5G技術の発展に向けた世界初39GHz帯での 無線アクセスバックホール統合伝送の屋外実験に成功
本実験は、信号処理装置およびレンズアンテナで構成される5G基地局と、5G中継基地局との間の
バックホール通信および、5G中継基地局と5G移動局との間のアクセス通信を同一周波数帯において 実現し、5G基地局のカバレッジ外に位置する5G移動局との無線通信を、5G中継基地局を介して行う 実験を、 2018年4月16日(月)~4月27日(金)に神奈川県横浜市みなとみらい21地区において実施 しました。
今回の実験では、5Gの発展技術として将来的な標準化に向けて検討が進められている、
無線アクセスバックホール統合伝送技術の実証を行いました。メタマテリアル※1を応用した レンズアンテナを用いて、電波を特定の方向に集中して送信するビームフォーミングを活用し、 アクセス伝送とバックホール伝送との間の干渉を低減して同時伝送を実現しました。
また、無線伝送時間が短くなるように実験装置を設計し、アクセス伝送区間の上下リンク、および バックホール伝送区間の上下リンクをすばやく切替えて伝送することを可能にしました。加えて、 アクセス伝送とバックホール伝送の無線品質に応じて、各伝送区間に割り振る無線リソースを調整し、 無線アクセスバックホール統合伝送を効率化しました。
これにより、5G基地局から5G中継基地局を介して、5G移動局までのパケット伝送遅延を約1.6ミリ秒まで短縮することに成功しました。さらに、5G基地局のカバレッジ外のエリアに対して、5G中継基地局を 介したミリ波※2伝送により、約650Mbpsの無線通信が可能となることを実証し、無線アクセス バックホール統合伝送がミリ波通信のカバレッジ拡大に寄与することを明らかにしました。
今回実証した無線アクセスバックホール統合伝送により、ビル陰となるエリアが多く存在する都市部に おいて、比較的容易にカバレッジを拡大することが可能になります。さらに、光ファイバーの敷設が難しい
離島や山間部などへ本技術を導入することにより、そのような地域においても5Gによる高速・大容量かつ 低遅延な無線通信を実現することも期待できます。
ドコモは2020年の5G商用サービスの開始をめざしており、今後も世界主要ベンダーと協力し、 5Gネットワーク技術の研究開発に取り組んでまいります。
※1 メタマテリアルとは、電磁波に対して自然界の物質にはない振る舞いをする人工物質のこと。
※2 ミリ波とは、波長が1〜10mm、30〜300GHzの周波数の電波のことをいう。現在、携帯電話で主に使われている2GHz帯までの周波数に比較してミリ波は波長が10分の1以下であるため強い直進性があり、非常に大きな情報量の伝送が可能だが、遠くに伝わるのが困難とされている。