このサイトはCookieを使用しています。 サイトを閲覧し続けることで、Cookieの使用に同意したものとみなされます。 プライバシーポリシーを読む>

MWC 2017

2017.12.30

活気づく端末、加速する5G、実用化が進むIoT――

モバイルはあらゆる産業の「Next Element(新しい要素)」に

モバイル業界の冬の風物詩、『Mobile World Congress 2017』が今年もスペイン・バルセロナで開催された。テーマは「Next Element(新しい要素)」。5G、IoTなどの長期的なトレンドが具体化し始める中、春を予感させる日差しに包まれた会場は楽観と興奮に満ちていた。

取材・文 末岡洋子(ICTジャーナリスト)

MWCの会場は今年もFira Gran Via。新しく空港と会場を結ぶ地下鉄が開通して利便性がアップしたが、混雑ぶりは相変わらずだ。というのも、来場者数はまたもや過去最高を記録。世界中から10万8,000人がバルセロナに集まった。主催者のGSMAによると、前年から7%の増加だという。

今年は端末、ネットワークともに話題に事欠かず、AIやチャットボットなど新しいキーワードも出てきた。総体的に、予想を上まわる熱気を感じた。

低成長期に入るスマートフォン 新興ベンダーの参入で“ワクワク”を取り戻せるか

熱気の一因は、イベントを飾る花となる端末が盛り上がりを見せたことだろう。例年通り、開催前日にファーウェイ、LG、Moto/レノボ、サムスンといった端末ベンダー数社が発表会を開催した。サムスンは例年、MWCでGalaxyブランドの最新フラッグシップを発表してきたが、今年は次期『Galaxy S8』の発表を遅らせ、タブレット『Galaxy Tab S3』『Galaxy Book』などを発表した。これに対し、ファーウェイはフラッグシップの『HUAWEI P10』『HUAWEI P10 Plus』を、LGも「フルビジョン」としてアスペクト比18:9の『LG G6』を発表した。ファーウェイの『P10』『P10 Plus』はライカとの協業による第2弾としてカメラを前面に押し出しているが、初めて4.5Gネットワークに対応した点も特長だ。

このほかにもソニー、ZTEなどが会期中に最新の端末を発表した。またウイコウ(Wiko)、オッポ(Oppo)、ルエコ(LeEco)、メイズ(Meizu)などの新興ベンダーもブースを構え、引き続き巨大な市場を狙って新しいプレーヤーの参入が続いていることを印象づけた。だが、これらのベンダーに加えて端末分野でスポットが当たったブランドがもうひとつある――ノキアだ。ノキアより独占的にブランド・ライセンスを受けるHMDグローバルは、Androidスマートフォン2機種を発表すると同時に、携帯電話普及期に大ヒットした『Nokia 3310』をリメーク、来場者のノスタルジーをそそった。会期中、ノキア・ブースの隅に設けられた端末コーナーは常時混み合っていた。また、ノキアとともにかつて一時代を築いたモトローラ(現在はレノボ傘下のMoto)は、偶然にもHMDと同じ日の同じ時間に発表会を行っていた。

今年は、現在のスマートフォンの土台となったiPhone発表から10周年。右肩上がりで成長してきたスマートフォン市場だが、2016年は6%増にとどまった。ひと段落ついたところで、MWCでは新たな変化も予期させたが、買い替えサイクルが長引いている消費者がこれらの端末にワクワク感や新しさを感じるかどうかは、まだ未知数だ。

©GSMA
ホール3は今年も大盛況

スマートフォンが再び主役となる一方、ウェアラブルはファーウェイが『HUAWEI WATCH 2』を発表するなどのニュースはあったもの、比較的地味だった

懐かしさで話題を呼んだ『Nokia 3310』

5G商用化を急ぐ通信事業者

一方、ネットワーク分野では5Gの機運の高まりを感じた。GSMAが通信事業者のCEOなどを対象に行った調査によると、5Gの接続件数は2025年には11億件に達すると見込まれている。5Gへの“急ぎ”は3G、4Gの時を上まわっている感があるが、5Gが加速するインダストリー4.0など市場の大きな変革を先駆けようという狙いだろう。

まずは会期直前にベライゾンが「プレ5G」として、エンド・ツー・エンドの5Gパイロットを2017年後半にもスタートするとした。AT&Tも「Network 3.0 Indigo」としてネットワーク刷新を進めており、2017年第2四半期に米国の一部で高速通信が可能なネットワークをローンチすることを明らかにしている。

初日の基調講演では、2年前の基調講演で5Gが実現する自動運転車の世界を語った韓国KTのCEO 黄昌圭(ファン・チャンギュ)氏が「KTは世界初の5Gサービスを商用化する」と宣言した。2017年に5Gトライアルの仕様を固め、2018年に初のトライアルを行うという。2018年の平昌冬季オリンピック・パラリンピック開催に向けて、SKテレコムも5Gに向けた取り組みを進めている。NTTドコモ、エリクソン、クアルコムの3社も、4.5GHz帯と28GHz帯を利用した5G NR(New Radio)の実証実験を行うことを発表した。5Gでは6GHz以下とミリ波の両方の周波数帯を使うと想定されており、5G NRは3GPPで策定が進められている新しい無線方式。実証実験は端末と基地局間の接続などを含むもので、2018年に開始する予定だ。4G同様に米国、韓国、日本といった地域で先行ムードが漂う。

一方で、米国のケーブル企業でヴァージン・メディアなどを傘下に持つリバティ・グローバルのマイク・フライズ(Mike Fries)CEOは「2020年に5Gの商用実装というのはあまりにアグレッシブ」との見解を示した。

2日目の基調講演には米国と欧州連合(EU)から関係者が登壇して、5Gヘの期待を語った。米国連邦通信委員会(FCC)のアジット・パイ(Ajit Pai)委員長は「5Gは無線の世界を完全に変える」と期待を表現し、欧州委員会副委員長兼デジタル単一市場担当委員のアンドルス・アンシプ(Andrus Ansip)氏は、「グローバルな競争の中で欧州が確かな力を維持するためには、業界もスピード感を持って動き、5Gの機能を実装・テストしなければならない」と述べた。

なお、両氏からは世界レベルで起きている政治の変化も感じた。FCCのパイ氏はトランプ大統領の任命により数週間前に就任したばかり。MWCでは、オバマ政権時代に規制強化されたネット中立性について「間違いだった」と述べ、動画などの帯域を多く使用するコンテンツの選別を禁じるネット中立性を批判した。EUは昨年英国の離脱が決定し、今年はオランダで総選挙があったほか、フランスの大統領選も控えている。存在感が揺らぎつつある中、アンシプ氏の「テレコムは欧州のデジタル単一市場の屋台骨だ」という言葉はやや頼りなく響いた。

5Gへ向けた欧州の通信事業者の動きは必ずしも積極的とは言えない。「5G Action Plan」のもとで5Gの取り組みを進めるEUのアンシプ氏は「4Gでは、欧州はプッシュが遅れた。5Gで同じ過ちは繰り返したくない」と述べた。目立った動きとしては、コーポレート・カラーのピンクを基調としたブースで5Gを大きく打ち出していたドイツ・テレコムがある。基調講演に登場した同社のCEO、ティモテウス・ヘットゲス(Timotheus Hottges)氏は、「欧州は遅れていない」と強調、自社が展開する欧州各国で5Gのカバーエリアを100%にしていくことを約束した。

©GSMA
韓国KTのCEO 黄昌圭氏は世界初の5G商用化を宣言

就任まもない米FCCのアジット・パイ委員長

標準化の加速に合意

業界の動きとしては、会期中、エリクソン、ファーウェイ、クアルコムなどのベンダー、それにAT&T、NTTドコモ、KDDIなどの通信事業者が20社以上集まり、5G NRの商用化に向けた動きを加速させる意図を発表した。5G NRは3GPPのRelease 15に含まれるが、現在のスケジュールでは標準に基づいた実装実験ができるのは2020年を待つ必要がある。今回の提案は2019年に大規模なトライアルと実装を可能にしようというもの。また、ファーウェイ、エリクソン、NTTドコモ、チャイナ・モバイル(中国移動)など14社は5Gで世界統一規格の推進に取り組む共同宣言も発表している。「プレ5G」として先駆ける動きに対し、分断を防ごうとするものだ。

機器ベンダー各社の展示フロアでも、5Gは目を引いた。エリクソンは2016年半ばに発表した5G NR対応の無線装置を展示したほか、5Gを利用した遠隔運転の体験コーナーも設けていた。ハンドル、アクセル、ブレーキを設置し、映像を見ながら約50m離れたところにある車を運転するというもので、遅延は3mm秒程度とのことだった。

ノキアも5Gを前面に出し、「5G First」として無線アクセス・ネットワーク、アンテナ、コアなどで構成されるエンド・ツー・エンドの技術ラインナップを強調した。まずは固定から利用することを想定しており、「プレ5G」で早まる事業者のニーズに応える。

会期中に開催されたグローバル5Gテスト・サミットでは、通信事業者とベンダー14社が5G統一規格の推進に向けた共同宣言を発表

ファーウェイは「オール・クラウド」をアピール

ファーウェイは2015年から提唱するモバイル・ブロードバンドの「ROADS(Real- time:リアルタイム、On-demand:オンデマンド、All-online:すべてがオンライン、DIY、Social:ソーシャル)」ビジョンのもと、「オール・クラウド」をアピールした。

2014年に発表したEPC(コア)をクラウド化する『CloudEdge』を皮切りに、2016年春には無線アクセス・ネットワークをクラウド化する『CloudRAN』を、同年末にはクラウド化により周波数や電力などのリソースの柔軟な割り当てを可能にする『CloudAIR』を発表した。同社はこれを「ERA」と総称し、通信事業者のクラウド化を支援する。「5Gに移行するにあたって必要なアーキテクチャをいまのうちに整えておき、標準化が固まったらすぐに導入できるようにしておく」というのが狙いだ。クラウド化は着々と進んでおり、CloudEdgeは10以上の商用ネットワークで導入されているほか、CloudRANも2017年後半に商用化の見通しとのことだ。

クラウドが実現する5Gのネットワーク・スライシングの展示も、各ベンダーが力を入れていた分野だ。ネットワーク・スライシングとは、サービス固有の要件を満たすネットワークを仮想的に作成する技術。5Gはさまざまな用途が想定されており、ネットワーク・スライシングにより、ひとつのネットワークですべてに対応するのではなく、用途に合わせてネットワークを分割して用意することができる。昨年のMWCで大きなスポットが当たった。

エリクソンは既存製品にネットワーク・スライスを拡張させたライフサイクル管理、別の通信事業者のネットワークに専用のスライスを作ることでシームレスなサービス体験を顧客に提供するフェデレーテッド(連合型)・スライシングなどを展示。ファーウェイは、業界初というネットワーク・スライシング・ルーターを発表した。50GEの基地局接続と100GEとの互換性を持ち、独自技術ベースでポート・チャネルの物理的な分離を実現。制御、プロトコル、転送の各次元でリソースをスライスして論理ネットワークを作成し、サービスごとにリソースのスケジューリングなどの管理が可能という。このほか、ドイツ・テレコムと実施したオール・クラウドによるエンド・ツー・エンドの5Gネットワーク・スライシングのデモも紹介していた。

実用化に入りつつあるNB-IoT

IoTではNB-IoTが主役。今年は技術の説明よりもユースケースの紹介に展示が移っており、ファーウェイは中国など2か国でテストに入っているという水道メーター・メーカー三川(サンチュアン)とのスマート水道メーターをはじめ、スマート・パーキングなどの事例を紹介していた。エリクソンもイタリア・トスカーナ地方のワイナリーなどで進めるIoTを活用した農業、産業ロボットなどの事例を見せていた。

昨年同様、ホール8にはLPWA(Low Power Wide Area)技術のSigfox、LoRaアライアンスがブースを構えた。Sigfoxはテレフォニカと提携し、同社のプラットフォームにSigfoxを統合することを発表した。なお、このホール8ではドローン・メーカーDJIも大きなブースを持ち、最新の産業向けドローンを展示していた。

ボーダフォンはサムソナイトとともにNB-IoTによるスマート手荷物追跡システムを披露

デバイスとしての自動車があちこちに V2Xのデモも

このところのトレンドだが、自動車メーカーは今年も存在感を増していた。MWC会場では、基調講演会場の近くにプジョーがブースを構え、コンセプトカー『Peugeot INSTINCT』を披露、講演を行き来する来場者が足を止めて見入っていた。INSTINCTは自動運転カーで、サムスンの『ARTIK Cloud』 IoTプラットフォームを利用してモバイル端末と連携してデータを集め、ユーザーの好みの空間を実現するという。プジョーのほか、ダイムラー、BMW、フォード、地元スペインのセアトなどの自動車メーカーがブースを構えたほか、ドイツ・テレコム、SAP、アクセンチュアなどの通信事業者やベンダー、サービス・プロバイダーもブースに車を設置するところが多かった。

初日午後の基調講演には、EV専門レーシングのフォーミュラE(Formula E)、それにAIを利用した自動運転カーレースのロボレース(Roborace)からそれぞれのトップが登場、『Robocar』をステージで初披露した。ドライバーが座る座席がない車は一見不思議な感じもするが、代わりに頭脳となるエヌビディア(Nvidia)の自動運転車向け開発プラットフォーム、それにAIカメラ、センサー、レーダーなどを搭載する。毎秒24兆のAI演算処理ができるという。モーターショーではなくMWCをお披露目の場に選んだことは興味深い。

自動車は、先述のエリクソンのように5Gなど最新技術のデモにも使われていた。ファーウェイはNB-IoTで密に協業関係にあるボーダフォンと、バルセロナ郊外のカタロニア・サーキットでコネクテッド・カーのデモを行った。車車間通信の標準技術C-V2X(Vehicle to Everything)の信頼性を示すもので、欧州では初という。周波数帯は5.9GHz帯を利用し、前の車から映像フィードを受け取り、他の車両の動きなどの見通しを改善する、歩行者の通行を警告する、など4つのシナリオを見せた。ファーウェイは、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とミュンヘンでV2Xを使ったトライアルを行ったことも発表している。

ファーウェイとともにC-V2Xをプッシュしてきたクアルコムもブースで説明を行っていた。車車間通信を含むDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)ではすでにIEEEが802.11pとして規格化しているが、クアルコムの説明員は、802.11pと比較すると2倍の範囲をカバーし信頼性も高いと優位性を説明しながら、最終的には補完の関係になるとの見通しを示した。

このほかにも会期中、ホンダが車両情報などを提供するコネクテッド・カー・プラットフォーム『MyHonda Connected Car』に、シスコが買収したIoTプラットフォームのJasperを採用することを発表した。

無人の自動運転カー『Robocar』

ファーウェイとボーダフォンは会場でのVRによる運転体験(左)のほか、カタロニア・サーキットでも実車両を使ったC-V2Xのデモを行った(右)

コンテンツ・イズ・キング マネタイズをどうするか

今年のMWCではコンテンツ側にも大きなフォーカスが当たった。初日夕方の基調講演にはNetflixのCEO、リード・ヘイスティングス(Reed Hastings)氏が登場し、インターネットTV、そしてモバイルTVに向けての課題や取り組みを語った。Netflixは北米でDVDレンタルとしてスタート、2007年にはストリーミング・サービスに拡大し、いまや北米のインターネット・トラフィックの4割近くを占めるに至っている(2位のYouTubeは18%)。ここ1〜2年は国際展開を急ピッチで進めており、中国を除く約130か国で約1億人の加入者を誇る世界最大のストリーミング・サービスとなったが、そのサービスは固定および無線インターネットに依存している。「世界中の加入者が同じ品質レベルのサービス体験を」というヘイスティングス氏にとって、バッファリングは課題のひとつだ。改善に向けてネットワーク・サーバーやコーデックなどさまざまなレベルでの投資をしていると明かし、「モバイル、ノートPC、TVで同じように遅延のない瞬間的な体験を実現する。バッファリングはいつか過去のものになる」と約束した。

一方で、モバイルでの動画視聴で障害となりかねないのが、料金プランとデータ通信容量だ。これについてヘイスティングス氏は、一部の事業者が提供する無制限データプランを「速度は遅いがデータは無制限。ネットワークにとっては効率がよく、加入者は好きなだけ動画を閲覧できる」と評価した。「0.5Mbpsの速度でもスマートフォン上で素晴らしい映像を楽しむことができる。将来的には200Kbpsでも」と同氏は語った。

NetflixやYouTubeなどの動画コンテンツの利用が増えており、事業者は投資を余儀なくされている。それを慮るかのように、ヘイスティングス氏は「われわれは効率性を改善させている。われわれだけでなく、ユーザーが利用する際にデータが制限に達する心配をしなくて済むように(業界の)プロバイダーは革新を起こす必要がある」と呼びかけた。

2日目の夕方の基調講演には、「コンテンツのゴールド・ラッシュ」をテーマに、コンテンツ側からヴィヴェンディ(Vivendi)、ターナー(Turner)、ナイアンティック(Niantic)、それに通信技術からファーウェイが登場し、それぞれの立場から動画を中心にコンテンツについて語った。

『ポケモンGO』が世界で大ヒットしたナイアンティックは、Netflixと並んで今年の顔と言ってもいいだろう。CEOのジョン・ハンケ(John Hanke)氏によると、2016年7月にローンチしたポケモンGOは、6億5,000万台の端末にインストールされているという。

外に出てアクティブに、ソーシャルに、という開発理念の通り、ポケモンGOはモバイル時代ならではのゲームだ。現実世界にキャラクターを重ねるカメラとARと、モバイル技術を活用して大ヒットした。「われわれはクリエイティブなコンシューマー体験を作っており、ハードウェアとネットワークを運用する企業と協業することで、すばらしい体験をユーザーに届けることができる」と会場を埋め尽くしたモバイル関係者に敬意を表した。

ファーウェイの輪番CEO、徐直軍(エリック・シュー)氏は、ネットワーク・ソリューション・プロバイダーとして動画時代の通信事業者の支援について語った。徐氏によると、動画は1兆ドル(約110兆円)の新たな売上を通信事業者にもたらす可能性があるという。これは音声(8,000億ドル、約88兆円)、データ(1.2兆ドル、約132兆円)に追加されるものだ。2020年にはデータ・トラフィックの85%が動画サービスになるという予想もある。だが、通信事業者は動画から売上を得るという点でまだまだ受動的だという。「付加価値サービスとしてではなく、ベーシックなサービスとして動画を扱い、音声やデータと同じように開発すべきだ」と徐氏。

消費者は高品質な視聴体験のためには対価を払っていいと思っているが、ネットワーク側では動画体験を測定する標準がない。そこでファーウェイはオックスフォード大学、北京大学と共同で動画体験の評価システム『U-vMOS』を開発したと徐氏。これを利用して事業者は最高の動画体験を提供できるという。「ファーウェイは通信事業者が動画で成功するよう支援する」と述べた。

©GSMA
ナイアンテックのジョン・ハンケ氏。会期中は会場にもポケモンが出現した

ファーウェイの徐直軍氏は通信事業者にとっての動画コンテンツの価値を語った

通信業界はAIをどう活用するか

動画に並ぶ今年のテーマがAI(人工知能)だろう。ビッグデータ・ブームにより大量のデータが生成、収集されており、これを活用してコンピューターにパターンを学習させることで適切な情報を提供したり、意思決定を自動化したりできると言われている。

AIを利用したサービスとしては、テレフォニカのCEO、ホセ・マリア・アルバレス・パジェテ(Jose Maria Alvarez-Pallete)氏が基調講演の場でコグニティブ・プラットフォーム『AURA』を発表した。既存の物理ネットワーク、ITシステム、製品やサービスの上に乗る層だ。これまで構築した3つの層が「体」「神経系」であるのに対し、『AURA』は「脳」となる。話しかけると情報を提供するもので、顧客の利便性やサービス改善に役立てる。これから1年かけてロールアウトするという。同氏は「われわれはデジタルで生まれた業界ではない。デジタル化が必要だ」と述べ、プラットフォーム・カンパニーへの転身を進めていくとした。

SKテレコムも、2016年に開始したAIサービス『NUGU』をセッションで紹介。こちらも『Amazon Alexa』のように名前(アリア、クリスタル、レベッカ、ティンカーベルの4つが設定されている)を呼んで話しかけることでスマート・ホーム・サービスなどを操作できる。

3日目夕方の基調講演には、MWCデビューを飾ったLINE代表取締役社長の出澤剛氏が、アシスタント・サービス『Clova』戦略を発表した。Alexaに対抗するものだが、ローカルの理解を強みに打って出る格好だ。

端末側では、1月にラスベガスで開催されたCESで『Mate 9』がAlexaに対応することを明らかにしたファーウェイに続き、会期中MotoもAlexa対応を発表した。今後もトレンドとなりそうだ。

一方、ネットワーク側では、初日の基調講演で5Gについて語ったKTの黄氏がネットワークの「インテリジェンス」がカギを握ると強調、5Gベースのインテリジェントなネットワークはインダストリー4.0で重要な役割を果たすと続けたものの、ネットワーク・インフラでのAI活用はこれからという印象を受けた。

より壮大なテーマである「シンギュラリティ」(技術的特異点、人間の脳をコンピューターが上まわる状態)について話したのは、2011年以来、6年ぶりにMWCのステージを踏んだソフトバンクの代表取締役兼CEOの孫正義氏。ARMを手に入れた孫氏は、シェア80%というIoTチップの出荷台数が30年内に1兆に達すると見通すとともに、世界中のモノがつながりインテリジェンスを持つようになれば人類にとって脅威になりかねないという懸念も取り上げた。これに対し、「AIは人類を脅かすリスクを解決することにも利用できる」と孫氏は述べる。

このように、今年も盛りだくさんとなったMWC。モバイル・ネットワークを利用する対象が人からモノに拡大する中、業界は様変わりしつつある。「Next Element(新しい要素)」というテーマにふさわしく、モバイル・ネットワークがあらゆる産業の基本的な要素になり、その巨大な市場を狙ってエンタープライズITベンダーのブースも展示を拡大している。業界の変革とともに、イベントそのものも転換期を迎えていると感じた。

※1米ドル=110円換算

PROFILE
末岡 洋子(すえおか ようこ)


ICTを専門とするフリーランス・ライター/ジャーナリスト。ウェブ・メディアの記者を経てフリーとなり、現在は『ITmedia』『ASCII.jp』『マイナビニュース』などで執筆。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。