日本の企業ICTに新たな価値をもたらす「目利き力」
2013年6月、ファーウェイ・ジャパンは法人向けICTソリューション事業を本格展開するにあたって、日商エレクトロニクスと戦略的パートナーシップを締結したことを発表しました。ファーウェイがグローバルに展開する法人向けICT製品・ソリューションの販売、導入、アフター・サポートまで、全面的な協力体制を構築するとともに、日本市場のニーズに根ざした製品やソリューション、サービスを共同で企画・開発し、日本のICT産業のさらなる活性化に貢献することを目指しています。今回のSpecial Interviewでは、日商エレクトロニクス代表取締役社長CEO河村八弘氏に、先端技術を世界から日本に紹介してきた同社の強みと、ファーウェイとのパートナーシップへの期待についてお話をうかがいました。
日商エレクトロニクス
1969年、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)のエレクトロニクス部門の分社化により設立。1985年に米国法人を設立し、米国をはじめ世界の最先端技術やビジネスモデルを発掘することで競争力あるユニークな製品・サービスを提供しており、国内初のビジネス具 現化の実績も数多い。2013年6月、同社からEMCジャパン、イノパスソフトウェアを経て復帰した河村氏が代表取締役社長CEOに就任。技術者としての長年の経験と米系企業で磨いたビジネスへの視点を生かし、事業拡大に向けた体制強化を推進している。
目利き力と技術力で企業ニーズに合ったソリューションを提供
編集部:日商エレクトロニクスはIT専門商社として45年間にわたり世界各国から最新のテクノロジーを日本市場に導入されてきました。昨年6月に代表取締役社長CEOに就任されて以降、さらなる成長のためにどのような取り組みをされているのでしょうか。
河村氏:当社はディスク・ドライブやメモリーといったデバイスの輸入代理からスタートし、シリコンバレーを中心としたスタートアップ企業の革新的な技術を日本に展開していく過程で、数ある新技術の中から日本のお客様に価値のあるソリューションを見つける「目利き力」を養ってきました。社内には、そうした目利きの社員たちがそれぞれに新しいテクノロジーを発掘し、自ら提案してビジネスを立ち上げることができるような風土がDNAとして根づいています。
ただし、個々の事業規模を拡大するためには個人の力だけでは限界があり、組織力での販売も必要になってきます。そこで昨年後半からは、さまざまなトレーニングの実施や部署の垣根を超えたチームづくりを通じて、営業・マーケティング・技術部門が一体化した組織営業ができる体制を強化してきました。また、直販のお客様については定期的なプロファイリング・セッションを行い、弊社の強みをお客様のビジネスにどのようにリンクさせていくかを継続的に検討しています。
編集部:企業向けICTは急速な勢いで変化を続けていますが、その中で目利き力を持つ御社ならではの付加価値をどのように提供していこうとお考えですか。
河村氏:海外の革新的な技術をいちはやく日本国内に持ち込み、お客様のニーズに合ったソリューションとして展開することが当社の強みです。市場の動向を見据えた上で、今後は「ソーシャル」「モバイル」「ビッグ・データ」「クラウド」の4分野に注力してソリューションを展開していく計画です。これまで弊社のお客様は通信事業者やサービス・プロバイダーが中心でしたが、近年はOTTのお客様からの需要も高まっており、求められるソリューションも変わってきました。また、OTTではスピードが重視されるため、より迅速な対応ができなくてはなりません。われわれの価値は、お客様のビジネス・ニーズに合った技術を見つけ出し、最適な形でタイムリーに提供する技術力にあると考えています。早くて新しいだけではなく、安心感をもって製品をお使いいただきたい――そのためには技術力による裏付けが不可欠です。
日本のベストプラクティスをアジアで展開
編集部:近年はアジアでの事業展開にも力を入れられていますが、海外事業においてはどのような戦略をお持ちでしょうか。
河村氏:2011年にベトナム、2012年にインドネシアで事業を開始しましたが、現在、全社的に次の成長戦略を策定する中で海外展開の位置づけについても見直しているところです。先述したモバイルやクラウドといった分野では、市場ニーズとしてはグローバルで大きな差はありませんが、東南アジアは日本と比べて技術レベルに数年ほど隔たりがある。そこで、ある程度の規模があり、かつ発展の余地がある新興市場において、日本で成功したベストプラクティスを展開することを目的としています。今後はベトナム、インドネシア以外の国々への進出も検討しています。中国市場はいまのところ視野に入れていません。技術レベルという点では中国はかなり先進的で、日本とほとんど変わらないと考えています。
編集部:日本での経験を生かせる市場にフォーカスされているのですね。一方で、日本とは違った新興市場ならではのチャレンジもあるのではないでしょうか。
河村氏:そうですね。実務上の手続きが国によって大きく違うことに加え、ガバナンスに対する考え方も異なります。苦労もありますが、親会社である双日のサポートを得ながら、それぞれの市場に適応していく努力を続けています。
新たな価値を生み出すパートナーシップ
編集部:御社はこれまでに数多くの企業とパートナーシップを結んでこられましたが、パートナーを選ぶ際にはどのようなことを基準としていますか。
河村氏:ひとつには、そのときの時流と今後の発展の方向性に合った技術を持っているかどうか、そうした技術をこれから開発していくR&Dリソースが十分にあるかどうか、といったことが判断材料になります。また、相互に信頼関係を築き、長く付き合っていけるかどうかも重要です。単に商品を横流しするようなやり方ではわれわれの価値を発揮できませんから、パートナーの持つ新技術と、それを日本のお客様のニーズに合った形で提供するという当社の強みとをかけあわせてWin-Winの結果を生み出し、ともにビジネスをつくっていけるようなパートナーシップが理想です。
編集部:御社とファーウェイは、昨年6月に戦略的パートナーシップを締結し、ICT製品・ソリューションの販売や導入のみならず、開発段階から密接に協業していくことを発表しました。ファーウェイをパートナーとして選んでくださった決め手は何でしたか。
河村氏:ファーウェイは売上規模4兆円超のグローバル企業であり、法人向けビジネスでも世界で確かな実績があります。また、強力なR&D機能と高い技術力も大きな魅力です。日本市場へのコミットメントも非常に高く、日本のお客様に必要とされる製品やサービスをつくりだすために開発段階から協業したいという姿勢を見せてくれたことで、この会社となら日本に合ったものづくりを一緒にやっていける、日本市場に新しい価値をもたらすことができると思い、提携を決めました。
編集部:昨年11月には深圳本社にもご訪問いただきました。その際の印象はいかがでしたか。
河村氏:とにかく広大なキャンパスに圧倒されましたね。また、私は技術畑の出身で、約30年のキャリアを通じて多くの企業と仕事をしてきた経験から品質については厳しい目を持っていると自負していますが、本社で開発・製造の現場を見せていただき、ファーウェイの品質管理のレベルの高さに感銘を受けました。経営層の方々をはじめお会いした社員の皆さんは士気が高く、パワフルでドライブ力がある会社だとも感じました。
編集部:最後に、ファーウェイ製品の今後の展開と、弊社とのパートナーシップへの期待についてお聞かせください。
河村氏:まずは日本市場におけるファーウェイのブランディングという目的も兼ねてPCIe SSDカード『ES3000』の取り扱いを開始しました。また、先ほど述べた4分野のインフラ機能を果たすコンバージド製品として『FusionCube』を位置づけています。今後は社内にファーウェイ専門部隊を設置し、販売展開を強化していく計画です。ファーウェイの製品はコモディティではなく最先端のものなので、日本市場の要件に合わせたチューニングやカスタマイズが必要になりますが、開発段階の協業によってきめ細かい対応が可能となり、お客様のビジネスに直結する価値を生み出すことができると期待しています。日本市場でともにイノベーションをリードするパートナーとして、いままでにない革新的なソリューションを日本のお客様にご提案していきたいですね。