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戦略的パートナーシップを成功に導くために

2017.12.31

ファーウェイ専務取締役
兼 最高戦略マーケティング責任者
徐 文偉 (ウィリアム・シュー)

世界経済が低迷を続ける中、企業は新たな成長の源泉を模索しています。そのひとつのカギとなるのが戦略的パートナーシップです。成功すれば革新的な製品、ソリューション、ビジネス・モデルを生み出すことができます。

しかし残念ながら、多くのパートナーシップは失敗に終わっています。経営コンサルタント会社ヴァンテージ・パートナーズ(Vantage Partners)の2015年の調査結果によれば、19%のパートナーシップが失敗し、半数以上が運営上の問題により目標を完全には達成できていません。こうした問題の多くはパートナー間のコミュニケーション不足に起因しています。計画通りに進まない責任を互いに転嫁しあったり、各社のインセンティブの違いや製品競合などから協業に対する懸念が生まれ、営業チームどうしの連携がスムーズにできなくなったりする場合もあります。

かつてファーウェイは、通信事業者以外のお客様とお付き合いする機会があまりありませんでした。創業当初からの主力事業である通信事業者向けネットワーク事業では、機器の開発から設置、アフターサービスに至る大半の業務を自社で行ってきたからです。しかし、2011年に法人向けICTソリューション事業を本格化してからは、多岐にわたる産業パートナーとの協業が不可欠となりました。そこで、世界各地の戦略的パートナーとのアライアンス管理に長けたシスコ、ヒューレット・パッカード、IBMなどにノウハウを学びながら、これまでのような単独のプレーヤーから協調性あるパートナーへと変革を遂げるべく努力を始めました。

その一環として、2015年3月、ファーウェイはアジアのテクノロジー企業として初めてASAP(Association of Strategic Alliance Professionals:戦略的アライアンス専門家協会)に参画。また、お客様とともに中国や欧州など世界各地で13のオープン・ラボを設立しているほか、ソフトウェア開発者の支援に2015~20年までの5年間で10億米ドル(約1,100億円)の出資を予定し、IoTをはじめとするデジタル・エコシステムの発展を支えるアプリケーションの開発を促進しています。

アライアンスの成功の確率を高め、すべてのパートナーが利益を享受できるようにするためには、ITビジネスにおいて実証されてきた5ステップ・モデルが参考になります。

第一に、パートナー各社が目標を共有し、その達成に向けた戦略について合意することが必要です。各社がアライアンスに何を求めているのかを明確にした上で、最終的な目標達成のために短期、中期、長期の指標を設定します。

次に必要なのが事業計画です。大企業であっても、起業時のように「顧客は誰なのか?」「顧客はなぜ当社の製品を購入するのか?」「投資から期待されるリターンは?」といった基本的な問題に立ち返ってみることが有用です。事業計画には、共通の目標、成功の指標、マーケティングや販売戦略などのアライアンスの詳細をすべて盛り込みます。

3つめのステップは、適切なガバナンス体制の確立です。パートナー各社が、主要な責任者と、アライアンスを統括する役員を明確にします。問題発生時にリソースの融通や方針変更ができる役職の人材をスポンサーとして任命しておくほか、同等の職位の経営陣どうしに連携してもらうのも効果的です。そうすることで、パートナーどうしがお客様のニーズを満たすためにしっかりとタッグを組めるようになります。

4つめに考慮すべきことは、インセンティブです。すべてのパートナー企業において、営業スタッフの報酬体系をアライアンスが最優先事項となるように設定する必要があります。パートナー企業間でインセンティブが異なれば、一部の企業に負担が偏ることになりかねません。各社でインセンティブを統一し、営業チームが一致協力して仕事に取り組むことで、早い段階から成功が実現され、アライアンスの採算性も明確となり、協業に対するチームのモチベーションもさらに高まるでしょう。

最後に重要なのは、フレキシビリティです。アライアンスを四半期ごとに見直し、ビジネス環境の変化に対応できるようにしなければなりません。パートナー間で見解や提案を共有するしくみも必要です。ファーウェイでは毎年1回ラウンドテーブルを開催し、パートナーから、ファーウェイが改善すべき点は何か、見逃している商機はないか、どうしたらより互恵的な関係を構築できるかなどについて意見を聞く機会を設けています。

経済は今後、企業が新しい形で協業するデジタル・エコシステムをベースに形成されていきます。かつてのライバル企業が、協業パートナーとなることもあるかもしれません。企業間の相互依存性が高まるにつれ、各企業は競争ベースの経営から協業ベースの経営へと進化を遂げていくでしょう。すべてのパートナーが独自の価値を提供し、利益を共有する――こうしたアライアンスこそが、成長への新たな道筋となるのです。

※1米ドル=110円換算
(初出: Nikkei Asian Review)