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ファーウェイの分散型パワーコンディショナー

2017.08.25

ファーウェイは2010年より、大規模太陽光発電システム向けのパワーコンディショナー(PCS)を世界市場で提供しています。ソーラーパネルで発生した直流電力を交流電力に変換するPCSは、システム全体の発電効率を左右する重要な役割を果たす装置です。ファーウェイは通信ネットワーク向けの電力供給技術を応用した製品を開発し、2015年には電力容量ベースで10.5GWを出荷、市場シェアを拡大しています。日本では2014年に市場に参入し、昨年から出荷台数を大きく伸ばしています。今号の『HuaWave』では、大規模太陽光発電システムのEPC(設計・調達・施工)サービスを提供するメガソーラー事業においてファーウェイのPCS『SUN2000-28KTL』をご採用いただいている、大和ハウス工業株式会社 東京本店環境エネルギー事業部 事業部長 栄彰一氏に、同製品への評価とファーウェイとのパートナーシップについてお話をうかがいました。

大和ハウス工業株式会社 環境エネルギー事業部

建築業のノウハウを活用した事業多角化のため2009年に設立、「省エネ」「創エネ」「蓄エネ」「建物改修」の4つの環境エネルギー・ソリューションを提案する。このうち「創エネ」ソリューションとしては、工場や倉庫、店舗などの産業向け太陽光発電システムやメガソーラーの建設請負・維持管理を手がけ、子会社を含めたグループ全体の合計出力は年間700MW(2015年)に達している。

スピーディーな施工と保守を実現 発電量も5~10%向上

編集部:太陽光発電システムのEPCにはさまざまな業種から多くのプレーヤーが参入していますが、御社はどのように差別化を目指していらっしゃいますか。

栄氏:ひとつの要素は「スピード」です。施工においても管理においても、時間がかかればそれだけ発電量のロスにつながります。建設業者としての強みを生かしてスピード感を持って建設できること、グループ会社との連携によりO&M(運用管理)まで一貫して提供することで、独自の価値をお客様にご提供したいと考えています。分散型PCSの導入も、そのための施策です。

編集部:分散型PCSにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

栄氏:これまでの大型PCSは自動販売機ほどのサイズで重さも1トン近くあり、設置場所の確保が難しく、設置作業も重機を使った大がかりなものでした。また、不具合が生じた際にはメーカー担当者に現場に来てもらい、時間をかけて原因を突き止め、修理しなければなりません。復旧までの間、そのPCSに接続されているすべてのパネルが影響を受けるわけですが、大型機の場合はその数も多くなります。

一方、ファーウェイの分散型PCSは大型機のわずか50分の1の大きさ、重量も50kg程度で、容易に持ち運ぶことができますから、重機も基礎工事も要らず、設置はきわめて簡単です。接続されているパネル数が少ないので故障の影響範囲も狭くてすみますし、故障機だけを新しいものと交換すればすぐに復旧できます。実際、大型機なら1週間はかかる復旧期間が2日まで短縮されています。施工と管理の面でこれほどのスピードを実現できる製品はほかにありません。

編集部:お客様もそうした利点を実感していらっしゃるのでしょうか。

栄氏:はい、高く評価していただいています。スピードと故障時のリスクの低さに加え、発電量の向上も実現できるのはお客様にとって大きな魅力です。分散構造とマルチMPPT(下図参照)によって発電効率が高くなるうえ、小型で設置場所をとらない分パネルの設置面積も増やせるので、発電量は5~10%アップしています。

太陽光発電では気象状況により発生する電流と電圧が常に変化するため、MPPT(Maximum Power Point Tracking:最大動作点追尾機能)という機能により、発電量が最大となる電流・電圧の組み合わせを決定する。ファーウェイの分散型PCSは複数のMPPTを搭載することでより効率のよい発電を実現。モジュールの一部に影がかかってもその影響が他のモジュールに及ばず、故障時にも精確で迅速な特定が可能となっている

広東省東莞市、浙江省杭州市にあるファーウェイの工場には、工場用発電と製品デモの用途を兼ねた太陽光発電システムが設置されており、年間2,000kW以上を発電している

設備視察とデモでファーウェイの技術力を確信

編集部:どのような経緯でファーウェイのPCSをご検討いただいたのでしょうか。

栄氏:ファーウェイについてはまったく知識がなかったのですが、国内の展示会で初めて製品を目にして、その性能に感心しました。より詳しい話を聞くために、中国の本社や工場に何度か足を運び、本社の設備でデモを拝見しました。大規模な工場や実験設備に驚くとともに、ファーウェイが中核事業の通信分野でも分散型基地局で業界に革新をもたらしたこと、また世界中のさまざまな環境条件下での使用に耐えうる製品を提供してきたことを知り、耐久性と可用性の高い分散型PCSの技術もその経験と実績に裏打ちされたものなのだと納得できました。まずは小規模な導入から始め、現在は3,000台以上のPCSを全国各地のメガソーラーに設置しています。

編集部:日本のPCS市場に新規参入してまもないファーウェイの製品を採用してくださった決め手は何だったのでしょうか。

栄氏:実は当初は、社内の反応は芳しくありませんでした。業界が違うのでこれほど大きなグローバル企業だということも知られておらず、契約にあたって保険をかけることまで検討していたんです(笑)。しかし、自分の目でデモを見て、さらに当社の技術部の担当者にも現地で検証させ、ファーウェイの技術力には確信を持っていたので、必ず理解が得られるはずだと考えていました。この革新的な製品を使えば他社がどこもやっていないことができる、独自性を追求する当社の大きな強みになると強調し、説得を続けました。結果的に、導入のメリットが成果として表れてきていますので、新しい試みに挑戦した甲斐があったと思います。

10年先を見据えたパートナーシップでともに成長を目指す

編集部:御社とはファーウェイのPCS事業が日本で始まったばかりのころからのお付き合いとなりますが、営業やサポート面での対応に課題はありましたか。

栄氏:最初のうちは日本語の資料がないといった課題もあり、こちらから厳しい要求もしましたが、それを真摯に受け止めて迅速に対応してくれました。いまでは投げたボールをすぐに打ち返すスムーズなコミュニケーションができていると思います。

編集部:ファーウェイに対する今後のご要望やご期待をお聞かせください。

栄氏:当社が目指す独自性とスピードを実現できるベストなパートナーだと思っています。これだけの技術力があれば、まだまだこの分野で伸びていけるでしょう。システムのスマート監視ソリューションは業界でもまだこれといった性能のものが出てきていないので、ファーウェイも日本市場のニーズを取り入れながら改良を重ね、ほかにない製品を目指していってほしいですね。メガソーラー事業は当社にとっても新しい領域ですから、5年後、10年後の将来を見据えたパートナーシップを通じてともに成長していけたらと思っています。