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最先端のCG作品を生み出す白組でクリエイターを支えるファーウェイの高密度サーバーとストレージ

2018.04.10

大容量・高負荷のデータ処理を高速化し、制作環境を大きく改善

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『永遠のゼロ』『STAND BY ME ドラえもん』の制作、『シン・ゴジラ』のVFX(ビジュアルエフェクツ)のほか、数多くのテレビCM、アニメーション、ゲームなどを手がける映像制作会社、株式会社白組。ミニチュアのストップモーションから最先端のVFXまで、さまざまな映像技術を駆使して「衣・食・住にプラスする心の糧」となる作品を40年以上にわたって制作してきた同社は、業界に先駆けてITシステム専任の部署を社内に設置するなど、早くからITと制作のバランスを重視してきました。同社システム部 システムアドミニストレーターの杉山隆志氏と入田尭光氏に、進化し続けるCG制作の現場を支えるITシステムの要件と、ファーウェイ製品導入の経緯についておうかがいしました。

株式会社白組 システム部
システムアドミニストレーター

入田 尭光
(にゅうた・たかみつ)氏

株式会社白組 システム部
システムアドミニストレーター

杉山 隆志
(すぎやま・りゅうじ)氏


株式会社白組
1974年、映像作家、特撮監督で現・代表取締役社長の島村達雄氏が設立。1980年代からCG制作を行い、数々の映画、テレビ番組、CMのVFXを手がける。東京の表参道、三軒茶屋、調布の3か所にスタジオを持ち、映画監督やクリエイターを含む200名近い社員が在籍している。


1作品で数10TB、1コマの処理に3時間
増え続けるデータと演算量

編集部:CG作品はどのような工程を経て制作されるのでしょうか。

入田氏:CG映像の制作には大きく4つの工程があります。

①人物や背景などをPC上で作る「モデリングとアニメーション」
②爆発や海・川などの水の動きをリアルに再現する「エフェクトとシミュレーション」
③画像として生成するための計算を行う「レンダリング」
④生成された複数の画像を合成し、色や視覚効果を調整する「コンポジット」

映画やアニメーションなどの作品は複数の制作会社で分業することが多く、①~④の工程を経て制作された映像をつなぎあわせて1つの作品ができあがります。

編集部:それぞれの工程で演算とストレージのリソースはどのぐらい必要になるのですか。

杉山氏:①のモデリングとアニメーションは作業者のPCで完結する作業で、当社ではインテル® Core™ i7の最新CPU、メモリー32GB、OS用に500GBのSSDとデータ保存用に2TBのハードディスク、NVIDIA GeForce GTX 1070のGPUを搭載したPCを使用しています。一般的なゲーム用PCのイメージですね。

入田氏:②以降の工程は作業者のPCでは容量も性能も不足するので、ネットワークサーバーやストレージの出番になります。②のシミュレーションでは、爆発やビルの崩壊、怪獣が光線を吐くといった処理のほか、LiDAR(レーザー測距技術)を使って実世界の建物や風景を測定し、点の集合として仮想空間上に表現するポイントクラウドと呼ばれる技術もあり、CPUとメモリーでの演算が大量に発生します。CG映像は1秒間に24コマもしくは30コマの画像で構成されているので、こうした処理を1コマずつ施し、計算結果を1ファイルごとに保存していくと、1作品の合計データ量は数TB~数10TBにのぼります。

③のレンダリングもCPUのリソースを大きく消費する作業で、作業者のPCのリソースをほぼ100%使い切ってしまうため、作業を並行して行うにはネットワークサーバーでの処理が必要です。重いデータの場合は1コマの計算に2~3時間かかるので、時間的に非常に大きなボトルネックとなります。

④のコンポジットでは、さまざまな処理を施された複数の画像データを合成して1コマの画像を生成するため、ストレージから1秒あたり画像データ数×コマ数分のファイルを読みださなければなりません。ここではI/O(入出力処理)が頻繁に行われるので、ストレージの速度が重要になってきます。

編集部:膨大なデータが発生するのですね。

杉山氏:そうですね。しかもデータ量は年々増加していく傾向にあり、2011年に当社が制作した3DCG映画は1作品で20TBだったのが、2014年に手がけた作品は70TB、2016年にVFXのみを担当した作品は担当部分だけで150TBにも達しました。新しい作品を制作する際は、作品の長さやどんなシーンがあるのかを確認し、過去の類似作品から推定して必要なリソースを算定します。たいていは制作の過程で想定を上回ってしまうので、多めに見積もっておきます。

入田氏:完成に至るまで、クリエイターのこだわりで細かな修正がどうしても必要になります。動きがいまひとつとか、もう1ピクセルだけ動かしたいといった要望が出るたびに、修正版として新たなデータが発生し、多い時には1カットで20回近く作り直すこともあります。しかも、最終的にどのバージョンにすることになるかわからないので、完成するまですべて保存しておかなければならず、データがどんどん積み上がっていくことになります。

クリエイターのこだわりをITでバックアップ

編集部:IT製品の性能はこうした需要に追いついているのでしょうか。

入田氏:私はもともと制作に関わっていた経験があるのでよくわかるのですが、クリエイターというのは貪欲で、技術的に可能でさえあればチャレンジしてみたい、ということがたくさんあります。ソフトウェアやCPUの性能が向上するほど、できることが増えるわけです。例えば、従来は時間がかかりすぎるとあきらめていた精度の高いシミュレーションが、演算速度が上がると実現できるようになりますが、それによってデータ量もさらに増えてしまいます。

杉山氏:そういう意味では、システム部の目標はクリエイターがこだわりを追求できるようバックアップすることだと言えます。かつてはデータを保存したり開いたりするだけで10分も20分もかかり、無駄な待ち時間を過ごさなければなりませんでしたが、そうした処理が早く済めば、その分の時間を作品のクオリティを上げる有意義な作業に使うことができます。納期が迫るなかで、納品ファイルをチェックしようと開くだけで20分待たされたあげく、不具合があって開けないとなれば、相当なストレスです。そうしたストレスをできるだけ低減し、クリエイターが目の前のモニターに最大限集中できる作業環境を用意することが我々の役割だと思っています。

ファーウェイ製品の導入でリソースを増強
作業時間を3時間から1時間に

編集部:では、白組の三軒茶屋スタジオではどのようなシステムを構築しているのでしょうか。

杉山氏:もともとは演算用にデスクトップPCを増設して対応していたのですが、2016年に大作映画のVFXを手がけた際に、途中でどんどんリソースが足りなくなってしまい、メモリーや処理速度がボトルネックとなりたいへんな苦労をしました。レンタルサーバーで間に合わせながらなんとか乗り切ったのですが、この作品での経験を踏まえ、将来を見据えてサーバーとストレージの導入を決めました。現在はファーウェイの『FusionServer X6800』高密度サーバー、『OceanStor 5500 V3』ストレージ、『CE6850』データセンタースイッチを導入したシステムを構築し、従来のシステムと併用しています。

入田氏:サーバーは4Uのシャーシに8ノード(各ノードにインテル® Xeon®プロセッサーを2基と128GBのメモリーを搭載)収容可能な高密度サーバー製品を計10台導入しました。Thinkbox Software社のDeadlineという演算管理用ソフトウェアを使い、シミュレーションやレンダリングのタスクを細分化して各ノードに割り当て、並列で計算させます。サーバーを導入してから、作業のスピードは格段に上がりました。レンダリングの工程にはとりわけ時間がかかりますが、『X6800』の導入後は演算時間を3分の1から4分の1程度にまで短縮できています。コンポジットの工程では先述のようにI/Oが多いので、IOPS(Input/Output Per Second)の高い『OceanStor』が活躍しています。

杉山氏:これまで3時間かかっていた演算が1時間で済むのは大きな差です。先ほど述べたように作品のクオリティを上げる作業にあてられるだけでなく、仕事以外にクリエイティビティを高めるために時間を有効活用できるという効果も期待できます。

1. 以前から使用している演算処理用デスクトップPCは増設を重ね、サーバールームの半分を占めている
2. 新たに導入したファーウェイの『FusionServer X6800』高密度サーバー(上)と『OceanStor 5500 V3』ストレージ

部品の作りや設計に品質の良さを実感

編集部:新たにシステムを構築するにあたり、ファーウェイ製品をお選びいただいた経緯と決め手をお聞かせください。

杉山氏:ファーウェイ製品についての情報は以前から入手しており、2016年のInterop Tokyoのブースでこちらからお声がけしました。その後、表参道の本社に営業担当の宋さんが1Uサーバーの実物を持参して説明してくれたのはインパクトがありましたね(笑)。IT製品では他社ほど知られていないメーカーだったので、正直なところ最初は不安もありましたが、実際に製品を見て十分に検証させてもらって、完全に払拭できました。2か月の評価期間を経てサーバーの運用を開始し、昨年11月にはストレージも導入しました。

評価にあたっては他社製品と比較しましたが、まずコストパフォーマンスが圧倒的に高かった。加えて、1つ1つの部品が丁寧に作られていたり、余裕のある設計で、特にファンのスペースを十分に確保したりと、細部にわたって品質の良さを感じました。導入後に中国・成都のストレージの研究開発施設と深圳の工場を見学させてもらったのですが、生産工程でも品質管理を徹底していることがわかり、最初に直感で感じていた品質の良さが裏打ちされました。こちらの要望に対して最適な仕様を出してくれたのもよかったですね。

実はファーウェイがスマートフォンメーカーでもあるということは後から知ったのですが、いまでは個人的にすっかりファンになり、『TalkBand』(ウェアラブル)を愛用していますし、社内で支給するスマートフォンにもファーウェイ製品を選んでいます。

編集部:実際に運用を開始してみて、いかがですか。

入田氏:想定どおりに機能してくれているので、不満はまったくないです。故障率も圧倒的に低く、手離れのいい製品だと感じます。

杉山氏:ドキュメント類だけでなく動画も豊富に用意されているのはうれしいですね。運用や技術面で勉強になる内容も多く、助かっています。管理ツールも充実していて、特に大量のデプロイをサポートする機能は役立ちました。

VDIやクラウドによる業務効率の向上が次の課題

編集部:システム部として今後取り組むべき課題にはどのようなものがありますか。

杉山氏:当社は3か所にスタジオを持っており、作品ごとにチームを組み替え、拠点間を移動して最適化したチームで制作を行っています。別スタジオとのデータのやりとりの効率化や作業環境の共有が次の課題と考えています。

入田氏:チームごとに使いたいソフトウェア構成が違うため、現状ではPCを物理的に移動させたり、共有PCにその都度必要なソフトウェアをインストールしたりと、何かと不便です。VDI(仮想デスクトップ)で各チームの仮想マシンを立ち上げてどこでも使えるようになれば、簡便になるうえ故障やセキュリティ上のリスクも低くなります。ゆくゆくは制作環境もVDI化できるとよいのですが、映像制作ではモニターの色管理と表示の遅延がないことが非常に重要なので、一般企業向けのVDIでは技術的な要件が満たせません。この課題をクリアしつつ費用対効果のいい製品はまだ出てきていないので、ファーウェイにもぜひ期待したいところです。

杉山氏:また、CG制作はデータ量が大きいので現状はオンプレミスでの運用が最適と考えていますが、サーバールームの容量にも限界がありますし、将来的にはクラウド化も検討しなければと思っています。レンダリングの工程は、計算量は多いですが出力データはさほど大きくないので、最近ではレンダリングだけクラウドで処理するという制作会社も増えてきています。いずれはクラウド上に基盤を築いてどこからでも同じ制作環境で作業できるようにしたいですね。

実績と経験を共有し業界全体のITの底上げに

編集部:CG制作会社でIT専門部署がある企業は少ないそうですね。

入田氏:クリエイターの中でITに詳しい人が兼任しているという場合が多いです。PC1台で制作していた当初から、チーム・組織として分業する体制に急速に進化してきたことで、最近になってようやくシステム管理の必要性が認識されるようになってきました。

杉山氏:ただ、扱うデータや演算の種類が特殊なため、他業界の事例がCG業界には当てはまらないことが多くあります。そこで、当社ではこれまでの実績を紹介し、情報発信をするよう努めています。協力会社や同業他社の方々に当社のサーバールームで実際にシステムを見ていただき、成功例や失敗談を共有しています。

入田氏:使ってみてよかった製品は他社にも薦めています。我々の取り組みが他社にも広がり、業界全体のITシステムのレベルを底上げできればうれしいですね。

portrait

宋晨(ソン・チェン)
ファーウェイ・ジャパン 法人ビジネス事業本部
パートナー事業部 パートナーマネージャー

「2014年に新卒でファーウェイ・ジャパンに入社し、初めて1人で受け持ったお客様が白組でした。パートナー事業部に異動となってからも、引き続き担当させていただいています。CG制作には独特の要件がありますが、ファーウェイの製品なら必ずニーズを満たせると確信し、ご提案させていただきました。当社の製品が、今後もさらに進化し続ける白組の作品づくりを支えていけることを誇りに思います」