CEOからのごあいさつ:力出一孔、利出一孔
ファーウェイ・テクノロジーズ CEO 任 正非(Ren Zhengfei)
今回のHuaWaveは、2013年4月に発表したファーウェイ2012年度年次報告書より、当社CEO(最高経営責任者)からステークホルダーに宛てたメッセージの日本語訳をもって巻頭のごあいさつとさせていただきます。なお、年次報告書の日本語版(抄訳)はこちらに掲載しておりますので、あわせてご覧ください。
ファーウェイの輪番CEOの一人、郭平(グォ・ピン)は、2013年の年頭にあたり「戦略重視、経営のスリム化、効率性向上」と題した所感を発表しました。この所感は新年に向けて当社が掲げる目標を端的に表しています。すなわち、自社の強みに焦点を当て、組織が持つ力を最大限に生かすと同時に、従業員の意欲と創造力を引き出しながら、より大きな成果を生み出していくということです。
水や空気は、一般的にこの世で最も穏やかなものと考えられます。そのため、清らかな水や軽やかな風はしばしば賛美の対象となります。しかし、この一見穏やかな空気が宇宙にロケットを飛ばすこともまた事実です。ロケット燃料の燃焼により排出される高速の排気は、ラバール・ノズルと呼ばれる装置の小さな穴から突風を生み出し、そこから噴出した空気が人類を宇宙へ送り出します。また、穏やかな水も、高度に加圧して小さな穴を通過させることで、鋼鉄の板さえ切断することができます。これらはいわば「力出一孔」、つまり、ひとつの小さな穴から生まれる力です。
ファーウェイは26年前に一からスタートした民間企業です。当社ではかつて個性よりも共通性を重視するような評価制度を実施していた時期がありましたが、この制度では価値の創造に貢献する社員を適切に評価することができず、結果として多くの有能な人材を失うことになりました。それでも、26年間にわたり従業員一丸となってひとつの目標に向かって邁進し、困難にぶつかっても決して諦めなかったことで、世界で15万人が働くグローバル企業へと成長を遂げることができました。ひとつの穴から噴出する水に似て、たとえ一人ひとりは微力であっても、それを結集することで驚くほどの結果を生み出すことができます。これが「力出一孔」です。当社は戦略の焦点を絞り、特定の分野においてグローバルな競争力を高めています。ファーウェイの競争力の高さは、最初は小さな企業であっても、努力と情熱しだいで名だたるグローバル・リーダーと肩を並べるようになることが可能だという証です。
またファーウェイは、「利出一孔」、つまり、利益をひとつの源から得るという原則をモットーとしています。当社の経営陣と幹部レベルの従業員の全収入はファーウェイから支給される給料、報奨、賞与などに限定され、それ以外の収入は認めないことを、経営管理チームが宣誓しています。当社では役職にかかわらずすべての従業員が、関係取引により発生する会社の収益から個人の利益を得ることができない組織やシステムを確立しています。過去20年以上にわたり、当社は事業収入というただひとつの源泉から利益を得てきました。これにより、15万人の従業員が一致団結し、会社に貢献できるような社風が培われたのです。当社の経営にはいまだ改善すべき点が多々あり、絶え間なく努力を続けていますが、「利出一孔」という原則を固持していけば、当社の人事方針はさらに公正なものとなり、結果として従業員の仕事に対する熱意はますます高まっていくでしょう。それは、ファーウェイのさらなる成長の源泉となります。
「力出一孔、利出一孔」という原則が今後も継続されていくならば、ファーウェイが次の敗北者になることはないでしょう。しかしこの原則から外れてしまうとすれば、おそらく敗北者の列に加わることとなります。歴史をひもとけば、機を逸して衰退しはじめた大企業が、組織再編によって状況を好転できた例は数少ないと言えます。当然ながら誰も衰退は望みません。衰退を回避するためには、自らを律し、規則を遵守し、団結と献身を貫く必要があります。
当社はこれからも、目標を見失うことなく高い志を持ち、果敢に前進を続けてまいります。