析すれば、国や地域単位での人々の総体的・長期的な健康状態の把握や、拡大のリスクが高い疫病の特定ができるようになる。これまでデータの蓄積が難しかった稀有な疾患や、特定のコホート(地域、年齢、生活環境などにおいて共通の要因を持つ人々の集団)についての詳細な研究も進むだろう。

ファーウェイとの協業の今後について、梁氏はこう期待を述べる。「ファーウェイと構築するクラウドプラットフォームは、医療機関、医療従事者、患者、一般消費者にライフサイクル全般にわたるヘルスケアソリューションを提供し、医療資源の有効利用やコストの低減を実現するものです。これに加え、現在はIoTソリューションの共同開発にも取り組んでおり、すでにトライアルを実施して、非常に満足のいく結果が得られています。ヘルスケアとICTをそれぞれリードする2社の力を結集し、より健康な社会に向けてヘルスケアのデジタル化を推進していきたいと考えています」