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お客様の価値創造を支えるAIS社のクロスバリューイノベーション

広範な技術基盤と先進のソリューションでパナソニックのBtoBビジネスをリード

パナソニックは2013年4月1日付で大規模な組織再編を行い、同時に、自動車関連や住宅関連を中心にBtoB事業の進化・拡大を目指す新中期経営計画をスタートさせました。このパナソニックの中長期ビジョンをリードするのが、新たに発足した社内カンパニー、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)です。今回は、AIS社の山田喜彦社長に同社の成長戦略をうかがいました。

AIS社――パナソニックの次代を担う牽引役として

編集部:AIS社は今年4月に誕生したばかりですが、組織発足の経緯を教えてください。

山田氏:パナソニックはこれまで88の事業体(ビジネス・ユニット)を基軸に経営を行ってきましたが、今年4月、それを統廃合して49事業部に集約しました。事業部制に復帰したのは12年ぶりのことになります。そして事業分野ごとに自主責任経営を進めるため、4つの社内カンパニーを発足させました。そのうち私が統括しているのがオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社で、傘下に19の事業部を擁しています。社名が示す通り、車載や産業インフラ、ICTの各分野にデバイスやシステムを供給していて、売上高はパナソニック全体の約3分の1を占めています。

編集部:パソナソニックはいま、2016年3月期を最終年度とする新中期経営計画を推進されています。この中期計画においてAIS社はどのような役割を果たしていくのでしょうか。

山田氏:新たな中期経営計画では、パナソニックの方向性を示すものとして、2つの戦略目標を掲げました。まずひとつはBtoBビジネスの強化です。パナソニックではすでにBtoCよりもBtoBの方が大きな比重を占めていますが、今後はさらにBtoBへのシフトを加速していきます。AIS社のビジネスは乾電池や市販のカーナビを除くとすべてBtoBですので、その牽引役になることが期待されているわけです。そして、もうひとつがグローバル化の推進です。2012年度の売上高は約60%が海外で、それをこれからの3年間で最低65%ほどまでに高め、パナソニック全体のグローバル化の流れをリードしていきたいと考えています。

編集部:新中期経営計画では、今後とくに注力していく分野として車載関連と住宅関連を挙げておられます。そのひとつをAIS社が担うわけですね。

山田氏:新中期経営計画は2013年度から2015年度を対象期間としていますが、私たちはその先の中期計画(2016年度~2018年度)を見据えています。最終年度である2018年度はパナソニックが100周年を迎える節目の年です。その2018年度に、住宅関連で2兆円、車載関連で2兆円の売上を達成したいと考えています。車載関連製品のほとんどはAIS社なので、私たちも大きく成長しなければなりません。車載関連の売上高は2012年度で約1兆円ですから、今後6年かけて倍にするということですね。

競争優位の源泉は広範な技術基盤を有すること

編集部:AIS社の事業のほとんどが企業向けということですが、BtoBビジネスとBtoCビジネスで、大きく異なる点はどこでしょうか?

山田氏:各国・各地域のコンシューマーは、互いに異なる文化や社会環境のもとで生活しています。したがってBtoCビジネスでは、スマートフォンにしても、洗濯機や冷蔵庫などの家電にしても、ローカルの多様なニーズに対応していかなければなりません。また、同じ国の中でも、年齢や性別、嗜好によってニーズは異なってきます。製品のセグメントと地域のセグメントを絞り込み、トレンドを捉えてものづくりを行うこと、それは単一の商品を大量生産したいメーカーにとって対応の難しい経営テーマです。その点、BtoBではお客様の顔がしっかり見えています。事業内容は当然わかっていますし、どういう課題をお持ちかということも直接話をうかがうことで把握できます。私はBtoBビジネスの方がはるかに取り組みやすいという実感を持っています。

編集部:BtoBビジネスの方が取り組みやすいとおっしゃることができるのは、卓越した技術開発力と幅広い商品ラインナップ、そして長年のコンシューマー向けビジネスで培った高度なマーケティング力があるからこそではないでしょうか。

山田氏:当社の最大の特徴は、きわめて幅広い事業分野で技術基盤を確立していることです。半導体からはじまって、電子部品、光学関係、エネルギー、電池、そして車載用インフォテイメントや電装品まで、広範な領域で製品・システムを展開しています。そのため、お客様が困っていらっしゃることに対して、既存製品を組み合わせて、あるいは新規に開発して的確なソリューションをご提案することができるわけです。またお客様の課題を解決するだけでなく、さらにその先のカスタマーに対しても貢献することができます。お客様の客先、ファーウェイの場合ですと通信事業者や一般消費者になりますが、そうした客先にメリットを提供することは、お客様とのパートナーシップを維持拡大する上で欠くことのできない重要ポイントです。

技術革新の「かけ算」がビジネスの可能性を拡げる

編集部:新中期経営計画では、「CROSS-VALUE INNOVATION」をグループの経営スローガンに設定されました。これは通常のイノベーション(技術革新による新たなパラダイムの創出)とどのように違うのでしょうか。

山田氏:クロスバリューイノベーションは技術革新の「かけ算」だと思ってください。たとえばファーウェイとの関係でお話しすると、当社は基地局向けにHEX(Heat Exchanger:熱交換器)を納めています。現在はHEXを単体でご提供しているわけですが、当社はその他にもさまざまな関連製品・システムを持っています。耐圧600VのGaNパワートランジスタは送受信装置の小型化や省電力化を実現しますし、蓄電池システムは緊急の場合のバックアップに役立ちます。その電気を太陽光発電でまかなえば、系統電力のない場所にも機器を設置できます。つまり技術をクロスしていくと、無限の可能性が生まれてくるわけです。「かけ算」によってお客様に新しい価値をお届けする、それがクロスバリューイノベーションです。

編集部:きわめて広い領域で最先端の技術を開発・蓄積してこられたから、技術のかけ算が可能になるのですね。

山田氏:いまお話ししたのはAIS社内の取り組みですが、クロスバリューイノベーションには、社外のリソースを利用してかけ算を実現するという、もうひとつの意味が込められています。パナソニックには「自前主義」の伝統があって、自己の能力に自信を持っている技術者たちは、製品やシステムの開発を自分たちだけで完結させようとする傾向がありました。しかし、世の中の変化は急速です。スピードが求められる時代に、自分たちの力だけに頼っていては顧客ニーズに対応することはできません。外部のリソースを積極的に活用するという「かけ算」も求められているのです。

編集部:クロスバリューイノベーションがうまく機能していくためには、事業部間の垣根や会社の内外を超えた協働が必要になりますね。社員一人ひとりの意識変革も重要だと思われます。

山田氏:どれだけコンピューターや通信が発達しても、実際に仕事をするのは人間です。従業員一人ひとりのマインドセットが変わっていかなければ、意味ある変革は起こせません。4月1日のグループ組織の再編では事業部制を復活させましたが、事業間のシナジーを最大化するためにはオープンなコミュニケーションが不可欠ですので、社員には「今までの古い体質の事業部じゃないよ」「かけ算でいこうよ」と言っています。常にオープンマインドを持って、他の事業部あるいは他の企業と交流して新しいものに挑戦していきたいと思っています。

グローバル戦略のポイントは現地企業との関係強化

編集部:先ほど海外売上高比率を65%以上に高めるご方針とうかがいました。パナソニックは日本を代表するグローバル・ブランドですが、さらなる国際展開が必要とお考えですか。

山田氏:パナソニックは1970年代からグローバル化に取り組んできました。現在、グループ全体で約50%の海外売上高比率を有していますが、生産やR&D、マーケティングなどあらゆる事業活動において、考え方がまだ日本中心から脱却できていないと認識しています。日本市場を軽視するわけではありませんが、今後3年間で海外事業の相対的な地位を上げていく計画です。重点地域としては、まず中国です。生産基地としての重要性と市場としての重要性を兼ね備えています。またICT関係では依然としてアメリカが巨大な市場を形成していますし、経済の成長性を考えるとインドなど人口の多い新興国の重要度も見逃せません。

編集部:現地企業との協業、アライアンスについては、どのような方針をお持ちでしょうか。

山田氏:中国を例に取りますと、パナソニックは30年近く前から事業をさせていただいています。そのため「松下(ソンシャー)」ブランドは確かに有名になりましたが、ビジネスとしての存在感はまだまだ希薄と言わざるをえません。その最大の要因は、現地企業との協業が十分に進んでいないということです。中国は広大な国で、地域によって文化も商習慣も異なっています。そこで成功を収めるためには、現地の会社とチームを組んで市場を深耕していくことが何よりも重要ですし、同時に権限と責任を現地に委譲していくことも必要でしょう。単なる海外進出ではなく、ビジネスの現地化に積極的に取り組むこと、それが真のグローバル化であり、AIS社の進むべき方向だと考えています。

基地局向けと携帯端末、2つのカテゴリーで事業を拡大

編集部:AIS社では今後注力していく事業分野の1つに情報通信向けビジネスを掲げていらっしゃいます。情報通信市場における成長戦略をお聞かせください。

山田氏:基地局向けと携帯端末、双方のカテゴリーで事業を拡大していく方針です。基地局については、LTEの普及と歩調を合わせてスモールセル化が進んでいます。こうした基地局周りのビジネス機会をしっかりと捉え、お客様に最適なソリューションを提供していきます。スマートフォンやタブレットに代表される携帯端末に関しては、技術者がいま最も困っているのが、CPUの高性能化に伴う発熱の問題です。当社は熱の発生を抑える技術や熱を上手に逃がす技術を持っていますから、その点を訴求してビジネスにつなげていきます。また、ユーザーとして一番気になるのはバッテリーの寿命でしょう。私どもは電池をどう管理するかというパワー・マネジメントの領域や、電池を使わない半導体の開発に強みを持っていますので、そうした技術やノウハウを活用していただく場が徐々に増えてくると思います。

編集部:最後に、ファーウェイとのパートナーシップについて、山田社長のお考えをお聞かせいただけますか。

山田氏:私は2010年にアメリカから帰国してデバイス事業の統括者となりましたが、そのとき訪問した最初の中国企業がファーウェイでした。ファーウェイが急速に発展していることは新聞などのマスコミ報道を通じて知っていました。しかし実際に中国の本社を訪れて、イメージ以上の躍進ぶりに驚いたものです。とりわけ印象深かったのは、お会いした経営幹部やマネージャー・クラスの方々の仕事に対する意識の高さと情熱、そして会社全体のスピード感です。私はバックグラウンドがコンピューター業界ということもあってスピード感はある方だと思っていますが、その私から見てもファーウェイの仕事に取り組むスピードの速さは新鮮な驚きでした。これからも、ともに仕事をしていく中で、ファーウェイの意識の高さとスピード感を大いに学ばせていただきたいと希望しています。そして、ファーウェイとそのお客様が直面している技術課題に対して付加価値の高いソリューションをご提供し、ベスト・パートナーとしてともに成長していきたいと考えています。