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無限に広がるモバイル・ブロードバンドの可能性

消費者とデバイスは、社会的環境に応じて常に激しく変化する。インターネットは消費者の行動を大きく変えてきたが、これはほんの始まりに過ぎない。紙媒体よりもデジタル文書を読むために使われる時闘がますます増加し、電子商取引も庖頭販売と比べて急増している。ヨーロッパおよび北米では、人口の半分以上の消費者がオンラインで買い物をしている。携帯電話の加入者数は2002年に固定電話加入者数を超え、インターネット対応携帯電話の販売台数は今やデスクトップPCの販売台数を超えている。モパイル・インターネットの使用量は、2014年までにテeスクトップPCでのインターネット使用量を超えると予測されている。

「未来はすでにここにあるーただ、平等には分配されていない」ーウィリアム・ギプソン(2003年)

ますます広がるモバイル・ワールドから、取り残される人をなくすことは喫緊の課題だ。

現在、通信業界は外出先で情報端末を使用する人や在宅勤務をする人の刺便性を主要な戦略に位置づ付ているが、世界が本当に1つにつながったと言えるのは、たとえばインドの田舎で生計を営む職人やブラジルの貧困街に暮らす住民が先端の通信技術を享受できるようになったときだろう。

この“つながれた世界.を支えるために、通信技術は多目的でマルチ標準の包括的なものでなければならない。人とモノの聞のIーチャルな関係とデジタル・インタラクションからなる巨大なウェブには、パックボーンとして柔軟な分散型のブロードバンド技術が必要であり、それにはクラウド・インフラストラクチャー、インテリジヱン卜・ネットワーキング、そしてすべてを結びつける多層的なITおよびサポートシステムが備わっていなければならない。

NFC(Near-fieldcommunications:近距離無線通信)、DLNA(DigitalLivingNetworkAlliance)ガイドライン対応機器やHDM(IHighDefinitionMultimediaInterface:高精細度マルチメディア・インタフェース)などのアドホック接続、音声や感覚に基づく認識、UC(UnifiedCommunications)、M2M(MachinetoMachine)などが融合して、モバイル・サービスの提供方法に革新が生まれてくることは確実だろう。

スマートフォン: つながれた世界への入り口

新技術がスマートフォン分野に導入されるたびに、デバイスのハードウェア業界は大きな衝撃を受ける。スマートフォンの処理能力は、20年前の最もハイスペックなコンピューターよりも高くなっている。ほとんどのスマートフォンは、直感的なU(IUserInterface:ユーザー・インタフェース)、高度なマルチメディアなどのインターネット対応機能を備えており、これを訴求力として携帯電話市場で最も急成長中の分野になっている。

現在、7億人を超える消費者がスマートフォンを使用しているが、これはまだほんの序章に過ぎない。スマートフォンのユーザーが5億人に達するには10年を要したが、今後2年で10億人に達し、その後の2年間でさらに10億人増加することになるだろう。これは、世界の携帯電話加入者のほぼ40%に相当する。データ送受信を中心とするタブレットやその他のコンシューマー向け端末によって、データ通信料収入は大きく増加することになるだろう。タブレットの販売台数は2016年までに3億台を超え、全体で合計7億台が消費者の手元に置かれ、これと同時に、20億台を超えるスマートフォンと約2億5,000万台の電子書籍端末が普及すると予測される。

モバイル・サービス/アプリケーションが消費者の生活を変える

通信事業者にとってMBB(MobileBroadband:モバイル・ブロードバンド)は、音声およびSMSに続く2番目あるいは3番目に大きい収入源として、比較的短期間のうちに発展してきた。世界全体で、モバイル・インターネットの収入はSMSに追いつく勢いで急増している(図1)。モバイル・インターネットのエンド・ユーザーからの収入は、アナリストによれば2011年に1,110億米ドル(約8兆8,800億円※)だったが、2016年には2,350億米ドル(約18兆8,000億円※)に達する見通しである。携帯機器(ノートPCまたはタブレット)のユーザーからのモバイル・ブロードバンドの収入は、2011年の420億米ドル(約3兆3,600億円※)から2016年には920億米ドル(約7兆3,600億円※)に増加するものと見られる。

トラフィックは、動画が主な牽引役となって爆発的に増加するだろう(図2)。多くの通信事業者が、現在、全トラフィックの中でストリーミング動画の占める割合が最大で50%になると報告している。

ビジネスチャンスとしてのMBB

つながれた世界では、トラフィックの増加が止まることは決してないだろう。これはスマートデバイス・ユーザーの需要だけによるものではない。トラフィックの増加は、「何でも(いかなる通信端末でも)、誰でも、どこでも」という新しい相互作用から生じる。この「デジタル・インタラクション」とでも呼ぶべき新しいつながりは、以下の3つの重要な特徴を必要とする。

ウルトラ・ブロードバンド▶モバイル・ネットワークは、他のユーザーに干渉することなくHDや3Dの動画を含むあらゆるアプリケーションをサポートする十分な帯域幅を備えていなければならない。これは、モバイル・ネットワーク能力の決定的な課題となる。

ユビキタスな接続▶あらゆるところに存在するモバイル・ネットワークを通じて、すべての人とモノがこのデジタル・ワールドに接続できなければならない。これは移動しながら情報を扱う可能性をさらに広げ、人々のライフスタイルと世界を大きく変えることになる。ネットワークが拡大するにつれて、価値が生まれる。

待ち時間ゼロ(ZeroWait)▶高品質のユーザー・エクスペリエンスと高効率のデジタル・インタラクションを、最小限の遅延で実現することによって、新しいビジネス価値が生まれる。

ユーザー・エクスペリエンスは、この急速に進化を続ける情報化時代の常に中心となるものである。ユビキタスな接続によって可能になる情報の交換と相互作用の発展には、ユーザー・エクスペリエンスへの対応が不可欠となるだろう。ユーザーの社会的地位や地理的位置に関係なく、多用途で包括的なテクノロジーが必要とされる。

量販市場での可能性

つながれた世界のあり方や成長にインパクトを与える要因は他にもたくさんある。イノベーションが成長の根本であることには変わりないが、公共事業部門や民間事業者の技術選択に影響を及ぼす政治的、経済的、社会的な要因も多数存在しており、インフラ構築の分野もまたこうした要因に左右される。以下のようなものがこれにあたる。

ライセンス料▶政策立案者や規制当局は、通信技術のさらなる発展を促進するための取り組みを支持するようになってきた。3Gの導入には数十億ドルのライセンス料が必要だったが、各国政府はユビキタスな環境が生み出す社会的利益を今では十分理解しているため、今後はMBB周波数帯域使用料をかなり低く下げていくことになるだろう。

義務的な投資▶スマートメーター(通信機能を備えた電力メーターで電力会社とデータをやりとりしたり、家電製品とつなげることでそれを制御したり、電力料や使用料を表示したりするスマートデバイス)やeCall(交通事故に遭遇した人に、いかなる場所でもすばやい援助を提供することを目的とした欧州委員会のプロジェクト。2015年より実施予定)などの義務化によって、新たなデジタル・インタラクションが生まれ、収益源となるだろう。

持続可能なスマートシティ▶スマートシティの建設に必要なインフラストラクチャーや共同プロジェクトへの投資について、公共部門、民間部門ともに関心が高まりつつある。環境・エネルギー関連の問題もこれを後押ししている。

共同作業▶遠隔作業、バーチャル組織、分散作業グループ、協調型ロボット(Cobot:コボット)など、さまざまな共同作業の方法がデジタル・ワールドに強い影響を与えるだろう。

シンプルなものへの強い要求▶消費者も企業もデジタル・ワールドの恩恵を強く求めているが、同時にシンプルなライフスタイルも望んでいる。

技術よりもサービス▶インターネットとMBBが大衆化することによって消費者の行動は変化し、携帯電話やその他の関連機器は個人秘書のような存在となるだろう。

※)1米ドル80円換算

法人市場での可能性垂直市場での可能性

つながれた世界では、私生活も仕事も、ネットワークに接続した同じデバイスで管理することになる。コンシューマー向けサービスのために開発された技術が、ビジネスにおいても本格的に利用されている。2つの役割を持つスマートフォン、モバイル・デバイス管理、個人用クラウドが、大小の企業とその従業員向けサービスの拡張オプションとして提供されている。クラウド・コンピューティングによって企業ICTにおける従来の購買パターンが大きく変化するのに伴い、企業のデジタル資産への安全なオンデマンド・アクセスが、不可欠な前提条件になりつつある。運営コスト主導による購入モデルへの移行によって、法人市場が占める金額の割合が増加しつつあり、これは通信事業者の収益につながっている。

現在、世界で130の通信事業者がクラウド・サービスを提 供している。2 0 1 1 年だけ で、通信事業者は170件の新しいクラウド・ サービスを立ち上げ、クラウド・インフラストラ クチャーに130億米ドル(約1兆1,000億 円※)の投資を行い、これを支える25万平 方メートルのデータ・センターを建設中だ。

また事業ポートフォリオの大幅な見直しが 各社で行われている。MBBが登場する前 は、接続を中心とするサービス・ポートフォリ オには活気がなかった。より良質で安価な 接続を提供する意欲はあったが、事業をより スマートに運営する方法について革新的な アイデアはほとんどなかった。現在MBBは、 既存の法人向けサービスの再構成と、まった く新しいサービスの創造という2つのレベルで 触媒として機能している。

垂直市場での可能性

垂直市場モデルのICTは、通信事業者にとって大きな期待が持たれる新たな開拓分野である。垂直市場モデルのICTでは、ある特定の産業向けにカスタマイズされたサービスを提供するが、そのサービスには汎用性のあるアプリケーションや技術を利用する場合もある。最近の調査によれば、通信事業者の90%は、垂直市場向けの企業サービスが売上高の増加につながる可能性があると考えており、こうしたサービスを目標として再編成を行っている。世界規模で連携した垂直事業数は非常に多い。いくつかの例を挙げると、スマートグリッド、電車内のブロードバンド、デジタル油田、モバイル・ヘルス、モバイル・ガバメントなどがある。MBB、クラウド・コンピューティング、M2Mは、こうした事業において活用されている重要技術である。

垂直市場は多岐にわたる(図3)ため、通信事業者には高い技術力と市場進出スキルが求められており、同時に目標を絞った企業向けサービスの可能性も生まれている。規模の経済を実現するには、各業界の間で共通の標準とプラットフォームをうまく利用することが重要になるだろう。

ここ2~3年の間に、M2Mはモバイル業界の状況を劇的に変える可能性のあるものとして登場し、つながれた世界のもう1つの牽引役になろうとしている。とりわけ「モノどうしのインターネット」、すなわちエンド・ユーザーがマシンであるネットワークの役割が重要である。

M2Mにおいて最も大きな可能性をもたらすのが、スマートシティとスマートデバイスだ。輸送と公益事業はスマートシティ概念の中核であり、どちらも無線技術を使用することになる。現在すでに5,000万台のスマートメーターが使われており、業界アナリストによれば、この数字は2016年までに7倍に増加すると予測されている。輸送分野も、無線接続にとって大きな期待が持てる市場だ。フリート管理システム(整備、運行管理、燃料管理などを含む総合的な車両管理システム)は確立されたM2Mアプリケーションだが、インテリジェント輸送システムと自動車のスマート化ビジネスも、長期的に見ればはるかに大きな市場になるだろう。

今までは、ほとんどのM2Mアプリケーションにおいて、個数は多いものの容量は小さいデータの交換が行われてきた。しかし、特にLTEが使用されている地域で、新たな高帯域幅のアプリケーションが出現し始めている。たとえばスカンジナビアではメディアが衛星中継の代替としてLTEをライブ動画放送に使用することに関心を示している。

ヘルスケアと小売業の分野でも、動画を使用するアプリケーションに大きな可能性がある。また、近年利用可能性が高まっているHD動画や拡張現実もM2M通信と強い関連性があり、消費者向けを手始めとして大きな適用可能性を持っている。

イノベーションから生まれる可能性

データ・トラフィックの急増によって、モバイル・ネットワークにはこれまでにない大きな需要が生じている。すでに無線アクセス技術の進歩によって、ネットワーク・キャパシティの増大、高速化、周波数帯域のより効率的な利用が実現され、ユーザー・エクスペリエンスが改善されているが、同時に、より一層高度なデバイスとデータ量の多いアプリケーションの成長サイクルが加速している。

そこで、より高速かつ高効率のネットワークとともに新たな収益源も生み出す新技術が必要とされることになる。適切なツールさえあれば、ウルトラ・モバイル・ブロードバンド環境の実現は可能なのだ。

より高速かつ高効率のネットワーク

RAN(RadioAccessNetwork:無線アクセス・ネットワーク)と、従来のネットワークのバックホールなどのネック領域は継続的に進化し、これにはスモールセル、SON(SelfOrganizingNetwork)、クラウドRANなど、ネットワーク性能、カバレッジ、品質をさらに改善する多くの技術革新が伴う。

LTE▶2011年末までに49件のLTEネットワークが商用化され、さらに2016年末までに346件のネットワークが稼働開始の予定である。

LTE-A▶モバイル通信事業者は、すでにLTE-A(LTE-Advanced)について議論を進めている。その主な理由は、LTE-Aによってキャリア・アグリゲーション(複数の離散した周波数帯域を組み合わせて使用すること)が可能になることである。多くの通信事業者は断片化した周波数帯域のリソースを所有しているので、LTE-Aによってそれらをより有効に利用できるようになる。LTE-Aは、異なる多くのバンドにまたがる周波数帯域を束ねる最初の技術で、これによりモバイル・ブロードバンドを制限なく実現できる可能性がある。

LTE-Aは、ピーク・データ転送速度と周波数帯域の柔軟性を改善し、さらにHetNet(HeterogeneousNetwork:異種ネットワーク)と協調通信もサポートすることになる。

ファーウェイのSingleRANソリューション▶通信事業者がLTEやその先に向かって進化するにつれ、当社のソリューションを採用するSingleRANキャリアも増えている。このソリューションは、単一基地局のプラットフォーム上で複数の無線アクセス技術をサポートすることが可能であり、MBBの将来の成長に対するコスト構造を改善し、既存技術へのサポートの継続を確保することができる。

SingleRANプラットフォームは、バックホールなどのエリアを統合しつつ、より高効率の周波数帯域の利用を可能にし、オールIP化を加速するのに役立つ。

スモールセル▶トラフィックの増加は各地域で均等に生じているわけではなく、ピーク・トラフィック・エリア内でとりわけ顕著になっている。

セルの分割とスモールセルの使用はどちらも周波数帯域をより効率的に利用する手段で、これらを通じて周波数の再利用を集中的に行う必要がある。スモールセルは、ピーク・トラフィック・エリア内とセル・エッジの両方について必要に応じてキャパシティを増大させるが、これによって新たなネットワーク・アーキテクチャーが生成され、運用に新たな要件が課される。マクロセルとスモールセルの間で周波数帯域を調整することにより、割り当てられた周波数に追加された各スモールセルのキャパシティを100%以上増大させることができる。

SON▶簡単なインストールとセットアップで、ブラインド・スポットや対象ホットスポットのためにスモールセルをすばやく容易に実装することが可能になり、SON機能により、隣接セル関係からセル負荷管理、スモールセルとマクロ・ネットワークの間のスマートなハンドオーバーまで、すべてを自動的に処理できるようになる。

クラウドRAN▶「ベースバンド・プール」の生成によって、基地局のベースバンド処理機能を無線およびアンテナ・ユニットから分離できる。その結果、数百の低コスト無線セル・サイトを柔軟かつ戦略的に配置し、最適なカバレッジとキャパシティを得ることができる。

バックホール▶適切かつ柔軟なバックホールは、スモールセルの成功にとって非常に重要であるため、モバイル通信事業者の大きな関心事になるだろう。ファイバー・アクセスを有する事業者は帯域幅が実質無制限であるというメリットを享受することができる一方、従来のポイント・ツー・ポイントやポイント・ツー・マルチポイントのマイクロ波システムなどを含めた柔軟な運用も可能になる。

HetNet▶さまざまなレベルの需要とカバレッジの要件に対応するために、複数の無線アクセス技術をサポートするスモールセルおよびマクロセルの多様なアーキテクチャーが必要となる。またこれらのセルは完全に統合化され、高度な無線計画によって管理されて、HetNet環境の中で共存しなければならない。多くの通信事業者がすでに、データ・トラフィックの負荷軽減やカバレッジ拡大のために、無線LANおよびフェムトセルの使用を増やしてスモールセルを活用している。複数ベンダーのスモールセル環境でのSONサポートは、どのようなHetNetにおいても非常に重要になってくる。

周波数利用▶LTEおよびLTE-Aによって周波数帯域の利用効率は向上しており、通信事業者は同じ周波数範囲でより多くのユーザーにサービスを提供することができるようになっている。ソフトウェアのアップグレードが可能な基地局や、将来も使用可能なプラットフォーム・スキャンなどのインフラストラクチャー技術によって、今後の周波数帯域利用に対する通信事業者の懸念はさらに緩和されるだろう。

新しい周波数▶世界中でかなりのTDD(TimeDivisionDuplex:時分割複信)周波数帯域が利用可能になったことで、TD-LTEは次第にFDD(FrequencyDivisionDuplex:周波数分割複信)に近づいており、2016年までに世界の潜在市場規模の40%を占めると思われる。一方で、周波数割り当ては断片化している(図4)。モバイル通信事業者、ネットワーク機器ベンダー、デバイス・ベンダーが規模の経済を実現して共通のネットワークの使用を促進しサポートするには、コンバージェンスの実現が不可欠だ。周波数帯域の断片化と不足は技術コストを上昇させることになるし、周波数の調和が行われなければ、グローバル・ローミングという夢も実現しないだろう。

マルチバンド・デバイス▶デバイス・メーカーは、LTE周波数帯域の追加に対応しなければならない。技術が成熟し、通信事業者が自社が対象とする帯域を明確にすることで、デバイス・ベンダーは追加の帯域をサポートしやすくなる。MIMO(Multiple-InputandMultiple-Output)技術の成熟とともに、チューニング可能なアンテナによって携帯電話などの小型機器へのマルチバンドの組み込みが容易になり、1個のLTE機器で最適な8つの周波数帯域を使用して全世界にわたるローミングが可能になる。

卓越したオペレーションによる収益

通信事業者がより高速、高密度のネットワークを敷設するのに伴い、新たな収益源の必要性が非常に高くなっている。また、通信事業者は、より高速のコンピューティング・プラットフォームを使用した次世代アクセス技術を通じて、既存のネットワークと周波数帯域からより効率的に収益を上げる方策を探らなければならない。

収益を向上させる現状の技術には、新たな収益をもたらす技術と、既存インフラストラクチャーを使用して収益を高める技術の2つの大きなカテゴリーがある。

PCC(PolicyandChargingControl:ポリシーおよび課金制御)▶コア・ネットワークの場合、通信事業者はPCRF(PolicyandChargingRulesFunction)を通じたポリシーに基づく管理によって、サービスや利用状況に応じた新たな料金プランを開発することができる。ソーシャルメディア・バンドルは、使用頻度の低いユーザー、すなわちARPU(AverageRevenuePerUser:1人あたりの売上高)が低いユーザーに対し、そのサービスへの無制限アクセスを低価格で提供することにより収益を得られる方法で、特に興味深い。これに対し、旧来の段階的料金プランは、データ量、接続時間、アクセスの速度に応じたものになっている。

IMSおよびSDPに基づくサービス▶サービス層では、IMS(IPMultimediaSubsystem)、RCS(RichCommunica-tionSuite)、HDボイスなどの複数の技術が利用可能であり、より高品質の音声通信を提供できる。SDP(ServiceDeliveryPlatform)も、通信事業者が非常に多数の加入者を擁する発展途上の市場を中心に、通信事業者ブランドによるコンテンツ・ポータルを稼働させるために広く使用されている。また、SDPは、サービスの開発と制御を統合する目的で、大陸間にまたがる多国籍の通信事業者にも使用され始めている。

APIポリシー▶通信事業者は、主として法人サービス向けにAPI(Application Programing Interface)をサードパーティにー開示することで、新たな収益源を獲得することができる。これによってISV(Independent Software Vender:独立系ソフトウェア・ベンダー)と法人顧客や中小企業とをマッチングさせ、以前には関係のなかった未踏の市場に参加させることが可能になるのである。

通信事業者は、バリュー・チェーン内の他の企業が入手不可能な加入者データを保持しており、これは特に注目に値する。このデータは、エンド・ユーザーと上流側の提携企業の両社に価値をもたらすものだ。モバイル通信事業者とOTT企業(Skype、Spotify、Facebookなど)との提携関係は好ましいものとして受け入れられており、解約率の減少に貢献している。

新しいビジネスモデル▶LTEネットワークはパケット方式で、データおよびウェブのサービスに適しているため、モバイル通信事業者は新たなサービスや提携関係の開始にあたって優位性が得られ、自身のリソースを自社および他社のために最大限に活用することができる。これは、常に変化し続ける世界で成功を収めるためにきわめて重要になるだろう。

OSS/BSS▶LTE、LTE-A、高速IPベースのネットワーク・インフラストラクチャーのいずれにおいても、ユーザー・エクスペリエンス、ビジネス・インテリジェンス、ネットワーク輻輳にフォーカスした新世代のITサポート・システムが必要となる。複数のサービスの管理は、広範囲におよぶOSS(OperationSupportSystem)/BSS(BusinessSupportSystem)、IT、ネットワーク要素が関係するため、ますます複雑になっていく。

通信事業者が統合されたサービス・エクスペリエンスを提供する場合、サービス管理はエンド・ツー・エンドの形で包括的に実施する必要がある。また、通信事業者がエクスペリエンスを管理し、ユーザー中心の視点に立ったサービスを提供するには、解析ツールによって各種のユーザー・データ・ソースを結合させることも必要となる。

クラウドベースのサービス▶通信事業者はすでに、クラウド・サービスをサポートするための大規模な建設、発注、提携関係の構築を進めており、投資や企業買収の80%がデータ・センターのインフラストラクチャーに関係している。クラウド・サービスがユーザーに与える大きな可能性は、ITと通信技術の両方に依存している。クラウド・サービスは、ネットワークの接続範囲、制御、複雑なサービス管理機能のすべてが提供されてはじめて効果を発揮する。しかし、提携関係が重要であることに変わりはなく、とりわけSaaS(SoftwareasaService)は、インフラ・ベンダーやサービス・プロバイダーとともに強力なパートナーとなるだろう。

通信事業者のクラウド対応サービスには、市場参入用サービスと運営サービスの2つのカテゴリーがある。運営サービスは、クラウド運営モデルを使用して通信事業者自身のサービスを管理するものであり、運営効率を改善することができる。これには、クラウドを使用したM2Mサービス管理や課金が含まれる。

これらすべての方策をうまく組み合わせれば、クラウド・サービスの普及が進み、つながれた世界の価値はより高くなるだろう。

結論

モバイル・ブロードバンド業界は新たな可能性を生み出し、生活の質だけでなく仕事の生産性も劇的に改善する。ウルトラ・ブロードバンド、ユビキタスな接続、待ち時間ゼロというつながれた世界の中心的な3つの特徴が、これからのモバイル・ブロードバンドの礎となる。

ユーザー・エクスペリエンスは、顧客の確保とビジネスにおける価値の向上をサポートし、このつながれた世界を発展させる鍵となるもう1つの重要な要素である。限られた無線リソースの中で最適なユーザー・エクスペリエンスを提供するには、継続的に改善を行い、仮に良好なものであってもまだ改善の余地があるということを認識しておかなければならない。

モバイル・ブロードバンドは、技術的な課題を解決する手段という視点ではなく、創出されるビジネスチャンスという視点で再定義する必要がある。技術のイノベーションとビジネスモデルの連携がなければ、ICTに変革をもたらすことはできないからである。