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SDN/NFVから5Gネットワーク・スライシングへ 変革への4つのステップ

2017.12.27

『Communicate』(ファーウェイ刊)編集部 ゲイリー・メイドメント(Gary Maidment)

すべての通信事業者は、ネットワーク進化への旅路に踏み出さなければならない。その燃料となるのはNFVとSDN、行程を決めるのはソフトウェアとクラウドであり、目的地では顧客が首を長くして待っている。この旅には「効率」「アジリティ」「スピード」という3つのキーワードが重要だが、より効果的にこれらを実現するには、ネットワークを全体にわたって複数のスライスに分離するエンド・ツー・エンドのスライシングが必要だ。

「効率」「アジリティ」「スピード」がカギ

1969年のARPANETを起源とするインターネットの登場と1973年の携帯電話の発明によって、デジタル時代は急速に幕を開けた。その10年後にはモトローラが世界初の商用携帯電話を発売し、さらに10年後の90年代初頭にはインターネットが隆盛を迎える。だが、ネットワークとモバイル技術が融合した真のデジタル時代の到来は、アップルが世界初のスマートフォンを発売した2007年だと言えるだろう。これが大きな転換点となり、今日私たちが慣れ親しんでいるスマートフォンとアプリの世界が誕生した。

アプリケーションやソーシャル・ネットワーキングに対する需要の高まりから、ネットワークのトラフィックは急激に増大した。この傾向は、コンシューマー向け、産業向けの新たなIoTサービスの隆盛にともない、今後も続いていく。2025年にはネットワークへの接続数が最大1,000億に達すると予測されているが、そのうちスマートフォンからの接続は80億に過ぎない。

しかし、トラフィックが増大を続ける一方で、ネットワークを運営する通信事業者の収益は頭打ちとなっている。調査会社オーバムによると、ブロードバンド・ネットワークのトラフィックは2015年から2025年にかけて205%の増加が見込まれているにもかかわらず、ブロードバンド・サービスへの支出はグローバルで51%の増加とゆるやかだ。

トラフィックの需要に応えると同時に利益を確保するには、ネットワークの効率化が不可欠となる。より優れたユーザー体験を提供するとともに、CAPEX(投資コスト)とOPEX(運用コスト)も削減しなければならない。高いアジリティを確保し、革新的なサービスをユーザーが求めるタイミングで迅速に提供することが求められる。「効率」「アジリティ」「スピード」が成功のカギなのだ。NFVやSDNはその変革を実現する強力なツールとなる。

NFV/SDNを応用する最適な方法は、5Gネットワークのスライシングだ。スライスごとに特定のサービスの提供に適した個別の特長を持たせ、サービスとスライス間のリソース共有を可能にする。

段階的なアプローチ

長期的に大きな目標を持つことは必要だが、実際にネットワーク構築を進めるにあたっては、レガシー・ネットワークとの共存やテクノロジーとエコシステムの成熟度といった要因も考慮しなければならない。また、技術者が必須となるスキルを習得したり、企業が新たなソフトウェア指向や顧客指向の組織へと変革を遂げるにも時間がかかる。ここで、変革に必要な4つの段階を示す(下図参照)。

4段階を圧縮した強気な手法を取ることも可能ではある。NFV/SDNネットワークを別途構築し、レガシー・ネットワークにオーバレイする形で既存のサービスを一度に移行してしまうのだ。こうした手法を選ぶにしても、それぞれの段階を理解しておくことは重要だろう。

変革に向けた4段階

第1段階
仮想化とクラウド化

ネットワークの仮想化

ここではまず、仮想化によってルーターなどのネットワーク機器のハードウェア機能とソフトウェア機能を分離する。仮想化の背景として、コンピューティング・ハードウェアが進化したことで、ソフトウェア定義に基づいた機能への移行が進んでいる。これによって、コンピューティング能力とストレージの共有が可能となり、フレキシビリティが格段に向上する。各種アプリケーションを、専用ハードウェアと同様に汎用ハードウェアでも効率的に動作させることができるのだ。

仮想化にともない、コンピューティング能力とストレージはPCから集約型のクラウド・インフラへと移行している。機能と場所とを分離できるため、スケーラビリティ、リソースの共有、弾力性、低消費電力、効率向上といった利点が得られる。さまざまなユーザーの多様な用途から生じる大量のデータを1か所に集約することで、ビッグデータ分析が可能となり、活用の機会も広がる。

NFVは仮想化技術をネットワーク・インフラに拡張した技術で、ソフトウェア機能を専用のハードウェアから分離し、VNF(Virtual Network Function)ソフトウェアとして汎用サーバー上で動作させることで、ネットワーク機器の機能とパフォーマンスを実現する。NFVの商用製品にはvIMSやvEPCなどがある。

SDNによる制御

通常の伝送ネットワークは、データ転送とネットワーク制御を担う専用のルーターとスイッチで構成される。しかし、SDNでは、単一のソフトウェア・ベースのコントローラーに制御機能を集約し、ルーターとスイッチは転送処理のみを担うことで、パケット転送機器のコストを削減する。

SDNコントローラーはネットワークの大部分を監視できるため、パケットの最適な経路を容易に検出することが可能となる。これは、ネットワーク輻輳時や特定の場所でリンク断が発生した場合に特に有用だ。ルーターやスイッチで限られた範囲のネットワークだけを見て経路を決定していた従来型のルーティングに比べると、SDNコントローラーははるかに優れた経路決定能力を備えている。

2016年1月に米ガートナーが発表したレポートによれば、調査対象企業の中でSDNを展開している企業はわずか2%に過ぎなかった。こうした展開の遅れは、標準化された機器が存在しないことが大きな原因だという。通信事業者にとって、SDNの大規模展開はまだ初期段階なのである。

第2段階
サービスの移行

サービス移行戦略

NFV/SDNの実現とレガシー基盤から新しい基盤への移行においてはさまざまな戦略が考えられるが、いずれの場合にもサービスの重要性と複数のサービス間の相互依存性を考慮しなくてはならない。主な戦略として以下のようなものがある。

新規サービスの展開:IMSによるVoLTEや企業向けのBoD(Bandwidth on Demand)サービスなど。

ライフサイクルの終了にともなう更新:レガシーのハードウェアとソフトウェアで大幅な増強が必要となった場合には、プラットフォーム自体の更新が得策となる。

NFV/SDN統合プラットフォームの展開:ビッグデータ分析による新たな統合サービスの提供が可能となる。

サービスの統合:より効率的な新技術の展開を促進する。

地域レベルの統合

通常、全国規模のネットワークのアーキテクチャは、アクセス層、集約層、コア層など、2~3層で構成されることが多い。同様にクラウド・インフラも、ローカル・レベル、リージョナル・レベル、ナショナル・レベルのDCを含む複数の層で構成される。いずれの場合も、階層化は、パフォーマンス、スケーラビリティ、柔軟性、弾力性、保守や統合のしやすさを向上する。

例えば、通常、複数の国々で事業を行う通信事業者では各国の事業会社がその国で全国規模のネットワークとプラットフォームを有している。しかしコストの面では、複数の全国ネットワークのインフラを国をまたがるひとつのインフラに統合するほうが賢明だ。単一のVAS(付加価値)プラットフォームを各国で共有できるといった利点もある。

欧州やアフリカではこうした全土にわたる統合が莫大なシナジー効果を生み出す可能性があるが、規制による制約、セキュリティやプライバシー、国ごとのカスタマイゼーションの必要性、サポートの問題などが障壁となりうる。

第3段階
エンド・ツー・エンドのオーケストレーション

NFVとSDNは独立した技術だが、通信事業者は双方を相互補完的に活用してネットワークをソフトウェア・ベースに変えることが可能だ。ただし、そのメリットを享受するにはネットワーク全体のアプリケーションに対してEEO(E2E Orchestration: エンド・ツー・エンドのオーケストレーション)が必要になる。

オーケストレーションによって、通信事業者はネットワーク・リソースをアジャイルかつ効率的に割り当て、リードタイムを短縮できるようになる。NFVとSDNにおけるEEOを実現する取り組みはいくつかあるが、中でもLinux財団が運営するOPEN-O(Open-Orchestrator、P13参照)は重要なプロジェクトだ。2016年3月にMWC 2016で初めて発表されたOPEN-Oは、NFV/SDNのアジャイルな運用に向けた初のオープンソース・ソフトウェア・フレームワークとオーケストレーターの開発を目指す協力的な取り組みである。チャイナ・テレコム(中国電信)のクラウドVPNなど初期のユースケースを経て、最初のリリースが2016年11月に発表されている。

第4段階
ネットワーク・スライシング

既存のモバイル・ネットワークは、各種サービスをIPで優先度づけするDiffServなどのプロトコルを利用し、ひとつのネットワーク上ですべてのサービスを提供するモノリシック型で運用されている。しかし、このようなプロトコルはE2Eではなく部分的に適用されることが多い。

ネットワーク・スライシングは、NGMN(Next Generation Mobile Networks:次世代モバイル通信ネットワーク)アライアンスによる5G構想の一部として文書化されており、ネットワーク・リソースを最適な形で配置することによって、費用対効果を最大化し、5Gの多様な新しいサービス要求に対応する。NGMNでは、スライシングをコア網とアクセス網を含めたE2Eの技術と定義している。

5Gの新たな無線インターフェースは、ネットワーク・スライシングに対応している。コア・ネットワークでは、ネットワーク・スライシングを個別に、あるいは新たな無線インターフェースを待たずして実装可能だ。各スライスは論理的な自己完結型のネットワークで、その上で各サービスが動作する。例えば、あるスライスでは動画、またあるスライスではIoT、また別のスライスではミッション・クリティカルな通信といった形で利用するが、複数の類似したサービスをひとつのネットワーク・スライス上でグループ化することもできる。

スライシングはRANやコア網などを含めE2Eで実施され、各スライスはサービス・タイプごとに最適化される。LTEとは異なり、5Gの無線インターフェースは動的または半動的にスライシングすることが可能だ。複数のネットワーク・スライスをひとつの物理インフラ上で同時に展開できるため、ミッション・クリティカルな通信用のスライスで超低遅延のチャネルを提供しながら、IoTスライスでは大量接続を提供するといったこともできる。

将来に向けた変革

ネットワーク・スライシングはNFV/SDNを基礎として実現する技術であり、NFV/SDNはオーケストレーションによってオーバーレイさせた上で、EEOで協調させる必要がある。現在、世界各国の大手通信事業者がスライシング技術の実現を目指す取り組みを進めている。

5GネットワークにおけるSDN、NFV、ネットワーク・スライシングは、通信事業者がサービスを展開する上で収益拡大につながる大きなメリットをもたらす。ファーウェイはNFV/SDN技術をリードするベンダーとして、引き続き主導的役割を果たしながら、将来に向けた通信事業者の変革を支援する製品、ソリューション、コンサルティング・サービスを提供していく。

ドイツ・テレコムとオール・クラウドの5G向けネットワーク・スライシングのデモを実施

2月27日、ドイツ・ボンにあるドイツ・テレコムのイノベーション・ラボ「5G haus」において、無線アクセス網、伝送網、コア網を含むオール・クラウドベースの5G向けエンド・ツー・エンドのネットワーク・スライシング技術に関する共同デモを実施。Cバンドを利用したMassive MIMOにより1Gbpsのスループットを達成したほか、『CloudRAN』による各スライスへの無線リソースの割り当て、『CloudMetro』によるデータ・プレーンの分離、低遅延の超低遅延のモバイル・エッジ・コンピューティング技術を検証しました。

ファーウェイのNFVソリューションがMWC 2017の「ベスト・テクノロジー・イネーブラー」賞を受賞

NFVのアーキテクチャ、技術、商用アプリケーション、「クラウド・ネイティブ」に向けた進化におけるファーウェイの先進的な能力と傑出した実績が評価され、MWC 2017の「グローバル・モバイル・アワード」において「ベスト・テクノロジー・イネーブラー」賞を受賞。2017年1月時点で、ファーウェイはクラウド・コア・ネットワークにおいて170件を超える契約を獲得しており、ボーダフォンやドイツ・テレコムなどの大手通信事業者の戦略的パートナーとして共同でイノベーションを進めています。

同賞受賞式にて賞を受け取ったファーウェイ 専務取締役兼最高戦略マーケティング責任者 徐文偉(ウィリアム・シュー、左)とクラウド・コア・ネットワーク・マーケティング部門 ディレクター 張勤(エドウィン・ジャン、右)