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ネットワーク社会の未来を築く超広帯域ネットワーク

法人ビジネス事業本部ソリューション&マーケティング部シニア・プロダクト・マネージャー 田畑 治

ソリューション・セールス本部ネットワークソリューションセールス部チーフネットワークアーキテクト 滝広 眞利

家庭においてビデオ・サービスをオンデマンドで楽しむ環境が一般的になったのは、ほんの数年前のことです。現在では、スマートフォンの普及によって、街中や移動中であっても家庭と同様のサービスを楽しむことが現実になりつつあります。このようなネットワーク社会では、膨大な量のデータが、世界中に張りめぐらされたネットワークで伝送されています。インターネットを流れるデータの量は過去10年間で10倍に増大し、このペースはとどまることを知りません。

生活の一部として定着し、ますます便利になるネットワーク・サービスですが、皆さんの通信費はそれによって高価になったでしょうか。インターネット・サービスなどは、むしろ安価になったと感じられるのではないでしょうか。この背景には、ネットワークの大容量化、高信頼化、そして低コスト化を推進する通信事業者の絶え間ない努力があります。ファーウェイはこれまでも世界中の通信事業者とともにネットワーク社会の構築に貢献してきました。本稿では、通信事業者をサポートし、これからの10年間に要求されるネットワークの大容量化、高信頼化、高機能化に応えるファーウェイのソリューションをご紹介します。

投資効率を最適化するためのファーウェイのソリューション

2000年代のインターネットはWWW(World Wide Web)の時代でした。グラフィカルなブラウザーとマウスのクリックによる簡単な操作は、インターネット・ユーザーを爆発的に増やすことに貢献しました。そして、Facebookに代表されるSNSやブログの流行に見られるように、ネットワーク・サービスが人々の生活に溶け込むことになりました。さらに、2000年代中盤以降は、YouTubeに代表されるビデオ・コンテンツ・サービスによって、インターネット上のトラフィックが以前にもまして増加しています。また、企業ユーザーの観点から見ると、クラウド・サービスの利用が増加したことで生じる多くの情報のやりとりのために、ネットワークの処理容量の拡大が必要とされています。

一方、ユーザー端末の革新として記憶に新しいのは、iPhoneに代表されるスマートフォンの登場です。スマートフォンにより、これまでは家庭内のパソコンに限られていた快適なネットワーク・サービスを、だれもがどこにでも持ち歩けるようになりました。日本のスマートフォン・ユーザーは2012年には3 , 0 0 0 万人を超えたと推定されており、iPhoneの登場からわずか4年で家庭内のブロードバンド・ユーザーに匹敵する数になりました。

これらの結果として、過去10年間のネットワークの変遷を振り返ると、トラフィック量は約10倍に増大し、ネットワークもそのトラフィックを処理するために同等の拡大を要求されてきました。

これからの10年間をサービスの視点から見ると、エンターテイメントとしてのIPTV(Internet Protocol television)やOTT(Over The Top)の普及によるトラフィックの増大がこれまで通りに見込まれるでしょう。さらに、遠隔医療や遠隔教育の本格化、政府・自治体が提供する電子申請サービスや電子調達サービスの普及に伴い、社会活動を支えるインフラとしてのネットワークの重要性がさらに高まるでしょう。また、ビジネス・シーンではクラウド・サービスがより発展することによるトラフィックの増大や低遅延化の要求が高まることが想定されます。

ユーザー端末の観点では、タブレットの普及によって、1人1台以上のブロードバンド端末の所有が一般化するでしょう。さらに、自動車間通信や各種のセンサーとの通信などのM2M(Machine to Machine)通信の増加が予想されます。そして、これらの端末やデバイスは、無線技術の発展によって、家庭内のパソコンと同様に数百Mbpsの通信速度を持つようになるでしょう。この無線端末の増加と無線技術の進歩に伴うモバイル・トラフィックの増加は、今後の10年間で500倍に達するとも言われており、これまで以上の変革を私たちの生活にもたらすことが期待されます。そして、このモバイル・トラフィックの増加が要因となり、伝送ネットワークのトラフィックも25倍以上に増加することが予測されるのです。

サービスとユーザーをつなぐ伝送ネットワークは、全国を面的にカバーする大規模なネットワークです。このネットワークのコア部分は、インターネット・サービス、企業向け専用線サービス、モバイル・サービスなどで共用されています。このため、いったん構築した伝送ネットワークは長期間にわたり運用し続ける必要があり、ソリューションの選択にはさまざまな観点での検討が必要になります。では、この「検討の観点」にはどのようなものがあるのでしょうか?

伝送ネットワークを運用する上で、通信機器の運用期間は最低でも5年が条件となり、ネットワークのコア部分に相当する機器では10年を超えることもあります。したがって通信事業者は、10年後のニーズを想定したネットワークの大容量化と機能拡張性を考慮し、長期的な投資効率を最大化するソリューションを選択する必要があります。この際には、広帯域伝送ネットワークに求められる高い信頼性と、現在提供しているサービスを長期的に提供するというサービス継続性の考慮も不可欠です。本稿では、これらの課題に対応するファーウェイのソリューションをご紹介します。

ネットワークの大容量化

ブロードバンド・サービスを支えるアクセス・ネットワークとして光ファイバーが全国に敷設され、日本国内のFTTH(Fiber To The Home)サービス加入者数は約2,300万に達しています。これは全世帯の約半数近い数であり、光ファイバーを用いたブロードバンド・サービスは、家庭と社会をつなぐ手段として一般化したと言えます。家庭に普及した光ファイバーは、エンターテイメント、医療、ビジネス、自治体などのサービスを家庭に届けることに加え、高速化の進むモバイル・サービスを支えるネットワーク・インフラとしての利用が広がりつつあります。

一方、光ファイバーによる高速・大容量のアクセス・ネットワークを活用するためには、その背後にあるメトロ・ネットワーク、コア・ネットワークの高速・大容量化も必要です。また、クラウド・サービスの発展に不可欠な強力なストレージ能力やデータ・スイッチング能力を実現するために、インターネット・データセンターのコア・スイッチには100GEポートが必須になりつつあります。このような背景から、100Gbpsクラスのデータ・トラフィックを伝送するトランスポート・システムをメトロ・ネットワーク、コア・ネットワークに導入し、現状の広帯域ネットワークを凌駕する超広帯域伝送ネットワークを構築することが、通信事業者の新たな課題となっています。

こうした課題に応えるために、ファーウェイはアクセス・ネットワーク・ソリューションとして、『MA5600』10G-GPONシステムの提供を開始しました。このシステムは、加入者あたりの帯域を、現在の一般的なサービスの10倍となる10Gbpsに拡大します。また、通信局舎からの1本の光ファイバーに、現在の4倍にあたる128加入者を分岐収容することができます。このように、『MA5600』10G-GPONシステムは、より少ない光ファイバーでより高速なサービスを提供し、投資効率の高いアクセス・ネットワークを実現します(図2参照)。

メトロ・ネットワークとコア・ネットワークにおいては、ファーウェイは『OSN8800』コヒーレント100G-DWDMソリューションを展開しています。このソリューションでは、1波長の光信号で100Gbpsのデータを伝送し、これを最大80波長多重化することにより、1本の光ファイバーで8Tbpsのデータを伝送します。これは、電話サービスでは1億以上の通話を同時に伝送する膨大なデータ量に相当します。この圧倒的な帯域拡張性によって、将来にわたり増加し続けるサービス・ニーズに対し、より少ない光ファイバー、より少ない波長で対応することを可能にします。また、10G/40Gネットワークから100Gネットワークへのアップグレードをサポートすることにより、CAPEX(CapitalExpenditure:設備投資費)を抑制し、長期的な投資効率の向上に貢献します(図2参照)。

現在、ファーウェイの100G-DWDMソリューションは、ヨーロッパ、中東、アジア太平洋地域の主要通信事業者に採用されています。また、ファーウェイは3,000kmの陸上伝送、5,500kmの海底伝送をはじめ、100Gファイバー伝送における数々の記録を塗り替えています。

ネットワーク多重障害に対応する高信頼性

通信事業者は、ネットワークの一部に障害が発生した場合でもサービスを継続するために、ルート・プロテクション機能を使用しています。これは、各サービスの現用伝送ルートに対して予備ルートを指定し、現用伝送ルートへの障害発生時にサービスを予備ルートに切り替える機能であり、これにより途切れることのない専用線サービスや、いつでも使える電話サービスが提供されています。

しかしながら、前述のように、わずか1本の光ファイバーによって1億の電話回線に相当する伝送データが影響を受ける時代においては、ネットワーク障害発生時のサービスへの影響は以前にもまして甚大なものとなります。したがって、現用ルートのみならず予備ルートにも同時に障害が発生するような状況においても、サービス・トラフィックを保護することが要求されています。たとえば、大規模災害の発生時には、広域で同時に複数の障害が発生し、現用ルートと予備ルートに同時に障害が発生する可能性があると考えられます。このような状況下でもサービスを継続できるディザスター・リカバリー機能を有するネットワークを構築し、ネットワーク社会における企業のBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)や人々の社会生活を支えることは、通信事業者の重要な責務です。

ITU-T(国際通信連合の電気通信標準化部門)は、複数障害に対してサービス・トラフィックを保護することを目的として、ASON/GMPLS(Automatically SwitchedOptical Network/Generalized MPLS)の国際標準化作業を行っています。ファーウェイは、DWDM製品『OSN8800』にいち早くASON/GMPLS機能を搭載し、ディザスター・リカバリー機能を実現しています。

サービスの伝送ルートの切替方法は以下の通りです。まず、サービスを伝送するための現用伝送ルートをネットワークに設定します。そして同時にそのサービスに対して、ノード、回線が異なる予備ルート(予備ルート1)を設定します。その後、現用伝送ルートに障害が発生すると、ネットワークは即座にその障害を検出し、サービスを予備ルートに切り替えます。そしてこの際、ネットワークは第二の予備ルート(予備ルート2)を設定します。これにより予備ルート1にさらに障害が発生しても、予備ルート2に切り替えることによって、途切れることなくサービスを提供します(図3参照)。

サービス多様化に対応する機能拡張性

多様な通信サービスを提供するために、通信事業者はさまざまな機器を運用していますが、新サービスのために機器を段階的に追加することによって、機器コストの増加と運用管理の複雑化を招いています。この課題に対して、ファーウェイは「Single」コンセプトに基づく通信機器を提供しています。これは、1つの機器で複数の機能を提供することで、機器調達コストと機器運用管理コストの低減を図るというものです。さらに、ファーウェイは「SoftCOM」コンセプトに基づいたソリューションの研究・開発を行っています。「SoftCOM」ソリューションでは、SDN(Software Defined Network)と同様のコンセプトを通信事業者(TeleCOM)のサービスに適用することで、新サービスの迅速な導入とネットワーク運用管理の容易化を図ります。以下では「Single」と「SoftCOM」のコンセプトを例を用いてご紹介します。

Single

通信事業者がインターネット・サービスを提供する際には、IPパケットを伝送するルーターと加入者認証を行うBRAS(BroadbandRemote Access Server)が必要です。また、加入者を不正アクセスから守るサービスにはファイアウォールが求められます。さらに、IPv6の導入時には、IPv4ネットワークとIPv6ネットワーク間でNAT(Network Address Translation:ネットワーク・アドレス変換)機能やトンネル機能が必要です。これらの機能をそれぞれ専用の機器で実現した場合、機器の調達コストだけでなく、機器ごとに異なる管理インタフェースを用いることによる運用管理の負担も大きくなります(図4・Step 1左)。

ファーウェイの『NE40E』ルーターは、IP機器としての共通機能と、柔軟な機能拡張性を持つプラットフォームハードウェア/ソフトウェアにより、「Single」コンセプトを実現します。インタフェース・スロットにBRAS、ファイアウォール、NAT/トンネル対応などのサービスカードを実装することにより、単一の機器で複数の機能を提供するとともに、統一された管理インタフェースを提供します。

SoftCOM

現在のネットワーク機器は、データ転送機能を提供するハードウェアに、機器制御機能とサービス機能を提供するソフトウェアが結びつけられています(図4・Step 2左上)。したがって、ネットワークの構成変更や新サービス導入の際には、個々の機器を個別に制御する必要があり、ネットワークの柔軟な運用の妨げになっていました。そこで、「SoftCOM」では、機器制御機能とサービス機能を個々の機器のハードウェアから分離し、サーバーまたは特定の機器に集中配置します。これによって、通信事業者は個々の機器の運用管理から開放されると同時に、迅速なネットワークの構成変更や新サービス導入が行えるようになります(図4・Step 2左下)。図4・Step 2右は「SoftCOM」を適用した仮想ホーム・ゲートウェイの例です。このケースでは、従来は家庭内のゲートウェイ装置によって提供されていたサービス機能であるルーティング、NAT、ファイアウォール機能などをネットワーク内のSDNルーターに集約しています。これによって、サービス構成変更や新規サービス導入に関して通信事業者が実施する作業をSDNルーターに集約し、迅速なサービス更新を実現するとともに、運用負荷を軽減します。

サービスの継続的な提供

古くから利用されている音声電話に加えて、現在のように多くの企業間でデータ通信が行われるようになったのは、1980年代の高速デジタル専用線サービス開始以降です。「高速」といっても最高速度は6Mbps程度であり、多くは1.5Mbpsの回線(T1と呼ばれる)を用いて音声とデータを伝送するものでした。1997年には最大通信速度を135Mbpsとし、通信品質を指定できるATM(Asynchronous TransferMode:非同期転送モード)専用線サービスが始まりました。ATM専用線サービスは当時のインターネットと携帯電話の爆発的な普及とともに、ADSLサービス、インターネットの中継回線、そして3G携帯電話網に広く採用されました。しかしながら通信技術の進歩は速く、2000年代に入ると、広域イーサーネット・サービス(L2VPN)が急速に普及することになります。イーサーネットはすでに企業内ネットワークで広く用いられており、当初から通信速度は1Gbpsと非常に高速でした。

このように通信事業者が提供するサービスは大容量化とともに変遷してきましたが、ネットワーク社会の基盤を支える通信事業者には、新技術の導入によりコスト・パフォーマンスの良いサービスを提供すると同時に、従来サービスを継続的に提供する責務があります。たとえば、高速デジタル専用線サービスは現在も多くの企業のネットワークで利用されています。また、ATM専用線サービスは現在の携帯電話のバックホール(無線基地局とモバイル・コア網間の伝送ネットワーク)においても依然として主要な役割を担っています。これらの従来サービスは顧客の事業継続に必須であるため、早急に終了することはできません。そこで通信事業者は、高速デジタル専用線サービスとATM専用線サービスを提供するSDH(Synchronous Digital Hierarchy:同期デジタル・ハイアラーキ)伝送ネットワークを維持しつつ、広域イーサーネット・サービスを提供するイーサースイッチ・ネットワークを新規に構築することで、従来サービスを継続しています。しかし、運用を始めてからすでに10年を経過するものがあるSDH伝送装置は、メーカーによるサポートが終了しはじめており、継続運用が難しくなりつつあります。さらに、これらの並存するネットワークを運用管理するコストの増大も、通信事業者の課題になっています(図5a)。

この課題に対して、2010年前後よりMPLS-TPを用いたパケット・トランスポート・ネットワークの普及が始まっています(図5b)。これは、MPLS-TPが提供するOAM(Operation, Administration andMaintenance)機能(接続性確認などの保守機能)およびプロテクション機能(障害時の回線バックアップ機能)によって、従来のSDH伝送ネットワークと同等の保守性と信頼性を保証するというものです。また、回線エミュレーション機能によって、高速デジタル専用線サービスとATM専用線サービスを、広域イーサーネット・サービスと同じネットワークで提供します。

ファーウェイはパケット・トランスポート・ネットワークを構築する機器であるPTNを2008年から提供し、世界各地で通信事業者のネットワーク統合による運用管理コスト削減をサポートしています。

おわりに

ファーウェイ・ジャパンは、2005年の設立以来、日本市場のニーズと課題解決に対応するソリューションを開発・提供することで成長してきました。本稿では、長期的な投資効率を高める観点で、ネットワークの大容量化、高信頼化、機能拡張性、既存サービスの継続性を実現するソリューションをご紹介しました。これからもファーウェイ・ジャパンは世界で蓄積した経験とノウハウを活かして、日本市場のニーズに応え、課題を解決するソリューションを提供し、お客様のビジネスとネットワーク社会の発展に貢献するよう取り組んでまいります。